日蓮宗の国際課長、そして港区麻布台にある真浄寺のご住職として、日常的にはどのようなお仕事や活動をされていますか?
大島
国際課長としては、海外にある25の寺院の総括を担当しております。それから外国語での僧侶の教育、布教活動の計画といった全般的な事業を行っています。
真浄寺の方はと言いますと、寺の住職として、ある意味経営者として、この寺をどうしていくかというのを日々考えながらやっているというところですね。
日蓮宗の宗務院にお勤めになられるようになったのは、いつ頃からなんですか?
大島
私自身が海外布教を20代後半から7年やりまして、戻ってきたタイミングで国際課長の後任ということで推薦をいただき、入ったのがコロナ禍のちょうど真っ只中、令和3年のことですね。宗務院というのは、日蓮宗という教団の役所に勤めるようなものですから、通常は一般職員から始まって次第に役職が上がって課長になるというのが正規ルートなんです。ただ、国際課長だけは国際布教の経験がないとできない、外国語ができないとできないということで、これまでも国際布教の経験のある方を「一本釣り」で抜擢する流れでお声がけ頂きました。
国際布教は、真浄寺住職時代にすでにされていたということですね?
大島
私が真浄寺の住職になる前に、副住職として自由な時間があったので、その間にヨーロッパだったり東南アジアでの布教活動というのを7年やった後、日本に帰国をしたタイミングで国際課長になったという流れです。
国際布教に飛び込んだきっかけは、知り合いの方に声をかけていただきました。外国語ができるならば海外で布教活動してみないかと。副住職としてお寺にいる限りは、前面に立って自分のやりたいことをするということがなかなかできないんです。国際布教の現場でそういう機会がもらえるならばということでチャレンジしてみたかったというのがきっかけですね。
日蓮宗がグローバルブランディングに取り組むことになった背景や、課題意識について教えていただけますか?
大島
国際課長になってすぐ感じていたのは、ある種の閉塞感ですね。僧侶だけが集まって事業の企画立案をするというクローズな環境の中でやっている所に、どうしても世間一般の人との乖離というか、「響かなさ」みたいなことを感じていたんです。
そういったこともあって、課長になってわりとすぐの段階で、外部のコンサルの方を入れませんかという提案を上司にしていたというのが前提としてあります。
それとは別に、国際布教の現場にいる僧侶が、自分自身の思うままに活動している状態をまとめあげなければいけないという思いがありました。国際布教の全体的な計画の立案をしなければと取り組みを始めたのが2年前になります。
元々そういった背景があって、誰かとやってみたいという思いもあったということですね。
様々な会社を調べたり、取り組みをされている会社がいらっしゃる中で、ザ・カンパニーと取り組むことになったきっかけみたいものがあれば教えてください。
大島
きっかけは海外向けの日蓮宗の紹介動画の制作だったんです。動画制作をお願いできる方がどなたかいらっしゃらないかと探した時にご紹介をいただきました。本当はその時点では、動画を1本撮るだけという予定だったんです。ところが、最初にご提案をいただいた段階で、こちらが考えていたコンサルの部分もお任せできるんじゃないかと直感的に感じたところからグローバルブランディングに発展したという流れですね。
今現在、グローバルロゴやInstagram、ステートメントの制作、WEBなど様々なプロジェクトに取り組んでいるところですが、印象に残っているプロセスや、やり取りはありますか?
大島
やっぱりザ・カンパニーさんとのファーストコンタクト、一番最初のプレゼンが一番印象に残っていますね。こちらとしては動画を作りますというところでお話をして、動画を撮るにあたってのヒアリングをしていただいた時に、動画単体だけではなくて、日蓮宗というブランドを全体的にどう見せていくかといったところも含めてご提案をいただいたんです。
言い方を選ばなければ、こちらの期待していたものが出てこなかった。というより確実にこちらの期待を超えるもの、それ以上の成果が見えるものをご提案いただいたというのが、私の中では一番の決め手だったと思っています。
ありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです。今現在、いわゆる六波羅蜜をベースとした動画コンテンツを作っていますが、伝統的な教えを現代的に表現するといった試みにおいて、住職・僧侶としてどのようにお考えになりますか?
大島
一番は、その本質をどのような言葉にして伝えるかという、言葉の選び方が難しいと感じています。
仏教の背景知識を持った人であれば分かることを、背景知識のない人に伝えるためには、何をどこまで噛み砕くかというところの線引きが、1つ大きなポイントかなと思っています。
そのあたりのバランスですね。伝統とか格式を保ちながら、これまで仏教と接点のなかった人に合わせることができるかというところの線引きを、私はザ・カンパニーさんに今ご協力いただいていると認識しています。
それは海外の方に伝えるということでも、日本人の方に伝えていくということでも、同じことが言えると思います。
日本仏教の八宗のひとつに数えられ、鎌倉時代から続く日蓮宗ですが、その「らしさ」や本質的な価値について、このプロジェクトによって気づいたことなどありますでしょうか?
大島
一番最初にザ・カンパニーさんからご提案をいただいた「日蓮宗の特徴は現代性です」という言葉は私の心に強く残っています。我々、僧侶が認識している日蓮宗のイメージを、現代の人に分かる形でお話しいただいた言葉だったなと思っています。来世ではなくて、今この瞬間をどう生きるかを考えるのが日蓮宗らしさだと思っているんですが、まさにそれを一言で表現していただいたのが、「日蓮宗の現代性」という言葉でした。
私たちザ・カンパニーの「伴走者であれ」という姿勢についてどのように思われたか、良し悪し含めて何かあれば教えてください。
大島
1つには、完成形で出てこないということが、私はザ・カンパニーさんの良さだと思っています。ザ・カンパニーさんからいただくご提案は、こちらが手を加えて完成する自由度の高い状態でのご提案を出していただけるので、ここをこうすればもっと発展できるんじゃないかと、ご提案いただいた内容以上に毎回イメージを膨らませることができる。そういったところに、私はザ・カンパニーさんとの打ち合わせの魅力を感じています。
今後、日蓮宗のグローバル展開について、日蓮宗の国際課長として、どのようなお考えがありますか?
大島
難しいですね(笑)
1つには、今ようやく入り口を作って、これから扉を開こうとしているところかなと思っているんです。最初は動画という1つの入り口だけを用意するつもりが、今はいくつもの入り口を作っているところだと思っています。今度は、この入り口から先の道をどう整備していくかというところで、最後には教えとか信仰というところに繋げていく。その整理をしていかなければいけない。入り口からゴールまでのルートを増やしていくという途方もない作業を一緒にやっているような感じですね。
僕らもそういった作業をご一緒できて貴重な経験をさせてもらっています。最後に、これからの日蓮宗と私たちで作り上げていきたいこと、どんなことができるかなみたいなことを個人的にでも構いませんので、メッセージをいただけますと嬉しいです。
大島
何だろうな。一番は、これまでの取り組みも含め色々なプロジェクトをお願いしてよかったなと思ってるというのが結論ですね。
理由は明白で、自分1人では絶対に出てこなかった考えに今至っているんです。それがまだ日々進化し続けている、発展し続けている。そしてここから先、どこまで辿り着けるのか、どこまで広がるのか、どこまで深みを出せるのかというところが、まだまだ見えてこない。矛盾するかもしれませんが、いつまでも見えないゴールを一緒に探し続けてもらうというのがここからの先のビジョンかなと思っています。
まだまだ見えない先がありますもんね(笑)これから益々仏教の面白さみたいな部分を伝えるお手伝いができれば幸いです。とりあえず直近の未来では※身延山 修行走にスタッフ一同参加してきます(笑)
今後も引き続き、宜しくお願いします!
※身延山・七面山 修行走は、日蓮宗総本山・身延山久遠寺と霊峰七面山を繋ぐトレイルランニング大会。身延山久遠寺は1274年に日蓮聖人が入山して以来、約750年の歴史を持つ日蓮宗の聖地。修行走は累積標高差約3,500m、距離約40kmという過酷なコースで、まさに「修行」の精神を体現する大会。トレラン素人集団であるザ・カンパニーチームはビビリの13kmコースに出場。