Culture

2016/02/12
大阪 西成のリアリティー

3カ月の和歌山での暮らしを終え、難波の友人宅に世話になりながら大阪散策をしている。

田舎町から大都会へ。

たかが2時間程では周りの状況の変化についていけず、頭の中が変に忙しくなってしまい浮足立っている自分に気が付く。

季節労働の終わりは毎回同じ気持ちだ。

 

最近は仕事を一つ終えると近くの地方都市を探検するのが楽しみでしょうがない。

旧正月のタイミングと重なり難波周辺の繁華街は中国語と韓国語が飛び交っていた。

外国人だらけのド派手な街の刺激は強烈で、海外に来たのではないかというくらいの衝撃をうけて俄然テンションが上がってしまう。

 

しかし初日から私が見たかったのはそんな派手さとは対照的などや街、西成地区だ。

ここは日本三大どや街の一つとして知られ、かつては危険すぎて一般の人が立ち入れない場所だったという。しかし、最近は身の危険を感じずに歩くことが出来るということで、ほとんどの友人が西成行きを勧めてくれた。

 

「西成は道頓堀の100倍刺激的やでぇ。」

 

難波からすぐの新今宮駅で降車すると、早速汚い高架下の景色が私を迎えてくれる。

昨夜行った餃子屋のお母さんが言っていた。

「新今宮の駅前にはよくお札が落ちてるんやで!あそこでよく売買するんやて、ほら、清原や!みんなラリッてもうてお札のことなんか分からんのよ!私も拾ぉたことあるで!ほんまや!」

そんな話を思い出しながら、少しだけ緊張して線路沿いの高さ10メートル、長さ100メートルはあろうかという壮大なグラフィックを左手に眺めつつ歩き出す。壁の最後には、

「アセラズ、クサラズ、アキラメズ」

という西成の住人への熱いメッセージが小さく描かれている。リアリティーSHIT。

 

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通りにいる人はほとんどが中年の男性で、表現が難しいが、小汚い人が多い。しかし中にはレゲェの神様リー・ペリーの様な格好をしている人や、インドのババジのような顎鬚を蓄えたレジェンドもちらほらいて、思わずファッション雑誌にのっているのではないかと疑ってしまうおじいさん達に頭が下がった。みな、オリジナルを楽しんでいる。

写真を撮りたかったが、さすがに西成で一眼レフを出す勇気はなかったし、失礼だとも思ったので、コンビニでインスタントカメラを買って何枚かをササッと撮らせていただいた。

 

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街には昼間から開いている飲み屋が多くあり、気分のいい方が相当数いる。

通りの奥からたまに聞こえる奇声や、明らかに賭博チックな路上の将棋や何かのゲームを囲む様子、エビのような恰好で硬直して横たわる見た目ヤクザの方とその頭上に何故か置いてあるトンカチ、暗すぎる昔のゲーセン、ここの店舗だけ少し匂う大阪の激安スーパー玉手、50円の自販機、途上国ではよく目にした奇形の人、威勢のいい野犬。

 

その全てが見たことのない日本の姿だった。まるで古いVシネの中に放り込まれたような異世界感だ。

程よい緊張感と高揚感から解放されて電車に乗ると、安堵感からかホッとするものがあった。

時間は思ったよりもあっという間に過ぎていた。

 

 

山谷や寿町へも行ったことがあるが、西成は規模も大きく人も多く思える。

数時間歩いただけでは知ることのできないドープすぎる世界がここには広がっていることだろう。

そんな西成もどんどんと綺麗になっているらしく、以前は日雇い労働者が住んでいたビルは外国人がよく来るゲストハウスに代わり、チェーン店やコンビニも増え始めているようだった。新しいムーブメントはもうきっと起こっていて、社会的弱者の聖域はもうすぐなくなるだろう。それは、ここもまたどこかと同じ場所の景色にいつかはなってしまうということで、ありきたりな変化ではない西成フレーバーな変化がおきればいいのになぁと思う。今の住人が新しいどこかへと行かずとも、ここの土地で努力が出来るようになれば西成は違うベクトルでもっと面白くなれる。

いい刺激と想像力をいただい。

 

女性一人で行くのは私はお勧めしませんが、大阪へ行ったときは一見の価値ありだと思います。

 

西成、リアリティーあります。

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