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2026/08/27
投資としてのデザイン経営|ブランドで企業価値を伸ばす中堅企業の実践と事例

 

「デザイン経営」という言葉を、最近よく耳にするようになりました。ざっくり言うと、デザインを経営資源として投資し、企業価値を高めていく——そんな経営の考え方です。ここでいうデザインは見た目のことだけではなく、その会社の「らしさ(ブランド)」を、あらゆる接点で一貫した形に整えていくことを指します。

先にお伝えすると、デザイン経営は「費用」ではなく「投資」です。そして、事業が広がって、組織や顧客との接点が増えた中堅企業ほど、その投資がじわじわ効いてきます。

私たちザ・カンパニーは、ブランディングを専門とする立場から、たくさんの企業の「らしさ」を言葉と表現にしてきました。その経験をもとに、この記事では、なぜ中堅企業にとってブランドが経営の課題になるのか、実践の進め方、そしてつまずきやすいポイントまでを、調査データとあわせて整理します。

なぜ中堅企業ほど「ブランド」が経営課題になるのか

創業から事業が育ち、売上も社員も増えてきた。多くの中堅企業が、ある時期からこんな状態に気づきます。

 

  • 部門や拠点ごとに、資料やWebサイトのトーンがバラバラになっている
  • 自社の「強み」を、社員それぞれが違う言葉で説明している
  • 採用の場面で、会社の魅力がうまく伝わっていない

 

事業が小さいうちは、経営者の人柄や現場の距離感で「らしさ」が自然に共有されていました。ところが規模が大きくなると、この前提が少しずつ崩れていきます。

 

拠点が増え、部門が分かれ、中途採用で価値観の異なるメンバーも加わる。M&Aやグループ会社の拡大があれば、もともと別の文化を持つ組織が一つの看板の下に並びます。世代交代を迎えれば、先代が築いた「らしさ」をどう受け継ぐか、という問いも出てきます。

 

こうして「らしさのバラつき」は、目に見えにくいまま、少しずつ企業価値を削っていきます。価格やスペックで比べられやすくなり、選ばれる理由がぼんやりしていく。中堅企業にとってブランドが経営課題になるのは、まさにこの段階です。

 

「費用」ではなく「投資」として捉える

デザインやブランディングを費用として見ると、「いくらかかるか」で判断が止まってしまいます。でも投資として見ると、「何が返ってくるか」で考えられるようになります。

 

具体的に返ってくるものは、たとえばこんな形をとります。

 

  • 価格競争からの脱却 ―― 価格ではなく価値で選ばれる状態がつくれる
  • 採用力の向上 ―― 会社の魅力が伝わり、求める人材が集まりやすくなる
  • 社員の誇りと一体感 ―― 自社の価値を自分の言葉で語れる社員が増える
  • 意思決定の軸 ―― 「自社らしいかどうか」が、判断のものさしになる

 

こうした効果は、すぐに数字へ表れるものではありません。それでも、デザインへの投資と企業のパフォーマンスに相関があることは、いくつかの調査で示されています。

 

マッキンゼーの調査「The Business Value of Design」(2018年)では、上場企業300社を5年間にわたって調査し、デザインを重視する上位企業群(同社のデザイン指標「MDI」の上位25%)が、同業他社に比べて売上成長で約32ポイント、株主総還元(TRS)で約56ポイント高い伸びを示したと報告されています。

 

 

国内でも、同じような傾向が見えています。日本デザイン振興会と三菱総合研究所による「第2回 企業経営におけるデザイン活用実態調査」(2023年)では、デザイン経営に積極的な企業ほど売上増加率が高く、顧客や従業員からも支持される傾向が示されました。「デザイン経営」という言葉の認知も、いまや6割を超えています。

 

つまりデザイン経営は、感覚や気合いの話ではなく、中長期のリターンを見据えた”経営投資”として捉えられるようになってきている、というわけです。

 

デザイン経営でつまずきやすい3つのパターン

投資の効果を実感できるかどうかは、進め方でずいぶん変わります。中堅企業がデザイン経営に取り組むとき、次の3つは特につまずきやすいポイントです。

 

1. 見た目だけを新しくして、中身とズレてしまう

ロゴやWebサイトを刷新すること自体は、良い一歩です。ただ「自社は何者か」という本質の整理を飛ばして表面だけ変えると、社内外に「急に雰囲気が変わったけれど、中身は前のまま」という違和感を残してしまいます。

2. 一部の接点だけ整えて、バラつきが残る

Webはきれいになったのに、会社案内や営業資料、店舗のトーンは昔のまま。接点ごとに印象が食い違うと、せっかくの投資が「一貫したブランド体験」につながりません。

3. 作って終わりで、運用されない

ブランドは、一度整えたら完成、というものではありません。ガイドラインを作っても、現場が見なければ、日々の制作判断のなかで少しずつ「らしさ」は薄れていきます。

 

これらは裏を返せば、「本質の言語化から運用まで、ひとつながりで設計する」ことの大切さを示しています。

 

ブランドを起点にしたデザイン経営の進め方

中堅企業の場合、課題は「限られた予算をどう配分するか」よりも、「事業拡大の中で広がってしまった”らしさ”を、全社でもう一度そろえ直すこと」にあります。だからこそ、思いつきで制作物を増やすのではなく、次の流れを経営の意思決定として、ひとつながりで進めていくのがおすすめです。

 

1. 本質を言語化する

経営層や現場、営業など、立場の異なるメンバーの声を集め、「自社は何者で、なぜ選ばれているのか」を言葉にします。私たちはこの工程を、対話(ヒアリングやワークショップ)を通じて進めます。社内では当たり前すぎて言葉にならなかった価値も、第三者が問いを重ねていくと、輪郭が見えてくるものです。ここが曖昧なままだと、この先のすべてがぶれてしまいます。

2. 表現に翻訳する

言語化した価値を、ロゴ・タグライン・色・トーンといった「伝わる形」に変えます。表現は、本質とつながっているほど強くなります。

3. すべての接点で一貫させる

Web、会社案内、営業資料、店舗、採用ページまで、見せ方を揃えます。どの入り口から出会っても同じ「らしさ」が伝わる状態を目指します。

4. 社内に浸透させる

社員が自社の価値を自分の言葉で語れるように、共有の機会をつくります。ブランドは、外向けの飾りではなく、まず社内の共通言語になることで力を持ちます。

5. 運用し続ける

一度作って終わりにせず、事業の変化に合わせて育てていきます。判断に迷ったとき立ち返れる基準があることが、一貫性を長く保つ鍵になります。

 

私たちは、デザインを、その会社の本質的な魅力を引き出すために整理することだと考えています。ロゴやタグラインといった制作物も、この一貫した整理の一部として設計することで、単体の成果物を超えて、経営を動かす力になっていきます。

 

取り組みの例

私たちがこれまで手がけてきた中にも、中堅・BtoB・製造・老舗といった企業のブランドを、経営の視点から整えてきた取り組みがあります。たとえば、建設機械を扱う企業でWebサイトから動画・サインまで接点を一貫させた例や、電熱分野の製造業でロゴ・Webサイト・パンフレットを一新してCI(企業アイデンティティ)を刷新した例、土木業で創立50周年を機に記念ロゴを制作し、節目に「らしさ」を整え直した例などがあります。

 

いずれも共通しているのは、単発の制作ではなく、「自社は何者か」という本質の整理を起点にしている点です。

 

まとめ|デザインを”投資”として、経営の視点でひとつなぎに

 

デザイン経営は、一部の大企業や、デジタルプロダクトを持つ企業だけのものではありません。むしろ、事業と組織が複雑になってきた中堅企業にこそ、効果の大きいテーマです。

 

ポイントは、デザインを費用ではなく企業価値を高める投資として捉え直すこと。そして、「らしさ」の言語化から運用までを、バラバラの施策にせず、経営の視点でひとつなぎに設計することです。ロゴや会社案内といった身近な一手が、その最初の入口になります。

 

私たちザ・カンパニーは、「らしさ」の言語化から表現への翻訳、運用までを、まるごとお手伝いできます。「自社にとってデザイン経営がどう役立つのかな?」——そんなところからでも、どうぞお気軽にご相談ください。現状の整理やお見積もりまで無料で承っています。

 


出典・参考

  • マッキンゼー・アンド・カンパニー「The Business Value of Design」(2018年)― 上場企業300社を5年間調査。MDI上位25%企業は売上成長+32ポイント、株主総還元(TRS)+56ポイント。対象業界:医療機器・消費財・リテールバンキング。 https://www.mckinsey.com/capabilities/tech-and-ai/our-insights/the-business-value-of-design
  • 日本デザイン振興会/三菱総合研究所「第2回 企業経営におけるデザイン活用実態調査」(2023年)― デザイン経営に積極的な企業ほど売上増加率が高く、顧客・従業員から支持される傾向。認知度6割超。 https://www.jidp.or.jp/2023/09/06/DesignManagementReport2
  • 経済産業省・特許庁「『デザイン経営』宣言」(2018年)― デザイン経営の定義・政策的背景。

 

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