メキシコの死者の祭りは有名だが、与那国島にも墓で祭りをやる習慣があるとは知らなかった。
16日祭は簡単にいうと祖霊を祀る後世の正月とのことで、旧暦で数えて元旦から16日目の2月20に親族がお墓に集うものだ。
この時期は例年冷たい雨の日が続くが、今年は良く晴れ今日もさんさんと太陽が輝いている。島の人たちと同じく、仕事を半ドンで切り上げてお墓を見に行くことにした。
「墓の写真はあんまり撮るもんじゃないよ」
と言われたことがあったが、今日ならいいでしょう。
墓には畑の主や商店で顔を合わせる皆さん、島の人だいたい全員集合的な感じになっていた。
与那国の墓の多くは子宮の形をしていてる。死後はまた母の胎に戻るというイメージのようだ。海沿いにある墓は隆起したサンゴと合わさってダンジョンのよう、とてもそそられる。
墓の前にあるスペースはこの日に人を招き入れるためのもので、皆さんここにテントを建てて昼ご飯を食べている。
リール竿で凧揚げをする子供、泡盛でごきげんなおじぃ、その辺をうろつくヤギ、初対面でも持ちきれないくらいご飯を持たせてくれるおばさん。
しんみりとした雰囲気はなく、ゆるい花見のような感じだ。
どこの墓にもあったのは小さいドラム缶だ。そこでお金に見立てた紙を焼くことで天に富を送るとのこと。
「百万円だよ、うふふ」
おばちゃんが嬉しそうにドラム缶に火をくべている。
皆がこの日は仕事を切り上げて一斉に墓に集まるというのは素敵な習慣だなぁと思う。
そこでご飯をべたり、酒を飲むというアイディアが辛気臭くなくて私は好きだ。
この島は日本でも琉球でもなく、東南アジアの空気に近い。
幸福の科学がこの島に来た時、この島は先祖崇拝の島だから話にならんと言いくるめられたと誰かがいっていたが、あながち間違いではないかもしれない。
仲良くやれればそれだけで健全は守られるのだ。
お墓の集会は青空の下、ほっこりという言葉がぴったりのささやかななお祭りだった。