「学芸員」が描く、
ワセダの広め方、深め方

Chang Boye-「学芸員」が描く、ワセダの広め方、深め方

「学芸員」が描く、
ワセダの広め方、深め方

早稲田大学歴史館 学芸員
Chang Boye(チャン ボイェ)

「学芸員」が描く、
ワセダの広め方、深め方

多くの偉人、オ人を排出してきた早稲田大学(以下、早稲田)。早稲田が歩んできた歴史をテーマに様々な角度の展示/イベントを展開しているのが、早稲田キャンパス1号館1Fに位置する早稲田大学歴史館(以下、歴史館)である。
実は歴史だけではない歴史館のねらいや、そこに込めた思いについて学芸員のチャンさんにお話を聞いた。
Photo: Kazunari Ogawa
Edit: Yuta Sekiguchi
早稲田大学歴史館とはどのような組織/機関なのでしょうか?大学における役割について教えてください。
Chang
早稲田の歴史を通じてその魅力を発信し、早稲田をPR するというのが歴史館の役割です。ミュージアムでは常設展示と企画展示のエリアがあるのですが、企画展示はもちろん、常設も一定期間で見直しをするので、常に企画ネタを考えていますね(笑)

開館から6 年経ちますが、2 年目を迎えた頃にコロナ禍に入り、一時期は半年以上閉館していました。その後もフル稼働はしてなかったので、「ようやく」というところで安心しています。一般の方の来場も目にするようになりましたし、OB の方や学生の来場が以前よりも増えているのも嬉しいですね。
以前お会いした際には、キャンパスがガランとしていた記憶がありますが、学生さんが戻ってきた様子を見て私も安堵した気持ちになりました。
先程、「ワセダの音楽家」という展示を拝見したのですが、展示物はもちろん、情報量と言いますか、リサーチの深さがとても興味深かったです。
展示の企画はチャンさんが主体となって実施されているのですか?
Chang
文化事業を担当する理事や部長等で構成される会議で年間企画を決め、私が中心となって展示を実現しています。
企画のネタ探しは大変だと思いますが、どのように候補出しするのでしょうか?
Chang
例えば、大学と深く関わりがある人物の生誕/没後〇〇周年をピックアップしたり。同じく、スポーツ大会や賞の〇〇周年からヒントを得て、(早稲田大学の歴史から考えると初回から参加/関与している可能性も高いので)当時の部活や対象分野の研究者を追ってみたり。
特定の分野にかかわらず、常にアンテナを立てているのですね。
企画を考える際に気をつけていることはありますか?
Chang
専門性の高いテーマに偏らないようにすることですかね。
また、どなたでも歓迎なのですが、特に来てほしい、見てほしいのは、在学生や受験生なんです。受験生には、展示を通して早稲田の魅力を感じてもらい、受験してみようと思ってほしい。在学生は、少しでも母校の歴史を勉強して次のステップに進んでほしいという思いがあります。
「歴史」館ではありますが、研究資料ばかりの展示や歴史紹介的な展示に偏り過ぎないよう、バランスをとりながら計画するというイメージですね。
バランスをとるという意味では、普段歴史館に来ない層にどう興味を持ってもらうか?今までに開催してこなかった角度で企画を考えることも意識しています。
企画のテーマが決定してからは展示内容を検討されると思いますが、このステップで難しいのはどのようなことでしょうか?
Chang
テーマ展示の場合は、各分野で活躍する(した)早稲田出身の人物を紹介する展示ですが、多くの卒業生の中で、誰を、どのように、取り上げるかというのがすごく難しいです。
お話しをお伺いして(また、案件をご一緒して)、展示の企画〜内容の検討〜プロモーションという全工程に関わられているとお見受けするのですが、一番心がけていることはどのようなことでしょうか?
Chang
やはり、早稲田大学歴史館として早稲田大学の魅力や強みをどうPRしていくかを考えることが、1番大変であり大切かなと思っています。
来館者は幅広いので、それぞれが、それぞれの観点で、それぞれ満足できる展示コンテンツになっている必要がある、というのもポイントですよね。
歴史を振り返るだけではなく、現在の早稲田、さらには未来の早稲田像を考えられる展示を作り、展示観覧後、早稲田により興味持ってもらい、さらに何かを考える/アクションを起こすきっかけとして展示が機能してほしいですね。

例えば、昨年の春に清国留学生をテーマにした展示がありました。
当時の中国から見ると、進化した西洋の教育を受ける選択肢として日本への留学があったのですが、今の情勢は当時と状況が違いますよね。

展示に合わせて、今の留学生はどういうきっかけで日本に留学しようと思ったのか、どうして早稲田を選んだのかという話を聞いてみました。展覧会に紐づけて、座談会を開き、その様子を展示室で放映しているのですが、この映像を通じて早稲田に在学中の留学生や、これから留学を検討している学生たちが共感したり、何かアクションを起こしたり、そのようなきっかけになると思うんです。
展覧会が展示だけでは無いことが、いかにもよく理解できました。
早稲田をPRするという側面で、展示内容に早稲田らしさを入れることは意識されていますか?
Chang
はい。ただ、押しつけるような展示は好ましくないと思います。展示内容を構成していく上で、主観的な部分はどうしても幾分入ると思いますが、できる限り客観性を保った展示にする。その結果、観覧者個々が感じとることは異なってくると思います。早稲田のどこに良さを感じるかはそれぞれで違うと思うので。あえて答えは1つではない、各自がそれぞれの感性で受け止める展示を目指しています。私としては、こういうオープンなところが早稲田らしさなのかなと思います。
より広く、自由な発想を持ってもらう、そのきっかけを作るのが展覧会の意図なのですね。
展示/催しは様々なパートナー(業者)と作り上げる形になると思いますが、パートナー選びのポイントはあるのでしょうか?
Chang
普通のことかもしれませんが、企画の内容を理解してくれようとする姿勢があることでしょうか。「この展示はどういった資料が出るんですか」とか、「この展示のねらいは何ですか」とか。そういうところをヒアリングしていただけるとこちらもやりやすいですね。
「早稲田の言論人」という展示でポスター制作のご相談をいただいた際のことを思い出しました。
言論(=ジャーナリズム)という、形として表現しにくいものをビジュアルに落とし込むことがポイントになる制作内容だったので、企画の落とし込みをどこにするか、模索した記憶があります。
Chang
難しかったと思います。テーマ的に中立を保つことが大前提だったので、ポスターのメインビジュアルには人物や資料を使わないことを条件に、カンパニーさんにご依頼した案件でしたね。
その後の案件を含め、ご満足のいくクオリティーでお納めできておりますでしょうか、、?最近では顔出しパネルを制作させていただきましたがご活用いただけておりますか?
Chang
はい、その点は大丈夫です。
顔出しパネルに関して言えば、当初はイベントだけで使用する予定でしたが、オープンキャンパスで使用した際に人気だったので、常設にしていたこともありました。出張イベントでの運搬の際も、素材がダンボールなので少々角が潰れても気にならないし、貸す方も借りる方も気が楽なので、登場の機会は多いと思いますよ。
フィードバックありがとうございます。安心しました。ご活用いただけているとのことで、大変嬉しいです。
最後に今後の展望を教えてください。
Chang
歴史館ができて6年になり、少しずつ認知度も上がったところではありますが、もっともっと認知度を上げていきたいというのももちろんあります。歴史館は1号館で大学の玄関口に位置しているので、そういった意味でも早稲田の魅力を発信する、PRする力をもっと強くできればと。いろんなコンテンツを拾い上げるアンテナを常に意識して仕事したいなと思います。
我々も心に響く仕事ができるよう精進したいと思います。
本日はありがとうございました。

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