5年ぶりに京都へ行ってきた。
本来の目的は4カ月ぶりのVippasana瞑想(6月のブログに載っています。)だったが、その前後の京都散策が楽しみで仕方なかった。
目的は月光荘という宿。
5年ぶりに会う旅の友達がそこで働いている。
月光荘は名古屋と那覇にも系列店のあるゲストハウスで、いわゆる「安宿」だ。
建物は京都ならではの古民家を改装してあり、1階は食堂、夜は飲み屋で、2階はベッドの並ぶドミトリーと談話室になっている。
近頃どんどんゲストハウスの増える京都の裏町の中でも古くからある老舗的ゲストハウスのようで、迷っても月光荘の名前を訪ねればかなりの人が場所を知っているのに驚いた。
店の裏手にはレトロなたたずまいのカウンターの立ち飲み屋、カドヤが併設していて、朝まで帰れない飲んべぇ達を相手している。
「京都に行くなら、月光荘行けば全部面白いとこに行けるから。」
周りの友人達は口をそろえて言う。
5年ぶりに再会したさをりちゃんは相変わらず。
俺も変わらずらしく、お互いただ笑うしかなかった。
さをりちゃんは3年前、数週間だけ手伝うといって始めたここでの仕事が今日まで続いてしまっている。
昔会った時には包丁も握れなかったはずなのに、今では毎晩にぎわう1階のキッチンの古株だ。
月光荘の夜は面白い。
半分座敷、半分カウンターのオープンな雰囲気の店内にはその店の雰囲気を作り出しているお客が毎晩集まってきた。
もちろん宿に泊まる旅人も飲みに来るが、最近は近所のアーティストやちょっと変わった人が多いよう。
ライターやアパレル関係、イラストレーターに音楽家、湯豆腐屋さん、美容師、スピリチュアルカウンセラー、アル中と、毎晩いろいろな人種と話ができたが、そのほとんどが個人経営で仕事をしていたのには驚いた。
月光荘の周りにも小さなかわいいお店ばかりで向かいのパン屋とキッチン道具のやり取りがあったり、朝の仕事前に必ずやってくる人がいたりと顔のよく見える繋がりがあるのも頷ける。
とにかく月光荘には朝から晩まで人の出入りが絶えず、ただの宿、飲み屋でないことがよくよくわかった。
きっとさをりちゃんも、この仕事と日常が混ざり合ったゆるい空気感にやられてしまったのだろう。
彼女のように京都に流れてきてここの土地を好きになり移り住む若者は多い。
今回の5泊の滞在で会った人はほぼ全員外からやってきた人だった。
旅人の多い町はよそ者を受け入れてくる度量があるし、見知らぬ町でも居心地がいい。
「そろそろ新しい土地に移ろうかとも思うんだよねー」
と、彼女は言うものの、なかなか腰は重そう。
なぜなら月光荘に夜な夜な集まってくる変わり者たちも、俺と同じくさをりちゃんの顔を見に飲みに来るようになってしまったのだから。
根無し草の旅人はいつしか居場所を見つけ、その土地の人に。土地の人はいつしかその町の顔へ。
懐の深い月光荘は、おいでやすのお言葉通りの京都の縮図のような場所だった。