アサラトという楽器を、ブランクをはさみつつも8年間振っている。
西アフリカ発祥の楽器で、まあるい木の実に穴を開け、紐をとおして結ぶだけ。
それを人差し指と中指に挟み前後に降って、木の実をぶつけあって音を出すシンプルな打楽器だ。
単純なだけに上達は難しく、奏者人口の少なさから教本もほとんどなく、かなり積極的に自分から関わっていかないと、
だんだん存在が薄くなってしまう。
自分より上手な人と出会えば、新しいリズムや技のパターンを教わることになり、それを会得するまでひたすら降り続ける日々が新たに始まる。
そんな健気な楽器だ。
演奏しているのは、もっぱら旅人、しかも日本人ばかりという印象を僕は受ける。
根気と暇がないと上達しない楽器なのだ。
上達するには、新しい先生が必要になる。
そのためには、移動と練習が必然になってくるのかもしれない。
旅先では、腰やカバンにぶら下がっているアサラトがきっかけで友達になることも少なくなかった。
僕の師匠との出会いも旅の途中だった。
エクアドルの首都、キトの安宿街でアサラトを振りながら歩いているヒッピールックなカップルを発見して、思わず声をかけた。 なんと、その彼は以前から知っていたヌチグスイというアサラトバンドのメンバーのアサラトパンマンだった。
アサラトの神は僕に更なる上達の機会を与えたのである。
生のパンマンのアサラトは次元を超えた上手さで、ぐうの音も出なかった。
彼のおかげで、ペルーやボリビアのストリートで演奏したり、小学校で講演の機会を得たりしたのも楽しい思い出だ。
今ではアサラトで生計を立て始めたパンマン。
日本各地でワークショップをしながら未だ小さなアサラトコミュニティーを盛り上げている。
今年は海外での活動もあるようで、日々進化しているに違いない。
明後日、彼と2年ぶりの再会。 サボってたのがばればれになってしまうだろうが、またアサラト熱が着火しそうな予感。
BBQの予定だけど、箸よりアサラトを持ってる時間のほうが長くなりそうだ。