
早速ですが、ブランディング戦略の立てる際、ブランディング会社への依頼を検討するタイミングでこれから記載する5つの問いに向き合っておくと、
プロジェクトの初動が早くなり、進み方や成果にも違いが生まれます。
イメージしていたものと提案内容との相違を回避することにも有効です。
とはいえ、すべての答えが揃っている必要はありません。
「正直まだ整理できていないので、まずはロゴ制作から始めたい。
でも本当は、ブランディング全体を一緒に考えたい気もしている」というように、
考え途中の状態をそのまま共有してもらえれば、そこをスタートラインとして一緒に整理を進めることができます。
5つの問いは、依頼前に答えを出し切るためのものではなく、思考の地図を持っておくためのものです。
この記事では、ザ・カンパニーが手掛けた株式会社セイバンの新ブランド「MONOLITH」の立ち上げ事例をたどりながら、
5つの問いを順番に見ていきます。
ブランディング戦略とは、自社の本質的な価値を定義し、それを届けたい相手に正しく伝えるための設計図です。
ロゴを新しくすることや広告を打つこと自体が目的ではなく、その手前にある考え方の整理を指します。
ブランドが生まれる場所は、広告やデザインの中ではなく、顧客が自社を思い浮かべたときの印象として形成されるものです。
その企業やブランドを思い浮かべたとき、どんな言葉や印象が浮かぶか。そこで想起されるものこそが、そのブランドの実体です。
ブランディング戦略は、「顧客の頭の中に、どんな像を残したいか」を設計し、
あらゆる接点でその像が一貫して強化されるように整えていく活動とも言えます。
ロゴもWebサイトもパンフレットも、この戦略の下で役割を持つ手段として位置づけられます。
これからご紹介する5つの問いは、社内で完璧に答えを出すためのものではありません。
ブランディング会社との対話を実りあるものにするための共通言語として、
依頼前から意識しておくと、提案の精度も対話の深さも変わってきます。
最初に向き合いたいのは、自社の存在理由を言葉にする問いです。
「何を売っているか」ではなく「なぜその事業をやっているのか」「顧客は本質的に何を買っているのか」という問いかけになります。
ランドセルブランド「天使のはね」で知られる株式会社セイバンは、
バッグとラゲッジの新ブランド「MONOLITH」の立ち上げにあたって、まさにこの問いから出発しました。
セイバンはランドセルのトップシェアメーカーとして知られる企業です。
しかし、これから立ち上げるMONOLITHが提供する価値は何なのか。
ランドセルの延長線上にあるブランドなのか、それとも独立した存在として立つのか。
セイバンとザ・カンパニーが最初に向き合ったのは、この根本的な問いでした。
プロジェクトでは、ブランドの「性格」を言葉で整理することから始まりました。
「普遍的である」「機能的である」「機能美である」「論理的である」「シンプルである」「革新的である」といった、
ブランドが持つ本質的な人格を、対比的な言葉も交えながら丁寧に定義しています。
そのうえで、プロダクトのユニークポイントとして
「永く愛用できる最高の製品(Anytime & Lifetime)」
「合理的な設計(Intelligent Design)」
「機能性/耐久性/修理可能性の追究」
という3つの方向性が見出されました。
これらはブランドの性格を、プロダクトに落とし込むときの設計指針として機能します。
この問いに向き合うとき、参考になるのは「もし自社がなくなったら、顧客は何に困るか」という逆側からの視点です。
代わりに選べる他社があるかどうかを考えると、自社ならではの価値が見えてきます。
次の問いは、ターゲットの解像度です。
「中小企業の経営者」「30代女性」といった粗い括りでは、戦略の方向性までは定まりにくくなります。
本当に向き合いたい顧客は、今どんな仕事をしていて、何に困っていて、どんな情報源で意思決定しているのか。
そして自社の価値を受け取った後に、どんな状態になってほしいのか。
ここまで具体化できると、どの媒体で、どんな言葉で、どんなビジュアルで伝えるかが見えてきます。
MONOLITHのプロジェクトでは、ブランドの性格を整理した後に、
Webサイトのトーン&マナーをブランドの性格と接続する作業が進められました。
「ブラックを貴重としたトーン」
「シンプルで整然としたデザイン」
「男女の垣根を超える」
といったWebサイトのキーワードが、ブランドの性格を体現する形で設計されています。
届けたい価値とトーンが揃ったことで、メッセージとビジュアルの方向性、
さらにはEC販売におけるUXデザインまで、一貫した設計が可能になりました。
ターゲットを絞ることは、他の顧客を切り捨てることと同じではありません。
核となる相手に向けて研ぎ澄ましたメッセージは、結果として隣接する層にも届きます。
3つ目の問いはポジショニングです。自社を同業他社と並べたとき、顧客から見て何が違うのか。
価格なのか、品質なのか、関係性なのか、専門性なのか。その違いは、選ばれる理由として機能するのか。
ここで意識したいのは、「違い」と「強み」は別物だということです。
自社が得意なことが、必ずしも顧客にとっての選択理由になるとは限りません。
ポジショニングとは、「自社の得意」と「顧客の欲しい」と「市場に余地がある領域」が重なる場所を見つけていく作業です。
MONOLITHのプロジェクトで印象的なのは、ブランドのタグライン開発です。
数多くのバッグブランドがひしめく市場で、どう立ち位置を取るか。
ザ・カンパニーが開発したのは、「このバッグは必要か。」という一行でした。
このタグラインは、プロモーションを一気通貫する軸として機能しました。
「普遍的」「機能美」「論理的」といったブランドの性格と一貫しており、
Webサイト、グラフィック、映像、SNSといった全てのタッチポイントで、ブランドの立ち位置を揺るがずに発信できる状態がつくられています。
すべての制作物が、ブランドの性格を正しく伝えるためのアウトプットとなるよう綿密に設計され、
プロダクトが持つ「Anytime & Lifetime」「Intelligent Design」の思想が具体的に伝わる表現と体験が目指されました。
自社のポジションを探すときは、競合3〜5社の発信を実際に並べて比較してみることをおすすめします。
各社が使っている言葉、見せているビジュアル、押している価値を棚卸ししていくと、自社が立てる位置が見えてきます。
4つ目の問いは、対外発信よりもむしろ対内向けになります。
ブランド戦略は、社内のメンバーが自分たちの言葉で語れるようになって、はじめて力を発揮します。
ブランドは広報部やマーケティング部だけが担うものではなく、
営業、カスタマーサポート、開発、バックオフィスに至るまで、顧客と接するすべての人が体現するものです。
ロゴのガイドラインを作って共有するだけにとどまらず、なぜこの方向にしたのか、
どんな判断軸で日々の仕事をすればよいのかを、経営層から現場まで共通言語として持てる状態を目指すのが理想的な姿です。
MONOLITHの立ち上げでは、ブランドファウンディングチーム全体で同じ方向性を向いたブランディング・プロモーションが実施されました。
株式会社セイバンの執行役員は、
ザ・カンパニーについて「最初のコンセプトメイクの段階から関わってもらい、常に自分ごととして考えてくれる姿勢に感銘を受けた」「チーム全体で想いを共有できるパートナーだからこそ、本質的なブランディングが実現できた」と振り返っています。
ブランド立ち上げの現場では、
制作会社と依頼企業の関係が「依頼する側・される側」にとどまらず、ひとつのチームとして動けるかどうかが、浸透の質を決めます。
社内浸透まで設計に含まれているプロジェクトは、時間が経つほど効果が積み上がります。
最後の問いは評価設計です。
ブランディングは効果が測りにくいと言われることがありますが、多くの場合は測定設計を最初に組み立てていないことが原因になっています。
ブランディングで狙う成果には、売上・問い合わせ数・応募数といった定量指標から、
認知度・第一想起率・推奨意向といった調査型の指標、さらに社内エンゲージメントや離職率といった内部指標まで、
幅広い種類があります。何を主指標に置くかは、プロジェクトの目的によって変わります。
新ブランドの立ち上げの場合、初期フェーズで重視されるのはブランド認知と市場での存在感です。
MONOLITHでは、発売当初から多くのメディアに取り上げられ、バックパック市場で確かなポジションを獲得しています。
メディア露出の量、専門メディアでの言及の質、購入後のユーザーの声。
こうした定性・定量の指標を組み合わせることで、新ブランドが市場に受け入れられているかを多角的に捉えることができます。
指標を事前に決めておくことには、もう一つ効果があります。
社内で「この取り組みは続ける価値があるか」を判断する共通の物差しができるため、経営層と現場の対話が建設的になりやすいのです。
測定設計は、制作会社と一緒に組み立てていくこともできます。
依頼前にすべての評価指標を揃えておく必要はなく、「何をもって成功とするか」の方向性だけでも共有できていれば、戦略の精度は大きく上がります。
5つの問いに自分なりの答えを出し始めたら、ブランディング会社への相談フェーズに入る準備が整ってきています。
このとき、整理した内容や考えている途中のことを、そのまま制作会社に渡すことをおすすめします。
途中段階の整理であっても、むしろ「ここまでは考えた、この先の翻訳を一緒にやってほしい」「ここがまだ曖昧なので一緒に整理したい」という渡し方のほうが、制作会社にとっては仕事がしやすく、提案の質も上がります。
MONOLITHのプロジェクトがそうだったように、
ブランドの立ち上げから一緒に進めていくことで、表層的な商品理解にとどまらない、根底にある魅力を正確な表現で伝えていくことができます。
ザ・カンパニーでは、ブランド診断から本質的価値の発掘、ターゲット分析、戦略設計までを、
対話を重ねながら一緒に整理していく進め方を基本としています。
すでに答えが揃っている必要はなく、問いと向き合う過程を伴走することが、私たちの役割だと考えています。
ブランディングをご検討されているようでしたら、お気軽にご相談ください。

2016年よりプロデューサーとして課題解決型のブランディング施策を多数手掛ける。手法にとらわれないコミュニケーション設計を得意とする。
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