voice世代交代を見据えた新たな取組み大京建機株式会社 代表取締役社長 内田隆一
これまでのクレーン会社とは一線を画す大京建機。創立55年を迎え、他社とは何が違うのか、また世代交代をどのように考えているのか?同社のこれからを代表取締役である内田氏にインタビュー。
Photo_Kazunari Ogawa Edit_Keisuke Tachibana
大型工事現場におけるクレーン本体及びオペレーターの派遣を中心に、現在では中古クレーンの売買や不動産事業、更には海外でのお取引など様々なビジネスを展開されているかと思います。
内田社長ご自身も先代から引き継いだという経緯がある中で、今後、3代目に継いでいくという大きなミッションでは具体的にはどのような意識で取り組みをされていますか?
僕が継いだ時はいわゆるオペレーターをつけてクレーンをレンタルさせて頂くという本業の部分だけだったでしょ?その時に比べると今は会社が大きくなってしまっている。僕が社長になるにあたって手をつけたのは、クレーンの売買。94年に中国に行きはじめたところからはじまって、その後不動産事業も始まった。気づいてみると今はその部分がしっかりと広がっていった。そこに3代目が入ってきて。彼は僕が入った時よりもはるかに多くの事を見なければいけないし、金額も全く変わってきてしまっているわけです。
ただ大事なのは基本。核となる仕事はあくまでもオペレーター付きのクレーンのレンタル屋さんなんだよという部分をよくわかっておかないといけないなと。息子が入るとなったときに取締役とかにしてしまう会社もあるけど僕は肩書なしで働くという事をさせたんだよね。根本的にどういうクレーンがどういう現場で役に立っているのか、その根幹を知るということ。そしてオペレーターがどういう気持ちで仕事をしているのか、どのオペレーターがどういう癖を持っているのかなどね、積んであるレンガを一つ一つひっくり返してみていくような作業をやらないとダメ。そういう基本みたいな部分は変わらないと思うけど、大きくなってしまった分、僕が継いだ時よりもきっと人の会社というイメージが強いんじゃないかな。僕が小さい頃はまだ家業のような感じで、クレーンに乗せてもらって遊んでもらったりもしたんだけど、今は企業になってしまっているからね。ちょっと人ごとみたいな感じがあったのかな。それではダメだと思って、根っこから見させようと思った。とは言っても時は待ってくれないからね。新しい事業もどんどん進行している。インドを登記したのも去年だし、彼が代表になってやっているけども様々な新しい事も広げていかなければいけない。加えて風力関係の仕事も始まってきて、将来的には大京建機の売上の3割ぐらいは風力発電に携わる仕事で売上を作っていきたいと本人は言っている訳で。
私が先代と違うところは中古クレーン車の売買をスタートさせ、不動産を広げた。同じように彼も2代目には無い、自分がやった事というのが欲しいだろうし、作らないといけないよね。
3代目に移行していく手助けをしながらも、ご自身としては今どういう会社を目指していますか?
これまでは危機感迫る中でやってきたけども、今は組織も大きくなってきて安定してきた。これから僕がやらなければいけないことは絶対に潰れない会社としての基盤をつくることかな。 企業は人が動かしているわけで、良い人財が入ってくるには適正な給料を払わなければいけない。給料をあげるためにはきちっと利益を確保しなければいけない。安定した収益構造を構築する。そして企業の価値あげていく。 そういった良い回転にする事で更に良い人財が入ってくる。
僕が考える良い人財というのは、能力はもちろんだけど、やっぱり心の部分が大事。 会社の事やみんなの事を考えて動ける人が男性女性問わず居てくれたら企業は伸びるだろうし、その底力があると潰れない会社になるのかなと思うよね。 土俵の真ん中で商売をしていれば、今回のコロナ問題のような誰も予想できない事態が起きても踏ん張る事ができる。かといって、守ってばっかりいたら衰退してしまう。 だからこそ、真ん中で商売して新しい事も挑戦しなければいけないよね。
守りと攻め、その両輪をまわして企業としての体力をつけなければいけない。それから大事なのは品質。同じクレーン屋でも「大京建機のスタッフは違うよね」と言って頂ける会社でないとね。それは代表者も同じ。なんだか違うよねと言ってもらえるこだわりや文化が大事だと考えていますね。
仕事の量だけではなく質を上げていくという事も重要な取組みの一つという事ですね。
そうだね。質感は絶対に大事。それは財務体質でもなんだってそう。質感というのをこだわらないと潰れない会社にはならないと考えていますね。
質を上げるという事にこだわられていると思いますが、世代交代していくという意味で一番気をつけている事があれば教えてください。
「美田は残さず」じゃないけども、なんでもかんでも受け渡すことが正解だとは思わないですね。
例えばお金。これは無い時も大変なんだけど、お金があって何に使うか、という事のほうがはるかに難しい。僕も恵まれた環境で育ったとは思うけど、3代目はそれよりも恵まれた環境で育ってると思うんだよね。だからお金がないという状態がどうなるのかが分かってないわけですよ。
僕の場合は先代が滅茶苦茶やってきた人だから笑 継ぐ時にはある程度苦労できたけども、土俵の真ん中で勝負(ビジネス)しないとまさかの坂の時に大変なことになるという事を身を持って知って欲しい。そこを知るにはお金と人を触って、苦労をするしかないと思う。だから代変わりも早いほうがいいとは思ってる。
今はまだ銀行でもメーカーでもみんな僕のところにきてしまう。そりゃそうだよね、経験値が全然違うから。でもそれを続けてしまうと次の世代の人間みんな馬鹿になってしまうよ。僕は知らないってやったほうがいいんだよね。これからは君たちのリスクだからね、と。この会社がなにをやろうと3代目を中心とした次の世代の財産だと思ってる。だから自覚を持ちなさいよ、と。
やっぱり危機感を持つことは大事。会社がなくなったら自分たちの生活がなくなるっていう危機感はね。
次世代に全てを渡してしまうというのは現社長として勇気のいる事ですよね?
そうね、勇気のいる事だけれど、もう株も渡してるからね笑
議決権はもっているけど3代目が大株主だから。ただこれは足掛け4、5年かけて練ってきた事だからね。
すごいご決断ですね。それこそ先代との株式譲渡は苦労されたと伺いました。
苦労した。すごい気をつけたところではあるけど、早い段階で渡してしまって自覚をもってもらうほうが大事だなと思ってるよね。全ては自分でやらないとわからないから。寝られない感覚とかね笑
3代目はプレッシャーの中で苦闘・苦労されますね。
そういった苦労はないほうがそりゃいいんだろうけど。松下幸之助が言った「好況よし、不況さらによし」じゃないけども、そういう事なんだと思うよ。人材も取りやすくなるとかの物理的な問題だけじゃなく、やっぱり働いている人が苦労するでしょ?それがやっぱり「不況さらによし」って事なんだと思うよ。だからこれからたくさん傷をつくるでしょうね。いろんな意味でね。
特に3代目は2代目よりも懐疑的な目で見られがちですもんね。
そう。だから僕が応援しているのは新たなビジネス領域である風力事業の推進だよね。これは本人がやる気をもってやっている新しい分野だから。とはいえ、いくらの投資になるのか、最悪の事態はどうなるのかというのはハッキリしようと話しているけどね。
金額も大きい話でしょうしね。
そうそう。先代がいつも言ってたけども山は8分目ぐらいから見るぐらいがいいと。登り切ったら降るだけだぞと。だけど裾野が広がれば8分目の高さが変わるでしょ?だから裾野を広げる事も大事。新規事業というのは裾野を広げる仕事なんだよね。
お話しを伺っていると企業体力的な事はもちろんですが、「企業文化を作る」という事が 今ご代表がされている主な仕事という事になるんですかね?
そうだね。今年の秋の引越しもそう。新しいビルを購入したわけだけど人に貸した方が売上になるわけだからいいんだけど、このビルを見た瞬間に「ここに移転したら人ももっと集まる」って思ったね。そういう一つ一つの企業文化を今作っている最中かな。
新たなオフィス楽しみですね。現在の本社と同じ建築士の方がデザインされるという事でしたが、そういった外部のパートナー会社はどういった基準でお選びになりますか?
やっぱりロングリレーションシップだよね。それは匂いとか感性とか価値観とか、ありきたりな言葉でしか伝えようがないんだけどね。会って、打合せを重ねて、なんかいいなと思えるとやっぱり仕事も長く続くよ。やっぱり僕の基準は長く付き合えるかどうかが基本かな。つまり信頼関係が築けるかどうかって事なのかな。それさえあれば究極な話、契約書も要らないんだよね。間違いそうになれば早め早めで謝るとか、正しい説明をするとか。そういう人としての基本・筋みたいな事は本当に大事。そして信頼があればお互い余計なパワーを使わないし、心配しなくて済むしね。
そうですね、その心配は本当に余計ですもんね。
本当に余計。また嫌なやつは毒になるからね。うちも過去には大変な思いもたくさんしたよ笑 海外との取引なんかは特にね。やっぱり約束を守るというシンプルな事、基本ができるかどうかはその人の印象にも表れるよね。ご飯いきましょうって言って行かない人いるでしょ?些細な事だけど、言ったのならやろうよって思うよ笑
笑 そんな中、少々聞きづらいですが弊社と取り組んで頂いた感想を教えてください。
最初はね、正直どうかなーと思ったよ笑 やっぱり若いし、僕なんかは古いから服装とかも見てしまう。見積書も本当か?とかね笑 だけど、まずはやってみようと思ったんだよね。それはうちのスタッフがお世話になってる人からの紹介っていうものあったしね。やっぱり人の紹介は大事だからね。
結果として今回WEBサイトをやってもらった感想としては本当によく出来てる。良いものを作ってくれたという感想かな。僕らの要望をちゃんと盛り込んでもらった上でデザインと機能を構築してもらってる。そして、スケジュールにズレがなかった。予定していた納品までに僕らも色々と注文したけど、その都度スケジュールをキチンと調整して、できる事、出来ない事を整理してやってくれてたなと。あとは僕と橘さんたちの年代が違うというもの余計に良かったのかなと。今回は特に採用部分に力を入れる目的もあったので、若い人たちの感性でやってもらって結果的に本当に良いものが出来上がったと思うね。
ありがとうございます。ご満足頂けて僕らも嬉しい限りです。
うん、大満足だよ。そして周りからの評判もすごく良い。嬉しいよね、周りの人に言ってもらえると笑 タグライン制作のコピーライターさん、カメラマンも良かったね。よく撮って頂いた。サイトに掲載した僕の写真も評判いいよ笑 社長っぽいって言われるね笑 そういう作り込みやデザイン、全て本当に良かった。
ただ僕らは一旦これで満足だけど、御社はまだまだ満足する事なく挑戦してもらいたいな。それこそ企業はこれからSDGsだったり、これからの社会に合わせて色々な取り組みをしていかなくてならない。そういう事を見据えた提案だったり、時代背景を捉えた提案は色々できると思うよ。アンテナを張り巡らせてさ。だからワインでもなんでも安いものだけじゃなくて、とんでもないもの飲んでみるとか笑、あらゆる事で感性を磨いて欲しいなと思うよ。
ありがとうございます。またワイン飲ませてください笑 今後とも末長く宜しくお願いします!