「なぜ多くの企業がSNS採用の大きなチャンスを逃しているのでしょうか?」
現在の採用市場には、驚くべきギャップが存在しています。2024年の調査によると、就活生の約9割が「企業のSNSアカウントは必要」と考えており、実際に85.4%の学生が気になる企業の社名をSNSで検索した経験があります。さらに、約6割(59.6%)の25卒学生が就職活動の情報収集にSNSを積極的に活用しているという結果が出ています。
しかし、これほど高い求職者のニーズがある一方で、実際に新卒採用でSNSを活用している企業はわずか3割程度に留まっているのが現状です。つまり、残り7割の企業はこの重要なチャネルを活用できていないということになります。
さらに、有効求人倍率が1.28倍(2024年平均)という売り手市場が続く中、従来の採用手法だけでは優秀な人材の獲得がますます困難になっています。一方で、国内のSNS利用率は83.2%に達し、特に若年層においてはさらに高い利用率を示しています。
このような状況は、SNS採用に先行して取り組む企業にとって、競合他社に大きな差をつける絶好の機会となっています。実は、このギャップこそが、採用成功への近道なのです。
(株式会社i-plug「就職活動におけるSNSの活用状況に関する調査」 )
(総務省「令和5年通信利用動向調査」)
(厚生労働省「一般職業紹介状況」)
ザ・カンパニーが手掛けた株式会社いつもの採用ブランディング事例では、インターンシップ告知から新卒採用まで一貫したSNS戦略により、新卒採用応募数240%UPを達成しました。これは、適切な戦略と実行によって得られる成果の一例です。
SNS採用が効果的である理由は、求職者の行動データが明確に示しています。注目すべきは、企業のSNSアカウントを見た就活生の88%が「入社意欲が増した」と回答していることです。また、約7割(67.9%)の学生が、SNSは「業界や企業理解の参考になる」と評価しており、実際に約半数(49%)の就活生がSNSの投稿をきっかけに選考を受けた経験があると答えています。
これらの数値は、SNSが単なる情報発信ツールではなく、求職者の意思決定に直接影響を与える重要なタッチポイントになっていることを示しています。(株式会社i-plug調査 )
2023年の帝国データバンクの調査によると、企業が最も活用しているSNSはInstagramで、全体の21.0%を占めています。これは、ビジュアルコンテンツが企業の魅力を伝えやすく、特に20-30代の若年層に強い訴求力を持つためです。
次いでFacebookが17.4%で、ビジネス層や30-40代を中心とした中途採用に効果を発揮しています。LINEは16.5%で幅広い年齢層との日常的なコミュニケーションに活用され、YouTube(12.1%)は動画による詳細な企業紹介、X(旧Twitter)(10.1%)はリアルタイムな情報発信と拡散力で利用されています。
(帝国データバンク「企業におけるSNSのビジネス活用動向アンケート」(2023年9月) )
ターゲットとする人材層によって、選ぶべきプラットフォームは異なります。新卒採用で20代前半をターゲットとする場合は、就活生が最も企業検索に使用しているInstagramが最有力です。第二新卒や若手中途の20代後半から30代前半を狙う場合は、400万ユーザーを抱え、その72%が20-30代で占められているWantedlyが効果的です。一方、30代から40代のキャリア採用を考えているなら、FacebookやLinkedInでビジネス層にアプローチすることが適切でしょう。
では、求職者は企業のSNSで何を確認しているのでしょうか。i-plugの調査によると、最も多い61.6%の学生が「インターンシップや説明会などの開催情報」をチェックしています。
しかし、単なるイベント情報だけではありません。求職者が本当に知りたいのは、その企業で働く「リアル」です。社員の働き方や1日のスケジュール、部署ごとの具体的な仕事内容、社内イベントや企業文化、そしてキャリアパスや成長事例など、企業の「素顔」が見える情報に高い関心を示しています。
つまり、採用サイトや求人票では伝えきれない、生きた企業情報こそが求職者を惹きつけるコンテンツとなるのです。
(株式会社i-plug調査 )
まず自社の採用課題を明確にし、SNS採用で達成したい目標を設定します。初期段階ではフォロワー数の増加、中期的にはエンゲージメント率の向上、長期的にはSNS経由の応募者数増加といった段階的な目標設定が効果的です。これにより、進捗を可視化し、必要に応じて戦略を調整することができます。目標は自社の規模や業界、現在の採用状況に応じて現実的な数値を設定することが重要です。
前述のデータを基に、自社のターゲット層が最も活発なプラットフォームから始めます。複数同時展開は避け、1つのプラットフォームで成功体験を積んでから横展開することが重要です。
効果的なコンテンツ戦略のポイントは、採用情報の直接的な発信よりも、企業の日常や社員の様子を伝えることに重点を置くことです。多くの成功企業では、社員紹介やインタビューコンテンツを中心に据え、オフィス環境や社内イベントの紹介を通じて企業文化を可視化しています。
また、具体的な仕事内容やプロジェクトの紹介により業務イメージを伝え、採用情報やイベント告知は最小限に留めることで、押し売り感のない自然な採用ブランディングを実現しています。重要なのは、求職者が知りたい情報と企業が伝えたい情報のバランスを取りながら、継続的に発信できる無理のない運用計画を立てることです。
効果的なSNS運用には、組織全体の協力が不可欠です。採用担当者が全体統括と採用情報の発信を担当し、現場社員は各部署から月1回程度の投稿協力を行います。さらに広報担当者がブランディングの観点からチェックを行うという体制が理想的です。この役割分担により、多様で魅力的なコンテンツを継続的に発信できる仕組みが構築されます。
月次で必ずチェックすべきKPIがあります。まずフォロワー増加数を確認し、順調に成長しているかを把握します。次にエンゲージメント率を測定し、投稿の質を評価します。さらにプロフィールアクセス数と採用サイトへの流入数を追跡することで、SNSから採用への導線が機能しているかを確認し、最終的にSNS経由の応募者数で実際の成果を測定します。これらの数値を継続的に分析し、改善を重ねることが成功への道筋となります。
競合他社との差別化において、企業文化の明確な打ち出しは極めて重要です。ザ・カンパニーが手掛けた株式会社いつもの採用ブランディング事例では、インターンシップ告知から新卒採用まで一貫したコミュニケーション設計により、新卒採用応募数が240%増という成果を達成しています。
求職者は単なる仕事内容だけでなく、その企業で「どのように成長できるか」を重視しています。キャリア開発支援制度の具体例を示し、実際に成長した社員のストーリーを紹介することで、入社後のイメージを明確にできます。また、評価制度と昇進の透明性を伝え、スキルアップの機会と実績を具体的に示すことで、求職者に将来への期待感を持たせることができます。
SNSを通じた長期的な関係構築は、すぐには転職・就職を考えていない潜在層を、将来の候補者プールとして育成することを可能にします。定期的な価値ある情報発信により、「いつかはこの会社で働きたい」という意識を醸成できます。
Wantedlyは400万人のユーザーを抱え、特に20-30代が72%を占める採用特化型SNSです。ザ・カンパニーが手掛けたWantedly「ぼくらの転機」プロモーションでは、第一線で活躍するビジネスパーソンへのインタビューをLIVE配信し、プロフィールページの価値を効果的に伝えました。
(出典:Wantedly公式サイト)
Instagramは就活生が最も企業検索に使用するSNSです。ビジュアルを活かしたコンテンツが効果的で、例えば社員の1日に密着したストーリーズ、オフィス環境を紹介するリール動画、新入社員の成長記録を追った投稿などが高いエンゲージメントを獲得しています。写真や動画という視覚的な情報により、文字では伝えきれない企業の雰囲気を効果的に伝えることができます。
若年層へのリーチを狙う場合、TikTokの活用も検討すべきです。短尺動画で企業の魅力を凝縮して伝えることで、Z世代との接点を創出できます。
効果測定なくして成功はありません。以下のKPIを設定し、PDCAサイクルを回すことが重要です。
主要KPIとして、フォロワー数の推移、エンゲージメント率(いいね、コメント、シェア数)、プロフィールアクセス数、採用サイトへの流入数、SNS経由の応募者数と採用決定率を継続的に追跡します。
求職者が最も知りたい情報は「実際の働き方」です。i-plugの調査では、61.6%の学生が「インターンシップ・説明会などの開催のお知らせ」をチェックし、「社員の働き方や1日のスケジュールの紹介」「部署ごとの仕事内容の紹介」にも高い関心を示しています。
効果的なコンテンツとして、まず「社員インタビュー動画」があります。入社経緯、現在の業務、やりがいを3分以内でまとめることで、視聴者の集中力を保ちながら情報を伝えられます。「オフィスツアー」では働く環境をビジュアルで伝え、「プロジェクト紹介」で実際の仕事の進め方やチームワークの様子を見せ、「社内イベントレポート」で企業文化を体現する瞬間を切り取ることで、求職者に企業の魅力を多角的に伝えることができます。
(株式会社i-plug「就職活動におけるSNSの活用状況に関する調査」 )
SNSの強みは、一方的な情報発信ではなく対話ができることです。コメントへの丁寧な返信、質問への迅速な回答、DMでの個別フォローなど、求職者との距離を縮める取り組みが重要です。
実践において重要なのは、投稿後のコメントに迅速に返信することです。また、「#就活生からの質問」などのハッシュタグで質問を募集し、ライブ配信で社員との直接対話の機会を創出するなど、双方向のコミュニケーションを意識することで、求職者との距離を効果的に縮めることができます。
採用担当者だけでなく、現場社員も巻き込んだ運用体制を構築することで、より多様で魅力的なコンテンツを発信できます。各部署から「SNS採用アンバサダー」を選出し、それぞれの視点から自社の魅力を発信する仕組みを作りましょう。
SNS採用で成功している企業には、明確な共通点があります。まず「継続性」です。定期的な投稿を長期間継続している企業が成果を上げています。次に「双方向性」を重視し、コメントへの迅速な返信を心がけることで、求職者との信頼関係を構築しています。
また、過度に加工された投稿よりも「リアル感」のある自然な投稿の方が共感を得やすく、さらに定期的にKPIを分析し継続的に改善を行う「計測と改善」のサイクルを回している企業が、着実に成果を伸ばしています。
SNS採用の大きな魅力の一つは、初期投資の低さです。アカウント開設自体は無料で始められ、基本的な運用も自社のリソースを活用すれば追加コストを最小限に抑えられます。コンテンツ制作や広告出稿を行う場合も、予算に応じて柔軟に調整が可能です。
これを従来の採用手法と比較すると、求人サイトへの掲載や人材紹介サービスには相当な費用がかかることを考えると、SNS採用は費用対効果の高い手法といえます。まずは小規模に始めて、効果を見ながら投資を拡大していくことが賢明な選択です。
SNS運用においてリスク管理は不可欠です。まず最初に行うべきは「ガイドライン策定」です。投稿可能な内容を明確にし、NGワード・トピックのリストを作成し、承認フローを確立します。
次に「チェック体制」の構築が重要です。投稿前の複数人確認はもちろん、法務・コンプライアンスチェックを行い、定期的な投稿内容の監査を実施することで、問題を未然に防ぎます。
そして万が一に備えた「緊急時対応」の準備も欠かせません。炎上時の初動マニュアル、エスカレーションフロー、謝罪・説明のテンプレートを事前に用意しておくことで、冷静かつ迅速な対応が可能になります。
SNS採用は長期戦略です。効果が出るまでには段階があり、最初の1-3ヶ月はフォロワー基盤の構築期間、3-6ヶ月でエンゲージメントが向上し始め、6-12ヶ月でようやく採用成果が顕在化するという流れが一般的です。この時間軸を理解せずに早期の成果を求めると、継続できずに失敗に終わってしまいます。
求職者が求めているのは対話です。投稿の反応を見て、コンテンツを柔軟に調整することが重要です。
最も多い失敗が更新頻度の低下です。最初から無理のない運用計画を立て、社内の協力体制を整えることが継続の鍵となります。
データが明確に示すように、SNS採用は「やるかやらないか」ではなく「いつ始めるか」の段階に来ています。
今すぐ始めるべき理由は明確です。まず、まだ7割の企業が未着手という状況は、先行者利益を得る絶好のチャンスです。次に、従来の採用手法に比べて低コストで開始できるため、リスクを最小限に抑えながら新しいチャネルを開拓できます。そして最も重要なのは、SNS採用は潜在層との長期的な関係構築を可能にする、将来への投資だということです。
実は、成功している企業の多くは、小さく始めて徐々に拡大していきました。完璧を求めるよりも、まず第一歩を踏み出すことが重要です。
ちなみに、ザ・カンパニーでは、採用ブランディングからSNS運用、コンテンツ制作まで、企業の採用課題に合わせた包括的なソリューションを提供しています。240%の応募数増加を実現した実績を基に、貴社の採用成功をサポートいたします。
今こそ、SNS採用で新たな人材獲得の扉を開く時です。データが示す大きなチャンスを、ぜひ貴社の成長に活かしてください。
取締役 プロデューサー
2016年よりプロデューサーとして課題解決型のブランディング施策を多数手掛ける。手法にとらわれないコミュニケーション設計を得意とする。