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2024/10/17
ブランド名の決め方:本質的な「らしさ」を引き出す5つの成功戦略

 

 

なぜブランド名が企業の命運を左右するのか

「実は、企業価値の70%以上がブランド価値で決まる」という事実をご存知でしょうか?

生命保険のブランド認知度調査において、トップ・オブ・マインド率(最初に思い出されるブランド)は対象13社平均で6.5%となり、1番目に思い出される企業は圧倒的な市場優位性を持つことが判明しています。このデータが示すように、適切なブランド名は単なる識別記号ではなく、顧客の記憶に深く刻まれ、購買行動を左右する重要な資産なのです。 本記事では、株式会社ザ・カンパニーが実践している「本質的な魅力を引き出すブランディング」の観点から、成功するブランド名の決め方について、具体的な戦略と実践方法を徹底解説します。市場調査から商標登録まで、ブランド名決定の全プロセスを通じて、あなたの企業が「選ばれる存在」になるための道筋を示します。corp.neo-m.jp「生活者に”記憶”され、選ばれるブランドに変える新戦略」 

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社「ブランドロイヤルティ分析レポート」(2024年6月)

 

 

第1章:ブランド名が持つ3つの決定的影響力

1-1. 記憶定着による市場優位性の確立

ブランド認知度調査によると、純粋想起(消費者が自発的にブランドを思い出す)において、記憶の中で特に強い印象を持っているブランドは、顧客の購買意欲に直結することが明らかになっています。 (アスマーク「ブランド認知度調査とは?」

 

記憶に残るブランド名の特徴:

  • シンプルさ:5〜10文字以内の短い名前
  • 発音のしやすさ:口コミでの拡散を促進
  • 意味の明確さ:企業の価値を即座に伝達

例えば、「Google」という名前は、もはや「検索する」という動詞として日常会話に定着しています。小文字のiが頭文字になっているApple製品は、それだけで製品の識別が可能となり、記憶に残る応用力の高いキャッチーなブランド名を実現しています。
Canva「記憶に残るブランドが使っている12のシンプルなストラテジー」(2025年3月)

 

1-2. 差別化による競争優位性

競合がひしめく市場において、ブランド名は最初の差別化ポイントとなります。弊社が手掛けた「ラソワレディースクリニック」の事例では、「絹」(フランス語でラソワ)というネーミングで、女性が抱えるセンシティブな悩みを柔らかく包み込むというコンセプトを表現し、他の医療機関との明確な差別化を実現しました。

1-3. 長期的な企業価値の向上

強いブランド名は、時間とともに企業の無形資産として蓄積されます。2019年のブランド価値ランキングでは、Amazon、Google、Appleなどのテクノロジーブランドが上位を占め、その価値総額は1兆ドルを超える規模となっています。これらの企業に共通するのは、シンプルで覚えやすく、かつ独自性の高いブランド名を持っていることです。
MarkeZine「ブランド価値ランキング」(2019年6月)

 

第2章:成功事例から学ぶブランド名の法則

2-1. グローバル成功企業の共通パターン

世界のブランドランキングTop 30のうち、60%が特定の条件を2つ以上満たし、実に86%がいずれかの条件を満たしているという統計的分析結果があります。 (btrax「成功するブランド名の共通点」(2024年8月)

成功するブランド名の3大法則:

  1. 文字数の法則:英語アルファベットで5〜10文字
  2. 音韻の法則:同じ文字が2回以上入る(Google、Apple、Coca-Cola)
  3. 意味の法則:製品やサービスの本質を暗示

2-2. ザ・カンパニーの実践事例

弊社では、これまで多くのブランディングプロジェクトを手掛けてきました。

【事例1】日本郵船株式会社「NYK Energy Ocean」 グリーンビジネス事業の旗印として、プロジェクト名、キャッチコピー、ステートメントを開発。次世代燃料の普及を促進する企業姿勢を、シンプルかつ力強いネーミングで表現しました。

【事例2】EYEVAN(株式会社アイヴァン) 自社の社名を冠した基幹ブランドのデジタル領域におけるブランディングを実施。ブランド名の持つ洗練されたイメージを、Webサイトやビジュアルアイデンティティ全体で統一的に表現しました。

【事例3】THE TOBACCO(株式会社コソド) 「喫煙所なのに」というギャップを活かしたネーミングで、日本一心地いい喫煙所というコンセプトを実現。タバコは文化であるという世界観を、ブランド名から発信しています。

2-3. 業界別成功パターンの分析

テクノロジー業界

  • 造語や既存単語の新しい組み合わせ(Microsoft、Facebook)
  • 未来感や革新性を感じさせる音感

ライフスタイル業界

  • 感情や体験を想起させる名前(無印良品、ユニクロ)
  • 生活に溶け込む親しみやすさ

B2B業界

  • 信頼性と専門性を表現(アクセンチュア、デロイト)
  • 業界内での認知を重視した命名

第3章:実践的ブランド名決定プロセス

3-1. Phase1:市場調査と競合分析(2週間)

ステップ1:市場環境の把握

  • ターゲット市場の規模と成長性
  • 顧客ニーズの深掘り調査
  • トレンドと将来予測

ステップ2:競合ブランドの分析

  • 競合他社のネーミング傾向
  • 市場でのポジショニングマップ作成
  • 差別化ポイントの明確化

弊社のブランディングプロセスでは、「徹底的な対話による本質の探求」を重視し、企業やサービスの本質的な「らしさ」を見出すことから始めます。

3-2. Phase2:ブランドコンセプトの明確化(1週間)

ブランドの本質を定義する3つの要素:

  1. 理由を作る:なぜ選ばれるのかを明確化
  2. 信頼関係を構築する:一貫したブランド体験の設計
  3. 長期的な企業価値を高める:持続的成長を可能にする価値の定義

3-3. Phase3:ネーミング案の創出(2週間)

創出手法の組み合わせ:

  • ブレインストーミング:チーム全体での自由な発想
  • AIツールの活用:NamelixやShopify Business Name Generatorなどの活用
  • 言語学的アプローチ:音韻論や意味論からの検討

評価基準チェックリスト:

  • [ ] 覚えやすさ(5秒テスト)
  • [ ] 発音のしやすさ(多言語対応)
  • [ ] ドメイン取得可能性
  • [ ] 商標登録の可能性
  • [ ] ネガティブな意味の有無(多言語チェック)

3-4. Phase4:検証とテスト(1週間)

非助成で挙げられるブランドは記憶に強く残っているブランド(Evoked Set)とされ、中でも最初に挙げられたブランドは第一想起(Top of Mind)と呼ばれ、購買行動への影響が大きいとされています。 (grooveworks「ブランド調査の実践ガイド」(2025年4月)

 

テスト方法:

  • 社内外でのアンケート調査
  • フォーカスグループインタビュー
  • A/Bテストによる反応測定

3-5. Phase5:商標登録と法的保護(2-3ヶ月)

必須確認事項:

  1. 類似商標の存在確認
  2. 国際分類の選定
  3. 海外展開を見据えた多国籍登録
  4. ドメイン名の確保 ※商標登録の費用は1区分あたり出願料12,000円、登録料32,900円(10年分)で合計約45,000円程度 出典:特許庁「商標の登録査定を受け取った方へ」

第4章:ブランド名を成功に導く5つの戦略

戦略1:感情に訴えるストーリーテリング

ブランド名に込められた想いやストーリーを効果的に伝えることで、顧客との感情的つながりを構築します。

戦略2:一貫性のあるブランド体験の設計

ブランド名から始まる全てのタッチポイントで、一貫したメッセージと体験を提供します。

戦略3:デジタル時代への最適化

  • SNSでの拡散しやすさ
  • ハッシュタグとしての機能性
  • 音声検索への対応

戦略4:グローバル展開を見据えた設計

多言語・多文化に対応できる普遍性を持たせつつ、ローカライズの余地を残します。

戦略5:継続的なブランド価値の向上

ブランド名を起点とした継続的なコミュニケーション戦略を展開し、ブランド資産を蓄積していきます。

まとめ:ブランド名から始まる企業変革

ブランド名は、企業の「あるべき姿」を体現する最初の一歩です。適切なブランド名は、顧客の記憶に残り、差別化を実現し、長期的な企業価値を創造します。

成功への3つのポイント:

  1. 本質的価値の発掘:企業の「らしさ」を徹底的に探求
  2. 戦略的プロセス:市場調査から商標登録まで体系的に実施
  3. 継続的な価値向上:ブランド名を起点とした一貫したコミュニケーション

ザ・カンパニーでは、徹底的な対話と分析により、お客様の本質的な魅力を引き出すブランディングをご提案しています。ブランド名の決定から、VI開発、コミュニケーション施策まで、包括的なブランディング支援が必要な際は、ぜひお問い合わせください。

あなたのブランドに、あるべき姿を。

ブランド名の決め方FAQ

よくある質問(FAQ)

Q1. ブランド名を決める際の適切な文字数はどのくらいですか?

A. 理想的なブランド名の文字数は、英語アルファベットで5〜10文字以内です。世界のブランドランキングTop 30の統計分析によると、成功しているブランドの多くがこの範囲に収まっています。短くて覚えやすいことはもちろん、SNSやデジタルメディアでの使いやすさも考慮すると、この文字数が最適です。ただし、日本語の場合は4〜8文字程度が親しみやすく、口コミでも広がりやすい傾向があります。

Q2. ブランド名の商標登録にかかる期間と費用はどのくらいですか?

A. 商標登録の期間は通常2〜3ヶ月程度かかります。費用は1区分あたり出願料が12,000円、登録料が32,900円(10年分)となり、合計で約45,000円程度です。ただし、複数の商品・サービス区分で登録する場合や、弁理士に依頼する場合は追加費用が発生します。また、海外展開を視野に入れる場合は、各国での商標登録も検討する必要があり、国ごとに費用と期間が異なります。早めの準備と専門家への相談をおすすめします。

Q3. AIツールを使ったブランド名の生成は効果的ですか?

A. AIツールは初期のアイデア出しやインスピレーションを得る段階では非常に有効です。「Namelix」や「Shopify Business Name Generator」などのツールは、キーワードから大量の候補を生成してくれるため、発想の幅を広げることができます。ただし、最終的なブランド名の決定には、市場調査、競合分析、ターゲット顧客の感情的な反応、商標登録の可否など、人間による総合的な判断が不可欠です。AIツールはあくまでも補助的なツールとして活用することをおすすめします。

Q4. 既存のブランド名を変更(リブランディング)する際の注意点は?

A. リブランディングは慎重に進める必要があります。まず、既存顧客への影響を最小限に抑えるため、変更の理由と新しいブランドの価値を明確に伝えることが重要です。移行期間を設けて段階的に切り替えを行い、新旧ブランド名を並記する期間を設けることも効果的です。また、SEO対策として301リダイレクトの設定、取引先への事前通知、マーケティング資材の更新計画など、綿密な移行計画が必要です。成功事例を参考にしながら、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

Q5. グローバル展開を見据えたブランド名を作る際のポイントは?

A. グローバル展開を考える場合、多言語・多文化への配慮が不可欠です。まず、主要な展開予定国の言語でネガティブな意味を持たないか確認します。発音のしやすさも重要で、どの言語圏でも同じように発音できることが理想的です。また、文字表記の統一性(アルファベット、漢字、カタカナなど)も考慮しましょう。さらに、ドメイン名の取得可能性を各国のccTLD(国別コードトップレベルドメイン)で確認することも重要です。AppleやGoogleのように、シンプルで普遍的な名前が世界的に成功している理由はここにあります。

Q6. ブランド名決定後の効果測定はどのように行えばよいですか?

A. ブランド名の効果測定には複数の指標を組み合わせて評価します。「純粋想起率」(ヒントなしでブランドを思い出す割合)と「助成想起率」(ブランド名を提示した際の認知率)を定期的に測定し、特に「トップ・オブ・マインド率」(最初に思い出される割合)の向上を重視します。また、SNSでのメンション数、検索ボリュームの推移、ブランド連想調査による感情的な評価も重要な指標です。これらのデータを3ヶ月〜半年ごとに定点観測することで、ブランド名の浸透度と効果を可視化できます。必要に応じて、コミュニケーション戦略の修正を行いましょう。

橘 啓介

橘 啓介

代表取締役  クリエイティブディレクター

1980年生まれ、東京都出身。2009年にザ・カンパニーを創業。 好きな食べ物:もずく 好きな果物:スイカと梨 好きな薬味:ミョウガとすだち ハマっている漫画:望郷太郎

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