友人に会いに北海道の愛別町を訪ねた。
雪のすっかり溶けた札幌市内から一路北へ。
すれ違う電車は3両から2両、愛別に着くころには単線になった。
道路わきの雪の間からフキノトウが芽吹いている。
愛別町は人口3000人、米とキノコの町だ。
いわゆる田舎である。
若者が田舎に移住するという話はよく耳にしていたけど、実際に都会に住んでいた友人がそうなるとリアリティがぐんと湧く。 歩いて行ける商店はなく、ストーブは薪。
水は近所の湧水。
食事には自分たちで作った安心なコメが食える。
夜は静寂につつまれて、心地いい眠りにつく。
絵に描いたような田舎暮らしだ。
友人は廃校になった学校の一室で皮製品の工房をひらいていた。
町おこしの一環としてアーティストに学校を作業場として提供しているらしく、
彼の他にもガラス職人や家具職人、カホン職人、デザイナーなどがいてなんだかおもしろげな雰囲気。
そこに集まってくる仲間たちもまた個性的で、田舎にすむために必要なバイタリティーを持ち合わせているな、
という印象を受ける。
田舎の生活は自然との関わりが深い分、世代を超えて共有できる話題が豊富にあった。
田植えはいつだ、山菜はどこだ、あのスキー場はまだ滑れるか、風はどっちから吹いているか。
こんな話は、我が家の近所の人とすることはなかなかない。
世代や価値観をこえて話をしていると、田舎の暮らしは生きるることと生活をすることが直結しているなと思わされる。
誰がどこに住んでいて、何をしているかを皆が知っていて、一人一人が関係しあっている。
もちろん不便なことや面倒なこともあるけれど、それは都会で感じる得体の知れないストレスとはなにか違うような気がする。
自然を中心に暮らしは回っていて、そのサイクルで皆が生活をしていた。
生活の中に生きている手ごたえを感じた かつてはノリノリのイケイケだった友人も、
なんだか角が取れて肩の力が抜けたようだ。
住む場所や共に生きる人が変わると、人間も自然と変わってくる。
僕もいつかは、本気で田舎暮らし。
考えただけでわくわくしてしまう。