Knowledge

2024/08/05
売上を変えるパッケージブランディング戦略とは?メリコの法則を解説

パッケージを変えただけで、売上10倍になったブランドがある

「鼻セレブ」というティッシュをご存知でしょうか。

発売前、この商品は「モイスチャーティシュ」という名前でした。

品質には自信があったものの、売上は伸び悩んでいた。

そこでネピアは、パッケージを全面的に見直しました。

名前を「鼻セレブ」に変え、箱にはふわふわの動物の写真を配置。結果、売上は10倍になりました。

 

一方、逆の事例もあります。アメリカのトロピカーナは、2009年にパッケージをリニューアルしました。

長年親しまれてきた「ストローが刺さったオレンジ」のイラストを廃止し、シンプルなデザインに変更。

結果、売上は20%減少し、わずか2ヶ月で元のデザインに戻すことになりました。

 

この2つの事例が示しているのは、パッケージは「見た目の問題」ではないということです。

鼻セレブは、商品の価値である「肌へのやさしさ」を、名前とビジュアルで一貫して伝えました。

トロピカーナは、お客様が「トロピカーナらしい」と感じていた要素を、自ら手放してしまいました。

パッケージブランディングとは、パッケージを通じてブランドの価値を伝え、「選ばれる理由」を作ることです。

デザインのセンスではありません。ブランドの価値を活かせたか、捨ててしまったか。

その違いが、売上10倍と売上20%減という結果を分けたのです。


パッケージで成功するブランドは、「何を伝えるか」が決まっている

パッケージのリニューアルで成功したブランドには、共通点があります。

それは、「このパッケージで何を伝えるか」が明確だったということです。

 

 

コカ・コーラの「くびれボトル」をイメージしてみてください。

あの形は、暗闘の中で触っても、割れた破片を見ても、コカ・コーラだとわかるようにデザインされたと言われています。

実際、コカ・コーラがくびれボトルを前面に押し出したキャンペーンでは、売上が7%増加しました。

伝えていたのは、「正真正銘のコカ・コーラである」という本物感です。

小林製薬の「命の母」は、長年のパッケージを見直し、若年層の獲得に成功しました。

従来の「更年期向け」というイメージから、「女性の健康をサポートする」という価値を前面に出すデザインに変更。

新しいターゲット層に「これは自分のための商品だ」と感じてもらえるパッケージになったのです。

一方、先ほどのトロピカーナは、「新鮮さ」「オレンジそのもの」という、ブランドが長年築いてきた資産を自ら捨ててしまいました。

 

デザイン自体はモダンで洗練されていましたが、お客様が「トロピカーナらしい」と感じる要素がなくなっていた。

結果、棚の前で「いつものトロピカーナ」を見つけられなくなった人が続出しました。

成功と失敗を分けたのは、デザインのセンスではありません。**「何を伝えるべきかわかっていたか」**です。


ブランドを「3秒で伝える」パッケージの作り方

ドラッグストアでハンドクリームを選ぶ場面を想像してみてください。

棚には何十種類もの商品が並んでいます。一つひとつ手に取って、成分表示を読んで——そんな買い方をする人がいる一方で、多くの人は、棚をさっと見て、「なんとなく良さそう」と感じたものに手を伸ばします。

パッケージが勝負する時間は、わずか3秒。その一瞬で、「これは自分のための商品だ」と思ってもらえるかどうかが決まります。

この「3秒の勝負」を設計するためのフレームワークが、**「メリコの法則」**です。

「メ」は目立つこと、「リ」は理解できること、「コ」は好感を持てること。この3つを順番に設計することで、選ばれるパッケージを作ることができます。

私たちが手がけた関ファームの「COCO TOMATO」シリーズを例に、それぞれのステップを見ていきましょう。


※詳しくは画像をクリック

 

ステップ1:「メ」目立つ——まず見つけてもらう

どんなに良い商品でも、気づいてもらえなければ存在しないのと同じです。

COCO TOMATO JUICEのボトルを見てください。白いラベルに、細い黒文字で「COCO TOMATO. JUICE」。トマトの写真もイラストもありません。

一見すると「これで目立つのか?」と思うかもしれません。しかし、棚に並んだときのことを想像してみてください。多くのトマトジュースは、赤いラベルに大きな文字、トマトの写真——情報が詰め込まれています。

そこに、余白をたっぷり取った白いラベル。瓶の中の真っ赤なジュースが透けて見える。「なんだろう?」と目が止まります。

目立つとは「派手にする」ことではありません。周りと違う佇まいを作ることです。引き算のデザインが、結果として最も目を引くこともあるのです。


ステップ2:「リ」理解——何の商品かを瞬時に伝える

足が止まったら、次は「これは何か」を瞬時に理解してもらう必要があります。

COCO TOMATO JUICEは、ラベルの情報を極限まで絞っています。商品名、産地(東京都清瀬市)、そして「SEKI FARM」のロゴ。それだけです。

しかし、それで十分伝わります。瓶を透かして見える濃厚な赤色が「トマトジュース」であることを示し、シンプルなラベルが「こだわりの農園が作った特別なもの」という印象を与えます。

ここで重要なのは、「何を載せるか」ではなく、「何を載せないか」です。情報を削ぎ落とすことで、本当に伝えたいことだけが残ります。


ステップ3:「コ」好感——「なんか好き」を生み出す

最後の「コ」は、理屈を超えた「なんか好き」という感覚です。

COCO TOMATOのパッケージには、あたたかみがあります。素朴な瓶の形、ラベルの余白。「丁寧に作られたもの」「誰かの顔が見える商品」という印象が自然と伝わってきます。

これは、ターゲットとなるお客様の価値観と一致しています。大量生産ではなく、作り手の想いが感じられるものを選びたい。そういう人たちの「なんか好き」を引き出すデザインなのです。

好感とは、お客様の価値観や感情とのつながりです。「誰に届けたいか」を明確にすることで、その人たちの心に響くデザインが生まれます。


パッケージでブランドを伝える3つのステップ

関ファームの事例を見て、「うちもこういうパッケージを作りたい」と思った方もいるかもしれません。

では、実際にどのような手順で進めればいいのでしょうか。

私たちが普段行っているプロセスを、3つのステップに分けて紹介します。


ステップ1:ブランドの「らしさ」を言葉にする

最初にやるべきことは、デザインを考えることではありません。「このブランドは何者か」を言葉にすることです。

「高品質」「こだわり」「安心」——こうした言葉はどのブランドでも言えてしまいます。

そうではなく、「うちだから言えること」を探す作業が必要です。

関ファームの場合、「トマトが美味しい」は当たり前。

そこから掘り下げて出てきたのが、「トマトそのものの品質で勝負できる自信」でした。

だからこそ、余計な装飾を省いて、トマトそのものを見せるデザインが生まれたのです。


ステップ2:伝えることを1つに絞る

「らしさ」が言葉になったら、次はそれを1つに絞る作業です。

パッケージで伝えられる情報には限りがあります。

あれもこれも載せたくなる気持ちはわかりますが、情報が増えるほど、何も伝わらなくなります。

「このパッケージを見た人に、一言で何を思ってほしいか」

この問いに答えられるまで絞り込む。それがコンセプトになります。


ステップ3:それを視覚で表現する

コンセプトが決まったら、ようやくデザインの話になります。

ここで大切なのは、「かっこいいデザイン」を目指さないことです。

目指すのは、「ステップ1と2で決めたことが、ちゃんと伝わるデザイン」です。

色、形、文字、写真、余白——すべての要素が「伝えたいこと」に向かっているか。それを確認しながら形にしていきます。

関ファームの白いラベルは、「オシャレだから白にした」のではありません。

「トマトそのもので勝負する」というコンセプトを伝えるために、余計なものを削った結果、白くなったのです。

パッケージブランディングは、デザインの前に「言葉にする」「絞る」という工程があります。ここを飛ばしてしまうと、見た目は良くても「何を伝えたいかわからない」パッケージができあがってしまいます。


パッケージを変えた効果は、どう測ればいいのか

パッケージをリニューアルしたら、当然「効果があったのか」を確認したくなります。

ただ、ここで注意が必要です。売上の増減だけを見ても、パッケージの効果はわかりません。

売上は季節要因、価格、競合の動き、流通の変化など、さまざまな要素に左右されるからです。

では、何を見ればいいのでしょうか。


指標1:お客様の「選んだ理由」を集める

パッケージの効果を知る一番確実な方法は、買ってくれた人に直接聞くことです。

ECサイトなら購入後アンケートで「この商品を選んだ理由」を聞いてみてください。

選択肢に「パッケージ・見た目」を入れておけば、どれくらいの人がパッケージで選んだかがわかります。

直販や展示会で販売する機会があれば、「なぜこれを手に取りましたか?」と一言聞いてみるだけでも十分です。

流通メインで直接聞く機会がない場合は、SNSやレビューサイトでの言及をチェックしてみてください。

「パッケージがかわいい」「見た目で選んだ」といったコメントがあれば、パッケージが購買に貢献している証拠です。


指標2:SNSでの言及・シェア

思わず写真を撮りたくなるパッケージは、SNSで自然に広がります。

InstagramやX(旧Twitter)で商品名を検索し、パッケージが写った投稿がどれくらいあるか、リニューアル前後で比較してみてください。


指標3:リピート率の変化

パッケージは「最初の1回」だけでなく、「また買いたい」にも影響します。

特にギフト需要がある商品では、「もらった人が自分でも買う」という流れが生まれることがあります。

リピート率や新規顧客の流入経路を追うことで、パッケージの波及効果が見えてきます。

パッケージの効果測定は、「売上が上がったか下がったか」ではなく、

**「お客様の行動や認識がどう変わったか」**を見ることがポイントです。

数字だけでなく、お客様の声に耳を傾けることで、パッケージが果たしている役割が見えてきます。


ECで売れるパッケージは、「サムネイル映え」から考える

ここまで、店頭で手に取ってもらうパッケージの話をしてきました。

しかし、ECサイトでの販売がメインの場合、少し考え方を変える必要があります。

店頭では、パッケージは実物大で見えます。手に取って、裏面を読んで、質感を確かめることもできます。

一方、ECサイトではどうでしょうか。最初に目に入るのは、数センチ四方のサムネイル画像です。

スマホで見れば、さらに小さくなります。

つまり、ECでは「小さく表示されたときに、どう見えるか」がまず重要になります。


サムネイルで埋もれないための3つのポイント

1. 色のコントラストを強くする

検索結果には、競合商品がずらりと並びます。

その中で埋もれないためには、背景と商品の色がはっきり分かれていることが大切です。

白い背景に白っぽいパッケージは、サムネイルでは存在感が薄くなります。

逆に、鮮やかな色や濃い色を使っているパッケージは、小さくても目に入りやすくなります。


2. 文字は「読ませない」前提で考える

サムネイルサイズでは、細かい文字はほぼ読めません。

商品名やキャッチコピーを読んでもらおうとするより、

色や形で「何の商品か」が伝わることを優先してください。

文字情報は、クリックして詳細ページに来てから読んでもらえばいいのです。


3. 形のシルエットで差別化する

四角い箱が並ぶ中に、丸みを帯びたボトルがあれば目立ちます。

パッケージの形状そのものが、サムネイルでの差別化要素になります。

形を変えるのが難しい場合は、撮影する角度を工夫するだけでも、シルエットの印象は変わります。


実物とのギャップに注意

ECで購入したお客様は、届いた実物を見て初めてパッケージに触れます。

このとき、「サムネイルで見たイメージと違う」と感じさせてしまうと、満足度が下がり、

レビューにも影響します。

サムネイル映えを意識しつつも、実物とのギャップが生まれないようにするバランスが大切です。

ECでの販売を強化したい場合は、まず自社商品を検索結果で見てみてください。

競合と並んだときに、どう見えているか。それがパッケージ改善のヒントになります。


パッケージは、ブランドを伝える「最初の接点」

ここまで、パッケージブランディングについて解説してきました。最後に、大切なポイントを振り返ります。

パッケージは、単なる「入れ物」ではありません。お客様がブランドと出会う、最初の接点です。

店頭で、ECサイトで、届いた箱を開けるとき——その瞬間に、ブランドの価値が伝わるかどうかが決まります。

そして、伝わるパッケージを作るために必要なのは、デザインのセンスではありません。

「このブランドは何を伝えるべきか」を言葉にすることです。

鼻セレブは「やさしさ」を、コカ・コーラは「変わらない価値」を、

関ファームは「トマトそのものの品質」を伝えることで、選ばれるパッケージになりました。

逆に、トロピカーナは伝えるべきものを見失ったことで、お客様が離れてしまいました。


「うちのパッケージ、どうなんだろう」と思ったら

もし今、自社のパッケージに課題を感じているなら、

まず**「このパッケージで何を伝えたいのか」**を考えてみてください。

すぐに答えが出なくても大丈夫です。むしろ、答えが出ないこと自体が、見直すべきサインかもしれません。

私たちザ・カンパニーは、ブランドの本質を引き出し、それをパッケージで表現するお手伝いをしています。

「何を伝えればいいかわからない」という段階からでも、一緒に考えることができます。

パッケージを変えることで、ブランドの届き方は変わります。気になることがあれば、お気軽にご相談ください。


会社情報

株式会社ザ・カンパニー

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-31-7 ビラ・グロリア#503

TEL:03-6438-1915

https://the-company.co.jp/

 

相村 満

相村 満

アートディレクター

新潟県出身。印刷会社、デザイン事務所、広告代理店を経てTCに参加。人の心に響くコミュニケーションデザインを心がけています。

関連Knowledge

Contact

制作に関するお問い合わせ