Culture

2017/05/02
ボランティアをする人・木村歩美さん

木村さん(キム)はコスタリカの隣のパナマにある欄の保護センター(NGO)で、ボランティアとして働いている。

偶然にも私が行こうと思っていたレゲエフェスの会場から徒歩15分のところに彼女の職場はあった。

 

「では、セマナサンタ(イースター週間)にまいりますので」

 

 

 

 

キムの住むEl Valle de Antónは首都パナマから車で1時間半程離れた山の中にある。

海岸沿いの国道から、こぶのような緑の山々の急斜面を乗り合いバスでぐいぐいと登っていく。仕事終わりか、後部座席の男たちは待ちきれずにビールを飲み始めた。

 

目印だと教えられたスーパーとその近くにある洗濯屋の名前だけを頼りにバスを降りると、彼女の職場「Aprovaca」はすぐに見つかった。

そのくらい小さな町だ。

パナマの軽井沢的存在のこの町には、移住してきた欧米のリタイア組や自然を求めてやって来る旅行者も多い。表通りを一本入ると、避暑に来る金持ちの古城のような別荘が立ち並び、辺りはすっかり静けさに包まれる。

目を刺すような看板広告や店構えは少なく、昔からあるパナマの暮らしに少し子洒落た商店と中国人のスーパーがぽつぽつと混じり合い、その背景をぐるりといくつもの山々が囲んでいる。

一目で、ここでの暮らしは羨ましい、正直。

 

 

半年ぶりに再会したキムは、眉毛を整えていなかった。

「オノヨーコっぽい」と言われていたチャームポイントの豊かな長い黒髪と合わさって、外国に住んでいる日本人っぽい自由さが漂っている。

「日本にいるときより全然気楽ですねー」

ここでの暮らしに馴染んでいる彼女と話していると、私の知っている同じ人間に、違う角度から話しかけているような気分になってなんだか不思議だ。

 

ワインを飲みながら普段スペイン語では吐けない毒をお互い吐き出し、ラテンアメリカでの発見を共感し合った。

 

 

 

 

翌日、キムの職場の蘭園では年に数回のイベントを控えていた。

現地職員の100倍忙しそうな様子の彼女をよそに観光するのもなにか申し訳なく、道のゴミ拾いや観光客向けのビラ配りを手伝うことにした。

「もーちょっと人雇ってほしいんですけどねぇ、いろいろ難しいみたいなんですよ。私、給料もらってもいいくらい働いてるー」

宿も兼ねる蘭園には年増の職員が数人いるが、その割にはたくさんの仕事があった。

園内のガイドや手入れの他にも、ネットでの旅行客のブッキング、SNSでの周知、お金の管理、近隣への出張イベントもあるらしい。

そして、キムの携帯にはイケメンオランダ人の彼からのラブコールが結構な頻度でかかってきていた。

カレンダーは真っ黒だ。

 

 

 

 

しかしその忙しさも、なにか日本の仕事に追われるそれとは違うようだった。

キムはイベント中、誰にも悪態をつかなかったし、逆に誰にでも彼女の時間を費やそうとしていた姿は印象的だった。近隣の友人や彼女のホストファミリーがたくさんやって来たのは彼女がその土地で上手くやっている何よりの証拠だったし、一番忙しい彼女がだれよりもamigable(親しみやすい)な存在で、言い過ぎれば、イベントの欄の様だった。

キムが仕事を楽しんでいるは誰にでもすぐに分かることだった。

 

「あー解放感あるわー、甘いもんたべたーい」

1日が終わると、そう言ってアイスを旨そうに頬張った。

 

 

 

 

暇を持て余すJICAボランティは多い。

仕事に関しては私もそうだし、それは不可抗力だとも思う。

でもボランティアの仕事って、そういう話じゃないのかもしれない。

成果、奉仕、任務、経験、責務、余暇・・・ボランティは自由に自分を選べるが、それは選択を間違うと不自由な自由になるような気がする。

 

彼女の仕事を見て、キムの選んだボランティアはなかなかかっこいいぞ!と私には思えるのだった。

俺は「どんなボランティア」をしてるだろうか。

 

 

いい刺激、いただきました。

パナマ、いい国でした、また来ます。

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