
「なぜ、あの建設会社ばかりが大型案件を受注できるのか?」
建築・建設業界で長く事業を営む経営者なら、一度はこんな疑問を抱いたことがあるのではないでしょうか。技術力では負けていないはずなのに、なぜか競合他社に案件を取られてしまう。その答えの多くは「ブランド力」の差にあります。
実際に弊社が手掛けたブランディング事例も参考にしながら、建築・建設業界におけるブランディングの重要性と実践方法について解説します。
1. なぜ建築・建設業界にブランディングが必要なのか
1-1. 価格競争から価値競争への転換
建築・建設業界は長らく「価格競争」の世界でした。しかし、単純な価格競争では利益率が下がり、品質の維持も困難になります。そこで重要になるのが「ブランド力」です。
強いブランドを持つ企業は、価格以外の価値で選ばれます。例えば:
- 技術力への信頼
- 施工品質の安心感
- アフターサービスの充実
- 環境への配慮
これらの要素を総合的に訴求することで、適正価格での受注が可能になります。
1-2. 大型プロジェクトにおける信頼性の証明
建築プロジェクトは数千万円から数億円規模の投資を伴います。発注者にとって、施工会社選びは経営判断そのもの。だからこそ、実績と信頼性を可視化した「ブランド」が決定的な差を生むのです。
2. 建築・建設業界で差別化を実現する5つのポイント
2-1. 専門領域での圧倒的な強みを作る
「なんでもできます」では、結局何もできない会社と同じです。成功している建設会社は、必ず得意分野を明確にしています。
例えば:
- 医療施設建築のスペシャリスト
- 歴史的建造物の修復・保存技術
- 超高層ビルの施工技術
- 木造建築の伝統技術と現代技術の融合
弊社が支援した企業様の中にも、特定分野に特化することで受注単価を2倍以上に向上させた事例があります。
2-2. テクノロジーを活用した「見える化」
建設現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、ブランディングの強力な武器になります。
- BIMを活用した3D設計提案
- ドローンによる施工進捗の可視化
- VRを使った完成イメージの体験
- IoTセンサーによる品質管理データの共有
これらの技術は、単なる効率化ツールではありません。顧客に対して「この会社は最先端で信頼できる」というブランドイメージを植え付ける重要な要素となります。
2-3. サステナビリティへの本気の取り組み
環境配慮は今や「あったらいい」ではなく「なければならない」要素です。しかし、多くの企業が表面的な取り組みに留まっているのが現状です。
本気のサステナビリティとは:
- CO2排出量の具体的な削減目標と実績公開
- 地域産材の積極的活用
- 廃材のリサイクル率向上
- 省エネ建築の標準化
これらを数値化し、継続的に発信することで、環境意識の高い顧客から選ばれる企業になれます。
2-4. 職人の顔が見える情報発信
建設業は「人」の業界です。しかし、多くの企業が「会社」の情報発信に留まっています。
効果的な情報発信の例:
- 職人インタビュー記事の定期配信
- 現場での工夫や技術をSNSで紹介
- 若手職人の成長ストーリー
- ベテラン職人の技術継承の様子
人の顔が見えることで、信頼感は格段に向上します。
2-5. 地域コミュニティとの深い関わり
建設業は地域に根ざした産業です。地域との関わりを深めることは、強固なブランド基盤となります。
- 地元学校での職業体験受け入れ
- 災害時の迅速な復旧支援活動
- 地域イベントへの積極的参加
- 地元企業との協業プロジェクト

3. ブランディングを成功させる実践的アプローチ
3-1. まずは自社の強みを言語化する
自社の強みを言語化するプロセス
自社の強みを言語化するプロセス
3つの視点から強みを発見しよう
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強み言語化の成果
3つの視点を整理することで、ブランドの核となる
メッセージが見えてきます
共通して出てくるポイントが、真の強みです
ブランディングの第一歩は「自社の強みの明確化」です。しかし、多くの企業がここでつまずきます。
強みを見つける3つの視点:
- 顧客視点:なぜ当社を選んでくれたのか
- 競合比較:他社にはない当社の特徴は何か
- 内部視点:社員が誇りに思っていることは何か
これらを整理することで、ブランドの核となるメッセージが見えてきます。
3-2. 一貫性のあるビジュアル展開
ブランドは「認識の積み重ね」です。ロゴ、色使い、写真のトーンなど、すべての接点で一貫性を保つことが重要です。
統一すべき要素:
- 企業ロゴとその使用ルール
- コーポレートカラー
- 写真撮影のガイドライン
- 文章のトーン&マナー
3-3. 顧客体験の全体設計
ブランドは広告だけでは作れません。顧客が体験するすべての接点で、一貫した価値を提供する必要があります。
重要な顧客接点:
- 初回問い合わせ時の対応
- 提案・プレゼンテーション
- 施工中のコミュニケーション
- 竣工後のアフターフォロー
各接点での体験を設計し、改善を続けることで、強いブランドが形成されます。
4. ブランディング実践で陥りやすい落とし穴と対策
4-1. 「うちには特徴がない」という思い込み
多くの建設会社が「うちは普通の会社だから」と考えがちです。しかし、長年事業を続けている企業には必ず強みがあります。
強みを発見する具体的方法:
- 過去10年の受注案件を分析し、パターンを見つける
- リピート率の高い顧客にヒアリングを実施
- 社員に「他社より優れていると思う点」をアンケート
- 協力会社からの評価を収集
これらのデータを整理すると、意外な強みが浮かび上がってきます。
4-2. 発信の継続性が保てない
ブランディングで最も多い失敗が「始めたけど続かない」です。特に情報発信は、最初の熱意が冷めると更新が止まりがちです。
継続のための仕組みづくり:
- 月1回の定例ミーティングでネタ出し
- 現場写真の撮影ルールを決める
- 社員全員が情報提供者になる体制
- 外部パートナーとの連携体制構築
仕組み化することで、属人的でない継続的な発信が可能になります。
4-3. 効果測定をしない
「ブランディングは効果が見えにくい」という声をよく聞きます。しかし、適切な指標を設定すれば、確実に効果は測定できます。
測定すべき指標:
- ウェブサイトの訪問者数と滞在時間
- 問い合わせの質の変化(価格だけでない相談の増加)
- 指名受注の割合
- 採用応募者の質と量
- メディア掲載数
これらを定期的にモニタリングし、改善を続けることが重要です。
まとめ
建築・建設業界におけるブランディングは、もはや「あればいい」ものではなく、生き残りをかけた必須の経営戦略です。
成功のポイントは:
- 自社の強みを明確にし、特定領域でNo.1を目指す
- 最新技術を活用し、顧客に価値を可視化する
- 人の顔が見える情報発信を継続する
- すべての顧客接点で一貫した体験を提供する
これらを着実に実行することで、価格競争から脱却し、選ばれ続ける企業へと成長できます。建設業界の未来は、強いブランドを持つ企業が切り拓いていくのです。
よくある質問(FAQ)
中小規模の建設会社でもブランディングは必要でしょうか?
私たちザ・カンパニーの経験から申し上げると、むしろ中小企業こそブランディングが重要です。大手との差別化を図るには、「本質的な魅力を引き出す」ことが不可欠。私たちは「徹底的な対話による本質の探求」を通じて、その会社にしかない独自の価値を見出します。規模の大小ではなく、その企業の「らしさ」を明確にし、特定領域でNo.1を目指すことで、規模の不利を覆すことができます。
ブランディングの効果はどのくらいで現れますか?測定方法は?
効果測定は実施可能で、むしろ必須です。私たちは「Plan-Do-Check-Act」のサイクルで継続的な改善を行います。一般的に本格的な効果を実感するまでには1〜2年かかりますが、3〜6ヶ月で以下のような初期指標の変化が現れます:
• ウェブサイトの訪問者数と滞在時間の向上
• 価格だけでない相談(質の高い問い合わせ)の増加
• 指名受注の割合向上
• 採用応募者の質と量の改善
デジタルに不慣れな職人が多いのですが、それでもブランディングは可能ですか?
もちろん可能です。ブランディングの本質は「デザインをつかって、会社・サービス・商品をブランド化し、ファン層を拡大する」こと。デジタルツールは手段の一つに過ぎません。私たちは企業やサービスの本質的な「らしさ」を見出し、それを適切に表現します。職人の技術や想いこそが最も重要なブランド資産。それを効果的に「見える化」し、価値として伝えることがブランディングの役割です。
建設業界特有の課題(人材不足・3K問題など)もブランディングで解決できますか?
はい、ブランディングは採用課題の解決にも直結します。実際、私たちがご支援した建設系企業様では、ブランド価値の向上により採用応募が増加した事例が複数あります。重要なのは、労働環境の実態と発信するイメージを一致させること。「徹底的な対話」を通じて企業の真の魅力を発掘し、それを求職者に正しく伝えることで、「この会社で働きたい」と思ってもらえる企業になることができます。
ブランディングにかかる費用はどの程度でしょうか?
ブランディングは企業規模や課題、実施内容によって大きく異なるため、一概には申し上げられません。ただし、私たちザ・カンパニーでは、まず「ご要件のヒアリング・お見積もり・企画のご提案まで費用は一切かかりません」。つまり、どのようなブランディングが必要か、投資対効果はどの程度見込めるかを明確にしてから、ご判断いただけます。また、一度きりの施策ではなく、継続的な価値創造をサポートする月額制のプログラムもご用意しています。大切なのは、費用ではなく「投資対効果」。適切なブランディングは、必ず投資以上のリターンをもたらします。