Culture

2020/09/16
お茶の仕事・畑編

茶葉の収穫は4月から始まるのが一般的だ。

一年で最初に摘まれる新芽は新茶と呼ばれ、一般的に一番美味しいと言われるお茶になる。

今年は時期が遅れて5月の連休明けから収穫はスタートした。

 

新芽は黄緑色で柔らかい。噛むと苦みと渋みがある。

今どきは機械での収穫がほとんどで手摘みは手摘みのお茶として希少価値が付けられ売られている。本格的に収穫が始まるまで私も近所のおばあちゃんと一緒に数日は手摘みを体験させてもらった。

機械の無い時代は近所のお茶農家が一斉に一つの茶畑に集まって手で収穫をしていたとのこと。そりゃ茶摘みの歌も歌いたい気分になるだろう。これはとにかく単調な仕事だ。同僚の男子の多くは開始5分で「やってらんねー」と言っている。が、私はこういう仕事が嫌いではない。1日8時間、何も考えずただひたすらに手を動かす。現代人が忘れた、仕事による単なる瞑想である。

本場中国ではベトナム人が出稼ぎに来て手摘みをしているらしい。しかしそうすると、歩合制の給料体系のために新芽以外ももぎ取ってしまうので品質が下がる。また、地域によっては特殊な虫に食われた芽が稀少価値のあるものになるそうで、そういった判断も経験のない人間でないと難しいとのこと。

たかが手摘みと言っても奥深いものだ。

 

 

 

 

しかしそんな流暢なことも言っていられず、新芽が霜に負けずに伸びてきたのを見計らって機械摘みの収穫が本格的に始まった。

お茶の木の畝を挟んで2人がのこぎり歯の付いた巨大なバリカンのような機械を持つ。その後ろに送り込まれる茶葉を受け止める袋を持つ1人が立っている。

草刈り機の原理と同じくエンジンを引っ張ってかけ、轟音と結構な排気を顔面に受けながらゆっくり歩くペースで3人は進んでいく。

伸びてきた黄緑色の新芽だけが収穫されるように高さを常に保たなくてはいけない。逆手で機械を持つ両手は振動と切り取られた茶葉の袋の重みですぐに腱鞘炎になってしまうのが分かる。

2トントラックと軽トラ一台の荷台が山盛りになるくらい茶葉を収穫して工場に戻ると、待ち構えるコンテナ4つがそれでいっぱいになる。

 

機械から受ける排気と、雨でも晴れでも関係ない畑仕事はもう散々傷んでいる私の体にはこたえるものがあった。無農薬の畑には毛虫もいーっぱいいる。

1週間で私は大分元気がなくなってしまった。

 

 

 

 

そんな私を見かねてか、社長からいきなり工場作業を言い渡された。

工場は、コウジョウでなくコウバと呼ぶ方がなんとなくしっくりくる。規模の為だろうか。もしくは若干の手作業が入るからだろうか。はたまた、お茶というホッコリを製造しているためか。

とにかく助かった。

 

ありがとう茶畑、アディオス。

私はお茶マスターへの次のステップへ進むこととなった。

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