
取引先の担当者から、こんな一言をもらったことはありませんか。
「実は今回の更新ですが、他社さんの提案も検討させていただくことになりまして…」
長年の付き合いがあったはずなのに。価格なのか、サービス内容なのか。
でも、顧客離れの本質的な原因は、多くの場合「価格」ではありません。
「あなたの会社でなければならない理由」が、見えなくなっていた。 それが本当の原因です。
この記事では、顧客離れのメカニズムと、関係性を深め継続率を高める実践的なアプローチをご紹介します。
顧客離れの原因は「価格」でも「品質」でもないことが多いです。
ハーバード・ビジネス・レビュー誌の調査では、
顧客離れの68%が「事業者に相手にされていないと感じたから」 という結果が出ています。
商品への不満(14%)や価格比較(9%)を大きく上回る数字です。
具体的には、こんなパターンがあります。
「放っておかれている」と感じた瞬間、関係は終わる。
契約が決まった後、定期的な連絡が途絶える。困ったときに問い合わせても、対応が遅い。
そうした小さな積み重ねが、「この会社は私たちのことを大切にしていない」という印象につながる。
担当者が変わった瞬間、関係がリセットされる。
「前任の○○さんにはよくしていただいたんですが…」という言葉とともに、取引が終わる。
問題は、その会社との関係が「○○さん個人」に紐づいていたこと。
人に依存した関係は、異動や退職のたびにゼロからのスタートになってしまう。
「なぜこの会社なのか」が曖昧なまま、惰性で続いている。
選ばれている理由が明確でなければ、関係は脆い。
競合から「もっと良い提案がありますよ」と声がかかった瞬間、比較のテーブルに乗せられてしまう。
では、どうすれば顧客との関係を維持できるのか。ある製造業の事例から見ていきます。
BtoB企業によくある課題があります。技術力や実績はあるのに、それが顧客にうまく伝わっていない。
担当者が丁寧に対応しているから取引は続いている。
でも、「会社としての価値」が体系的に伝わっていないと、担当者が変わったり、
競合からアプローチされたりしたときに、関係が揺らいでしまいます。
セイワ電熱様は、1966年の創業から半世紀以上にわたり工業用電熱ヒーターを製作する企業です。
業界でもトップクラスの品質を長年維持していましたが、ある課題を抱えていました。
ロゴマークは長年使用しているものがあったものの、使用場面ごとにカラーリング等が異なっており統制がとれていない状態。
コーポレートサイトやパンフレットも、現状ロゴとリンクしたトンマナで制作されていたため、
新規顧客が訪問した際に「少し古い印象」を与えてしまうという懸念がありました。
本社・工場の移転と展示会への出展を機に、この課題に向き合うことになりました。
まず、自社や製品に対するイメージや強みをヒアリング。
セイワ電熱のアピールポイントである**「信頼感」「安心のクオリティ」「優れた専門技術」**をキーワードに、
全てのクリエイティブに横串を刺すようなリニューアルを行いました。

熱を加えて温める、というヒーターのイメージから赤色を選定。
しっかりとした太さと安定感のあるフォントで、信頼性や安心感のある企業イメージを表現しました。
このロゴマークは、本社・工場の外観のほか、コーポレートサイト、パンフレット、製品梱包箱等でも使用されています。


リニューアル前は製品カタログ・仕様書のようなサイトで、製品を理解するには情報を読み込む必要がありました。
業界トップクラスの品質を長年維持しているという強みが、伝わりづらい状態だったのです。
リニューアルでは、製品ページの構成を大きく変更。欲しい情報に知りたい順に到達できるように、情報を整理しました。全てを読まなくても、プロダクトの特徴が把握できる設計です。
また、クオリティの裏付けとして、生産体制や品質管理についての紹介ページも新設。
信頼感・安心のクオリティを「ストーリー」として伝える構成にしました。
製品写真も全て新規で撮影。業界の方が知りたいディテールを確実に把握できるようにしつつ、一般の方が見てもプロダクトとしての美しさ(機能美)が伝わるカットを追求しました。

年末に開催される展示会への出展に向け、製品パンフレットもリニューアル。
製品写真は「プロダクト紹介としてわかりやすいカット」と「プロダクトとして魅力あるビジュアル」を追求。
バックのカラーやライティングなど細部までこだわり、
一般の方が見てもプロダクトの美しさ(機能美)が伝わる撮影を実施しました。
旧パンフレットにあった一覧表は、プロダクトごとに分解して紐付けることで、製品スペックへのアクセス性を向上。
さらに、製品ごとにWebサイトの製品ページに紐づいたQRコードを設置し、
より詳細な情報はモバイルからキャッチしやすい動線をつくりました。
裏表紙には、強みである「Skill・Quality・Management」への言及と実製作写真を掲載。
製品カタログでありながら、会社紹介パンフレットとしての役割も兼ねる内容に仕上げました。
ロゴ・サイト・パンフレットと統一感を持たせたトンマナで制作し、企業全体の方向性を定めたことで、
「信頼感」「安心のクオリティ」「優れた専門技術」という強みが一貫して伝達可能に。
問い合わせ数は年間800件から1,200件へ増加。
顧客が企業・製品に対して信頼感・安心感をもって発注検討できる状態をつくることで、
新規顧客獲得力の向上につながりました。
セイワ電熱の事例から見えてくるポイントを整理します。
「信頼感」「安心のクオリティ」「優れた専門技術」——セイワ電熱の強みは、ヒアリングを通じて言語化されました。
そして、その言葉を軸に、ロゴ・Webサイト・パンフレット全てのクリエイティブに横串を刺した。
バラバラに制作されていた各ツールが、一貫したメッセージを発信するようになったことで、
「この会社は何を大切にしているのか」が明確に伝わるようになりました。
担当者同士の関係は大切です。でも、それだけに頼っていると、異動や退職で関係がリセットされてしまいます。
セイワ電熱の事例では、全てのタッチポイントで一貫した表現をすることで、「会社としての信頼」を構築。
「○○さんがいるから取引している」ではなく、「この会社と取引していると安心できる」という状態を目指しました。
顧客から連絡が来てから対応するのでは遅いのです。
問題が起きる前に声をかける、新しい情報があれば共有する、業界の動向を伝える。
こうした「先回り」の姿勢が、「この会社は私たちのことを気にかけてくれている」という信頼につながります。
セイワ電熱の事例では、Webサイトにメールでのお問合せ機能を新設し、
パンフレットにはQRコードを設置してWebへの動線をつくりました。
顧客が「知りたい」と思ったときに、すぐに情報にアクセスできる仕組みを整えたのです。
自社の価値を言語化するには、大きく2つのアプローチがあります。
まずは、既存顧客へのヒアリングから始めてみてください。
「なぜ他社ではなく、うちを選んでくれたのか」「継続して取引してくれている理由は何か」を直接聞くことで、
自分たちでは気づかなかった強みが見えてきます。
社内でワークショップを開き、営業・開発・カスタマーサポートなど複数の視点から
「自社らしさ」を出し合うのも有効です。ただし、社内だけだと「当たり前」を疑えず、客観性に欠けることもあります。
向いているケース: 社内にマーケティングやブランディングの知見がある、時間をかけて自分たちで考えたい、まずは小さく試してみたい
セイワ電熱の事例のように、自社の強みは内側からは見えにくいものです。第三者の視点が入ることで、「それ、すごいことですよ」と気づかされることがあります。
向いているケース: 自社の強みが分からない・言語化できない、客観的な視点がほしい、ロゴやWebサイトなど表現まで一貫してやりたい
どちらが正解ということはありません。自社の状況に合わせて選んでみてください。
顧客離れの原因の多くは、「相手にされていない」と感じさせてしまうことにあります。
価格でも品質でもなく、関係性の問題です。
セイワ電熱の事例は、全てのタッチポイントで「信頼」を一貫して伝えることの重要性を示しています。
ロゴ、Webサイト、パンフレット——顧客との接点となる全てのツールが、同じメッセージを発信している。
それが、「この会社と取引していると安心できる」という信頼につながるのです。
まずは、自社の制作物を並べて見てみてください。
ロゴ、名刺、Webサイト、パンフレット——それぞれが同じメッセージを発信しているでしょうか。
もしバラバラだと感じたら、それが顧客離れの一因かもしれません。
「自社の強みをうまく言語化できない」「顧客に伝わっていない気がする」
——そんな課題を感じていたら、一度お話しさせてください。
TheCompanyは、対話を通じて企業の本質的な価値を見つけ、伝わる形にすることを専門にしています。
まずは現状の課題をお聞かせいただくだけでも構いません。
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プロダクションマネージャー
映像会社を経て、ザ・カンパニーに入社。ウェブ、グラフィック、映像、アプリなどのクリエイティブ制作進行を担当。