持ち物達の思いで2020.12.4
私は移動の多い生活のためあまり沢山の荷物を持つことが出来ない。
持ち物はけっこう気を付けて選んでいる。
ここ最近、長年使ってきたものが次々と壊れだした。
ビーチサンダル。
海の暮らしを知っている私の友人達はだいたい便所サンダルでおなじみのPearl社が作るGyosan(ギョサン)と呼ばれるビーサンを履いている。これはもともと漁師が滑りやすい磯でも安全に履けるよう作られたものだ。サンダルとは思えないずっしりとした重量と分厚いソール、足に吸い付くようなフィット感がたまらなく気持ちいい。私は1年の半分くらいはこれをつっかけて外出している気がする。軽い山道や東京のクラブ、どこにでもこれで行く。そして、一番の強みはその驚くべき耐久性だ。友人の中には10年間一足のGyosanを履いている強者もいる。はっきり言うが登山靴のソールで有名なビブラムよりもタフだ。グリップも申し分ない。唯一困るのは色で、サイケデリックすぎるチョイスの中で渋めのものを選ぶと友人とかぶってしまい、酔っている時なんかは履き違えることが多々ある。しかし、各々の歴史に踏み込まれたその足型のフィット感にふと我に返り、自らのGyosanを履きなおす瞬間のノスタルジーを私は忘れない。
サンダル全体が一個体なので鼻緒が簡単に取れることもない。今回は経年劣化のために素材自体に細かな亀裂が入り始め、修繕してもらちが明かなくなった。友人は釣り糸のようなナイロンで亀裂を縫って履いているが、私は今回は自然に壊れるまで履いてしまおうと思う。1300円で4年半履いた。既に同じものを買っており、新しいものにいつ変えようかぐずぐずと迷っている。
バックパック。
高校の入学祝いに親にねだって買ってもらったアークテリクスのバックパックは、え?20年くらい一緒に連れ添ったことになる。すごい。当時まだ何が洒落ているのか全然判断できないダサイ私だったが、このリュックのチョイスは間違っていなかったようだ。
見た目勝負かと思いきや、両サイドに大きく開くジッパーが付いており、無理矢理どでかいのモノを入れる際にも融通が利いた。私は持ち物が多いので40+10リットルという大きさも重宝した。最近のバックパックのように無駄に多いポケットやすぐ破れるメッシュ、使わないドローコードなど余計なものが付いておらず変に壊れることもなかった。私が無理にジッパーを閉めた時に歯が欠けた。それからはもう一つのジッパーだけで数年使っていたが、生地もだんだんと擦り切れ始めた。糸で縫いながらごまかしてきたが、そのアークテリクスの化石のロゴマークの擦り切れ具合は「もういい加減俺を葬ってくれ」と囁いているかのようだった。いいリュックを1,2年探しながら、先日福岡で見つけたミリタリーモノを衝動買いしてお役御免となった。実家の壁につるして何かを入れて使おう。
このリュックとは一緒に海外も旅したので色んな思い出が詰まっている。枕やクッション代わりに使ったこともあったし、差別された国では人糞をくらったことなんかもあった。
極めつけは、私がメキシコへ傷心旅行をした時だ。
帰り際の空港で私のリュックは随分長いことX線で中身を覗かれていた。4,5人も係り員が集まって来て、何とも言えない表情でモニターを覗き込んでいる。
一体なんなんだ。
帰国して数日後。
リュックを洗おうと普段はあまり使わない背面の分かりずらいポケットを開けると、中から出て来たのは、女ものの黒いランジェリーだった・・・。
メキシコのハニーが内緒で忍ばせたお土産だった。
あぁ、おもひでよ、永遠に。
また新しいモノたちと沢山の旅ができますように。