今回新たなブランドとして「MONOLITH」を立ち上げた訳ですが、ランドセルで有名な株式会社セイバンとはどのような会社でしょうか?
桒田
セイバンは一昨年100周年を迎えて、今年で102年目になります。
本社は兵庫県にあるランドセルを製造・販売するメーカーです。
“天使のはね”で有名なランドセルですよね。新しいブランドを立ち上げるという事で我々に話を頂いたのは2019年の年末だったかと記憶しています。新ブランドの立ち上げの経緯をお聞かせください。
桒田
立ち上げの背景で言うと、やはり少子化という事が大きくありますね。ランドセルのビジネスは6歳児が対象になるじゃないですか。現在、6歳児が約100万人いるんですね。では去年生まれた子供達が6歳になるときってどうなるかとなった場合に過去の出生率とかトレンドから考察すると確実に落ちてくるんですね。これまで年率1.1%程度で落ちてきていたのが、ここから先は3.4%ずつ落ちてくると。更に言えばコロナの問題で予測ができないほどに劇的に変わってくる事が予想されますよね。中長期的に考えると顧客が少なくなる、先細りになることは間違いない訳です。中長期的に見ると必ず衰退していくので今次の手を打つ必要があるという事で始めたというのが事の発端ですね。
バックブランドというと多種多様なブランドが存在しているかと思います。 モノリスの骨格や方向性はどのように決めていかれたのでしょうか?
桒田
ランドセルで培った合理的で機能的な側面をマインドに持った製品ができないかという話の中で、中室さんや御社も含めた様々な外部パートナーとの出会いもあり具体的にコンセプトメイクしていったという流れになります。
そのタイミングで我々もジョインさせて頂いたんですね。桒田さんはファミリアとの取組みであったり、今回のモノリスであったり様々なプロジェクトを進めていると思いますが具体的にはどのようなお仕事をされているのでしょうか?
桒田
2つあって、1つは中期経営計画の策定であったり次世代幹部の育成であるとか経営企画的な役割ですね。もう1つがランドセル以外の事業を推進する多角化事業に関する仕事をやっています。私の背景でいくと、ずっとブランドビジネスをやっていて、主にマーケティングと経営企画畑を歩んできたので、今回セイバンが中長期を見据えた新たな事業をやるといったタイミングでご縁あってジョインしたという事になります。
これまでやってきたビジネスとの違いみたいなものがあれば教えてください。
桒田
そうですね、面白さで言うと人ですね。セイバンで働く人たちは100年続く老舗企業にも関わらず何にも凝り固まってないんですよね。その要因としては現社長の泉貴章の影響が大きいと思いますね。泉は非常に革新的な考えを持っていて、老舗企業でありながら常に新しいことに挑戦している。行動がなければ失敗はないが、成功も絶対にないし、現状維持は衰退と言える。とにかくやってみる。新規事業とかやったことないのだから、やる前から「失敗したら…」「損失がいくら出たら…」と考えていると進まない、まずは経験値を重ねないといけない。その中で、軌道修正しながら試行錯誤進めればよいのであり、それでも会社全体が傾かないように、既存(ランドセル)事業は徹底的に利益を生み出すように進化しなければならないと。
そういったアグレッシブな姿勢や考え方が合致したという事でしょうか?
桒田
まさにその通りですね。目的や考えがしっかりと共有出来ていれば口を挟むような事はしないですね。
それは桒田さんとスタッフの方々とのスタンスにも同じ事が言えますよね。スタッフの方々を信用してるんだなという印象を持っています。そういった環境の中でモノリスが立ち上がっていった訳ですが、ブランディングや売上など当初の予想に対して今の状況はいかがでしょうか?
桒田
まだ結果は見えてないというのが正直なところなんですが、私の過去の経験からしても良いブランディングが出来ているなと思いますね。私は「チーム モノリス」と呼んでいるのですが、橘さんもご存知のようにモノリスに特化して関わっているセイバンのスタッフは1人だけなんですよね。私は全体の事業ディレクションをやっていますので。そんな中でセイバンに無い機能はそれぞれのプロフェッショナルの方々と組んでやっています。その人たちの想いがしっかりと共有できている点が今のブランディングに大きく繋がっていると思いますね。チームモノリスとしての共有した目線があって、生み出されるプロダクト、企画・販売、お客様に届けるまでの考え方が皆一つになってます。
私たちは今回のように外部という立ち位置で関わらせて頂く事が基本なんですが、私が経験した中でも筋肉質なチームが出来上がっているという印象があります。そのあたりは桒田さんのご経験が為せる仕事なんだと思います。
桒田
笑 どうですかね〜、ただチームを運営していく上で重要視しているのは、まずはフレームをしっかりと設定するという事です。そこから外れた場合はフレームに戻すと。つまり範囲を決めるという事なんですかね。その中でそれぞれのプロがしっかりとパフォーマンスをだして頂くための役割なんだと思っています。マネージメントをする立ち位置だと口を出してしまう事ってあるじゃないですか。このデザインが良いとか、この色がいいとか。そういう事は私の場合は無いですかね。お任せしたらその分野のプロがいる訳ですから。
確かに企画会議などで好みなどを言っている場面は見た事ないですもんね。
桒田
そうですね。僕らが組む相手の条件として、一つは想いを共有できること。これは勿論大事な事ですよね。もう一つが成功体験のある方です。つまり自分の勝ちパターンを持っている方とやろうと決めています。ですからその人たちの分野においてはその人たちにお任せする。だけどチームをまとめていく上で範囲は決めるという事を大事にしてますね。
そこが桒田さんが放っている、ある種の怖さに繋がるんですかね?笑
怖いですよ〜笑 事細かく言われると“言われた通りにやればいい”ってなりがちですけど、言われないと自分ごととして考えないといけないですから。当然の事なんですけどね。また桒田さんは何を考えているかわからない雰囲気もありますからね笑
桒田
そうですかね笑 まー、目的は明確化してますよね。なぜそうしたのかという理由がないとダメだと思っています。そういう意味で追い込むという作業は意識的にしてますよね。例えば本行さん(ザ・カンパニー プロデューサー)と仕事をしている中でなぜそのデザインなのか、なぜその機能なのか、などはとことん考えてもらって、納得いくまで共有してもらうようにしてます。共通認識しているターゲットにピントが合っている仕事をしてくださいがミッションなのでね。楽なのはこういうデザインにしてくださいというのが楽でしょうけど、それは僕の考え方でしかないので、そこはその道のプロとしてターゲットの心を掴む表現をしてくださいという話ですよね。その部分はどのジャンルの方々と組むとなってもとことん考えて貰える方々と仕事がしたいという想いがあります。
つまり、信用しているからこそ決めた範囲の中では責任を持って100%のパフォーマンスをしてくださいという事ですよね。とはいえ、信頼してオーダーできる方は中々少ないように思います。
桒田
ジャッジ権がある人間の言葉ってやっぱり大きくて、その人が右と言ったらみんなも右向いてしまいがちじゃないですか。それってあまりよろしくない事ですよね。そういう意味でいうとモノリスのチームは毎週会っている中で色々な話をしているので目線がちゃんと合いますよね。
様々なポイントがしっかりと噛み合っている良いチームになっているんですね。 逆に今回のモノリス立ち上げにおいて、難しいと感じた点はありましたか?
桒田
どうだろうなー。プロジェクト自体は橘さんもご存知の通り1年以上も前から進めていたので割と時間が経ったようにも感じますが、ブランドがローンチしてからは実はまだ半年しか経ってないんですよね。ですから今のところは何か壁があったというような状況はないですかね。今期は健全なブランディングみたいな部分をテーマにしているので、そういった意味でもすこぶる良い立ち上がりをしているという印象です。
そういうチームに関わる事が出来て僕らも嬉しい限りです。
今後のモノリスのブランド展開、目指すべき姿みたいなものはどのようにお考えでしょうか?
桒田
基本的にブランドの考え方として、伝統を守りつつ、常に進化を続けるという点が挙げられます。「考え方自体が我々のお客様から常に支持されている」、そんなブランドになるべきだと思っています。今回ブランドが立ち上がって、様々な広告であったりデジタルマーケティングなどをやっていく際に思ったのは健全な成長をしていきたいと思ったんですよ。なぜならば、ブランドというのは知らぬうちに広がってしまうという怖さもあるんですよね。最初のコアなターゲットは勿論大切にしながら末長く付き合っていきたいですよね。かつ、事業としては適切な規模に成長していかなくてはいけないので、そういう時でも最初のターゲットの方々にも次のページを絶対に見せていきたいなと。表現するならば最終章は見せないようなブランドにしたいですよね。この次のページ何があるんだろうっていうのを常に表現する。
「期待を満たす」というブランドではなくて、「期待の先を満たしていく」ブランドにしたいですね。
ライフスタイルはそれぞれに変化があって、デバイスによっても変わってくるものですもんね。
桒田
おっしゃる通りです。僕らブランドを作る側は新しい時代のマーケティングをしないといけないじゃないですか。コロナもあってこの後どうなるかと。世界がどう動くかも全くわからない時代なんですよね。そういった中で我々が果たすべき役割や意味合いをしっかりと考えないといけないと思いますね。だから常にそういった事が議論できるチームでありたいですね。ただ、こういう話になると売上は後でもいいんだって考える人もいるかもしれませんが、それはビジネスをやっていく中では基本なのでしっかりとした事業計画をとり、両輪を回しながら解決していくようなチームでありたいですね。
そうですよね。いくら良いブランドを作っても売上が無ければ次の一手も打てないですしね。今回良い形でブランドが立ち上がった訳ですが、セイバン社の中ではどういった反応なんでしょうか?
桒田
当事者なので分かりづらいんですが、期待感はすごい高いと感じますね。それはランドセルを作っている工場で働く人たちも含めてですね。その人たちに言われたのは自分たちもモノリスを作りたいと。なぜならば自分たちが持てるものを作った事がないからと言うんですよね。なるほど〜と思いましたね。また中期経営計画もしっかりと見せて伝えて、それに沿って事業がちゃんと成長しているのがわかるからという点もあると思います。
外側だけでなく、内側からも期待される楽しみなブランドですね。お話しを伺っているとやはり人という部分をとても大切にされていると感じるのですが、桒田さんの中でのパートナー選びの基準みたいなものがあれば教えてください。
桒田
そうですね。先ほどもチラッとお話しさせて頂いた部分でもあるんですが、やっぱり一番大切なのは想いの共有です。勿論パッションという部分もあるんですけど例えばある服があった時にデザイナーに対してちょっとシャープにしたほうがいいよねってなったとします。何ミリ細くしますか?って返されるとちょっとストレスになるというか。「やっぱりそうですよね!」というような感覚が共有できるチームだと可能性があると思うんですよね。
ロジカルな考え方だけでは済まない部分ってあるじゃないですか。感覚の部分。言葉で説明できない部分ってありません?それを「あ〜!それそれ!」って共有できる。その素養がある人たちと組みたいですよね。そういうのが共有出来ないとめんどくさいし、時間がかかりますよね。
僕らは制作の業界なんで本当によくわかります。そういう人たちじゃないと長く付き合えないですよね。
桒田
まさにそうなんです。あともう一つが成功体験です。しかも縛られない人です。
成功したという経験って大きいじゃないですか。だけどもその成功した手法が今回も使えるとは限らない。ただ成功した体験があるというのは乗り越えるという感覚を持っていると思うんですよね。その感覚を知っている人たちと仕事をしたいと思っています。
例えば僕らのプロジェクトでも、全く知見のない事が起きるとするじゃないですか。でもそういった体験や感覚が備わっている人たちだとクリエイティブは勿論ですが、進行における時間軸であったり様々なことに対して応用した考え方ができるんですよね。その感覚が共有できるチームだと全員がストレスなく仕事をすることができるので結果として効率があがると思っています。
ある種、すごくロジカルな考え方ですよね。そんな中で私たちは大丈夫でしょうか?笑
桒田
もちろん大丈夫ですよ笑 全くストレスを感じてません。本行さんは本当にいいキャラですよね笑 チームみんなに愛されてるキャラクターの方なので私もすごく助かっています。
桒田さん、本行をイジりますからねー笑
最後に弊社との取り組みの感想をざっくばらんに教えてください。
桒田
本当にストレスがないですよね。コンセプトメイクの段階から一緒にやってもらってるじゃないですか。今も定例会にずっと参加して頂いてて。その中で思うのは本当に自分ごとのように考えてもらってますよね。で、おかしい事はおかしいとハッキリ言ってくださってるなと。本行さんは顔にも出ますしね笑
同じベクトルに向かって走って頂ける会社だと思っています。
ありがとうございます!大変嬉しいお言葉です。今後も引き続き、宜しくお願いします!