Culture

2019/01/10
与那国島の見えない力の話

 

私「ユタっているんですか?与那国島には」

 

 

 

 

ムービーさん「あぁ、いるさ。いたさ。色んなタイプの人がいるのさぁ。未来が見える人、昔あった事故のことを言い当てる人とか。俺は昔ね、目が痛くなってさ、友達にあのおばぁのとこ行けって言われてさ、行ったんだよ。そしたらさ、家の仏壇とかある部屋あるだろ、あそこに連れていかれてさ、やるわけだよ、あのみこさんがやるみたいにさ、しゃっしゃっとさ、お祓いみたいなやつをさ。いつもは普通のおばぁなんだけどさ。んでさ、言うわけよ、井戸の蓋を開けろって。俺の家のもう使わなくなった井戸、蓋がしまってんの。それを開けれって言うわけ。まぁ一般的に沖縄にはそういう言われがあるんだけどさ、井戸に蓋しちゃいけないっていうの。んで、うちのは閉まってたんだ。それで開けたら痛かった目もよくなったさ。そんで、昔俺に起こった事故のこととかも色々言い当てだすのさ。でさ、最後にお布施をよこせっていうの。んで、わかったよって言ってあげたんだ。そしたらさ、お釣りよこしてきたさ、あはは」

 

私「すごいっすね、ユタのお布施は定額なんですね、あはは。あの、俺この島に来た時、アラカワバナっていう沢を降りて海まで行ったんですけど、あそこって本当は入っちゃいけない場所なんですよね?そのあと祟りじゃないですけど、怖いこと沢山起っちゃって、今でも怖いんですけど」

 

ムービーさん「いやぁ、別に入ったらいいさぁ。あそこはさ、この島に46あるらしい鳥居巡りのスタートなのさ。でもさ、もう今はその鳥居がどこにあるか誰も知らんのよ。え?パワースポット?御嶽(うたき)か?そうだなぁ、立神岩は神聖な岩なのは分かるか?あの岩のてっぺんだけな、ハブとかカラスとかさ、生きることが出来るんだよ。この島にはハブがいないだろう。カラスもあそこまでは来れる。でもさ、内地のカラスはこの島では生きることはできないのさ。ほら、あの岩の頭だけはなんでか緑が茂ってるだろ」

 

 

 

 

私「やっぱりあるんですね。誰か知らないかなぁ、その46か所。この前あったマチリの習慣(4つ足の動物を食べてはいけない期間のこと)の時、終わりの日に俺儀式が見たくて行きたいっていったら、お前は4つ足食ったから見に来るのもだめって言われちゃったんですけど、儀式では何が起こってるんですか?」

 

ムービーさん「いやー、来たらよかったさ。テレビとかも来てるんだしさぁ。昔さ、俺の連れてた姉ちゃんと見に行ってさ、腹減ったって言ってなんか食っとるのよ。何食ってるのって聞いたら、生姜焼き弁当って言われてさ、えー!ってなったさ、ははは」

 

私「あはは、めちゃ四つ足食べちゃってますね、あはは」

 

ムービーさん「その儀式の時にもユタが来るさ。でもさ、その人達は沖縄(本島)から来るさ。元々は島(与那国島)の人間なんだけどさ。」

 

私「へぇ。なんか不思議ですね。ユタって女のひとでしょ?」

 

ムービーさん「ん、いや、男もいる」

 

私「そうなんですか!島の人だけ?生まれつきなんですか?家系?」

 

ムービーさん「島の人だけだな。外から来て住んでる人は、そうはならない。いきなり分からないことが分かるようになるんだって。むかし、人が行方不明になってさ、いきなりユタの人がさ、言うわけよ。南(島の南側の切り立った崖のある場所のこと)にいるって。みんな、なんでそんなとこに人行くわけないよって思ったんだけどさ、行ったらいたのさ。そういうことが分かってしまうんだよ。」

 

私「う、うわぁ。岩、見に行ってみます。あぁ、なんか、こういう話してるとゾクゾクしますね。俺もユタに会ってみたいっす」

 

ムービーさん「ん?もう会ってるんでないの?」

 

私「・・・」

 

 

島(沖縄方言で泡盛のこと)とヤシガニの汁をすすりながら、嵐の夜は更けて行くのであった。

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