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2024/10/02
医療ブランディング成功の7つの法則|選ばれる医療機関になるための実践ガイド

 

医療・ヘルスケア業界において、ブランディングは患者との信頼関係を構築する最重要戦略です。厚生労働省の「令和5年受療行動調査」によると、外来患者の68.4%が「家族・知人・友人の口コミ」から医療機関情報を入手する一方、インターネットでの情報収集も急増し、特に15-39歳では43.3%がネット情報を活用しています(出典:厚生労働省 令和5年受療行動調査)。

本記事では、弊社が手掛けた医療機関のブランディング事例をもとに、デジタル時代に「選ばれる医療機関」になるための実践的な手法を解説します。

 

 

1. 医療ブランディングの本質:見えない価値を可視化する

患者の医療機関選びは「情報戦」の時代へ

令和5年の調査データによると、医療機関を選ぶ際にインターネットを活用する患者は全年代で増加傾向にあり、0-14歳では44.4%、15-39歳では43.3%に達しています(出典:厚生労働省 令和5年受療行動調査)。患者は複数の情報源から医療機関を比較検討し、診療時間、アクセス、専門性、口コミ評価などを総合的に判断しています。

医療サービスの価値は事前に判断しにくいという特性があります。製品のように手に取って確認することも、飲食店のように気軽に試すこともできません。だからこそ、ブランディングによって医療機関の専門性、診療方針、スタッフの質、設備の充実度などの「見えない価値」を視覚的・感覚的に伝えることが重要なのです。

弊社事例:ラソワレディースクリニックの成功

弊社が手掛けたラソワレディースクリニック様では、「絹」(フランス語でラソワ)というコンセプトを軸に、女性の繊細な悩みに寄り添うブランドイメージを構築しました。ネーミング開発から、ロゴマーク、Webサイト、名刺まで、すべての接点で「絹のような優しさ」を体現。やさしく余裕のあるトーンで設計し、余計な情報を排除することで、利用者が必要な情報にスムーズにたどり着ける設計を実現しました。

2. ターゲット患者層の深層理解:医療ペルソナ設計

医療特有のペルソナ要素

効果的な医療ブランディングの第一歩は、「誰のための医療か」を明確にすることです。年齢・性別・職業といった基本属性に加えて、以下の要素を詳細に検討します。

健康リテラシーのレベル 患者の医療知識レベルによって、求める情報の深さや伝え方が変わります。専門用語を使った詳細な説明を求める層もいれば、わかりやすい例え話での理解を希望する層もいます。

受診に至る心理的プロセス 令和5年受療行動調査によると、自覚症状がなくても健康診断等で受診する予防重視型の患者が増加傾向にあります。症状が出てから受診する層とは、アプローチ方法が全く異なります。

意思決定への関与者 小児科では母親、父親、祖父母など複数の家族が意思決定に関与し、高齢者医療では多くのケースで成人した子どもが医療機関選びを主導します。ターゲットは患者本人だけではないのです。

ライフステージ別の具体的アプローチ

産婦人科クリニックを例に取ると、同じ女性でもライフステージによって求めるものが異なります。妊活期には「一緒に頑張るパートナー」としての姿勢と成功実績、妊娠期には「安全・安心な出産」のサポート体制、更年期には「人生の新しいステージ」への総合的なケアとプライバシーへの配慮が重要になります。

3. 視覚的アイデンティティと空間デザイン

医療における色彩心理学の戦略的活用

色彩は患者の心理に直接的な影響を与えます。ブルー系は信頼と清潔感を演出し、多くの総合病院で採用されています。弊社が手掛けた聖マリアンナ医科大学病院メディカルサポートセンター様のロゴでは、信頼のブルーに希望のグリーンを組み合わせました。

グリーン系は安心と回復のイメージと結びつき、心理的な安定をもたらします。リハビリテーション施設や精神科クリニックで特に効果的です。小児科では、オレンジやイエローなどの暖色系を部分的に使用することで、子どもの不安を和らげる効果が期待できます。

エビデンスベースドデザインで治療効果を高める

科学的根拠に基づいた空間設計は、患者の回復を促進します。待合室では自然光の活用により患者の不安レベルを軽減し、適度なプライバシー確保で他患者との適切な距離を保ちます。診察室では適切な天井高で圧迫感を軽減し、医師と患者の視線を同じ高さに調整することで、信頼関係を構築しやすい環境を作ります。

4. デジタル時代の患者エンゲージメント戦略

医療コンテンツマーケティングの実践

厚生労働省の調査によると、医療機関の情報源としてインターネットを活用する患者が急増しており、複数のWebサイトで情報収集を行うことが一般的になっています(出典:厚生労働省 令和5年受療行動調査)。

症状別コンテンツの設計が重要です。「頭痛 原因」「めまい 病院」といった検索に対応するコンテンツを準備し、不安を煽るのではなく、適切な受診タイミングや準備すべきことなど、患者の行動を支援する情報を提供します。

 

オンライン診療時代の統合的アプローチ

コロナ禍を経て、オンライン診療は一般的な選択肢となりました。重要なのは、対面診療との最適な組み合わせです。初診は対面で信頼関係を構築し、定期フォローはオンラインで利便性を提供、検査時は来院を促し、結果説明はオンラインで実施するなど、シームレスな患者体験の設計が求められます。

 

5. 医療ブランディングのROIを最大化する

定量的な成果測定

効果的なブランディングは測定可能です。厚生労働省の令和5年受療行動調査によると、病院に対する全体的な満足度は向上傾向にあり、「満足」と回答した外来患者は約70%に達しています(出典:厚生労働省 令和5年受療行動調査)。

主要な測定指標:

  • 新規患者数の増加率
  • 紹介患者率の向上
  • Web経由の問い合わせ増加
  • NPS(推奨度)スコアの改善
  • 再診率の向上
  • 口コミ評価の上昇

投資対効果の実証

医療ブランディングへの投資は、適切に実施すれば中長期的に大きなリターンが期待できます。ブランド力の向上は、患者獲得コストの削減、リピート率の向上、単価の適正化など、多面的な効果をもたらします。

まとめ:本質的な価値を引き出すブランディングへ

医療・ヘルスケア業界におけるブランディングは、患者との信頼関係を基盤とした長期的な取り組みです。医療の専門性を保ちながら、患者視点に立った情報提供、安心感のある空間設計、利便性の高いデジタルサービスを統合的に提供することで、「選ばれる医療機関」となることができます。

弊社ザ・カンパニーは、「本質的な魅力を引き出すブランディング」を通じて、医療機関の真の価値を患者に伝えるお手伝いをしています。詳細は弊社Webサイトをご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 小規模クリニックでもブランディングは必要ですか?費用対効果は期待できるでしょうか?

A. むしろ小規模クリニックこそブランディングが重要です。大病院と異なり、地域に密着した「選ばれる理由」を明確にすることで、効果的な集患が可能になります。

費用対効果の観点では:

  • 適切なターゲット設定により、広告費用の無駄を削減
  • 口コミによる紹介患者の増加で、新規獲得コストを抑制
  • リピート率向上による安定的な収益基盤の構築

初期投資は必要ですが、長期的には患者満足度の向上と経営の安定化に大きく貢献します。

Q2. 医療広告ガイドラインの制約がある中で、どのようにブランディングを進めればよいですか?

A. 医療広告ガイドラインを遵守しながらも、効果的なブランディングは十分可能です。重要なのは「誇大広告」ではなく「事実に基づいた価値の伝達」です。

規制の範囲内でできること:

  • 院内の雰囲気や設備の紹介(客観的事実として)
  • 医師・スタッフの経歴や専門性の提示
  • 診療理念や患者への思いの表現
  • 正確な医療情報の発信によるコンテンツマーケティング

ガイドラインは患者保護が目的なので、患者視点での情報提供を心がければ、自然と適切なブランディングが可能になります。

Q3. エビデンスベースドデザインとは何ですか?本当に投資価値はあるのでしょうか?

A. エビデンスベースドデザインは、科学的研究に基づいた空間設計により、実際の治療成果を向上させる手法です。単なる見た目の改善ではなく、患者の回復を促進する環境づくりを目指します。

研究で実証されている効果:

  • 自然光の導入により、入院日数が平均16%短縮
  • 適切な音環境設計で、患者の睡眠の質が30%向上
  • プライバシーに配慮した設計により、医療ミスが11%減少

初期投資は通常の内装工事より10-20%程度高くなりますが、患者満足度の向上、スタッフの離職率低下、医療事故の減少などを考慮すると、3-5年で投資回収が可能です。

Q4. 既存の高齢患者層を大切にしながら、若い世代も取り込みたいのですが可能ですか?

A. 段階的なアプローチで十分可能です。急激な変化は既存患者の離脱リスクがあるため、両立を図る慎重な戦略が必要です。

推奨されるステップ:

  • Phase 1:若い世代向けの専門外来や時間帯を設定(例:夜間診療)
  • Phase 2:Webサイトやパンフレットで世代別にページを分ける
  • Phase 3:スタッフ教育を通じて、両世代に対応できる接遇を確立
  • Phase 4:成果を見ながら、徐々にブランドイメージを拡張

重要なのは、既存患者を大切にしながら、新規層にもアプローチすることです。

Q5. オンライン診療を導入したいのですが、対面診療との一貫性をどう保てばよいですか?

A. オンラインと対面の境界をシームレスにすることが成功の鍵です。デジタルツールは手段であり、本質的な医療の質は変わらないことを体現しましょう。

一貫性を保つための具体策:

  • 統一されたカルテシステムで情報を一元管理
  • オンライン画面の背景や資料デザインを院内と統一
  • 挨拶や説明の流れを両方で標準化
  • オンライン後の検査予約、対面後のフォローを円滑に連携

患者アンケートでは「どちらで受診しても同じ安心感がある」という評価を目指します。

Q6. ブランディングの効果はどうやって測定すればよいですか?

A. ブランディングの効果は定量・定性の両面から測定可能です。継続的なモニタリングにより、投資対効果を明確に把握できます。

主な測定指標:

  • 定量指標:新患数、リピート率、紹介患者数、Web訪問数、平均診療単価
  • 定性指標:患者満足度調査、口コミ評価、スタッフ満足度、地域での認知度
  • 財務指標:集患コスト、患者生涯価値(LTV)、ROI

3ヶ月ごとに指標をレビューし、PDCAサイクルを回すことで、継続的な改善が可能です。

加藤 廉太郎

加藤 廉太郎

プロダクションマネージャー

映像会社を経て、ザ・カンパニーに入社。ウェブ、グラフィック、映像、アプリなどのクリエイティブ制作進行を担当。

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