山の上ではもうすっかり秋本番。
食欲の秋。
野山に秋の幸が咲き誇っている。
この頃になると、ちらほらと、毒キノコで食中毒被害なんていうニュースをきくけれど、毒か美味かはこれまた人それぞれ。
棘など覚悟で先陣達は蜜を求めたであろう。
今宵の先陣は近所のコウジ君。
が、紅天狗茸をもってやってきた。 あっちゃー
紅天狗茸はスーパーマリオやディズニーのキャラクター、デザインにも登場するお馴染みの赤字に白い斑点のキュートなキノコ。
毒キノコと同時に知られるそのしゃれた見た目は、暗い山の中にポツンと小さく咲いていても嫌でも目をひくかわいい奴なのである。
しかも、それはただの毒キノコではなく、食べるとなんだか不思議な気分になるキノコということも確かなようだ。
それを見るか食すは人それぞれ。
俺はしばしコウジ君を見守ることにした。
コウジ君は塩だけをふったお湯に野球ボールほどの大きさのキノコ3本を適当にちぎって煮込むと、ペロッとそれを飲み乾した・・・。
・・・で、どうなの??
「・・・めちゃ旨いよ、これ、うまみ成分の塊だね。味は、ほんと、うまみだけって感じで、お茶ずけにしたら最高だね。いやぁ、これはうまいうまい!」
らしい。
しかし、15分ほどすると急に外へ出て激しい嘔吐。やはり。
戻ってきたコウジ君によれば、それは通過儀式らしい。
そうなのか・・・。
で、具合はどうなの?気分は?なんかいつもと違うかい?
「うぅんと、酒に酔ってるのにちかいかなぁ、こう、ぽわわぁ~んとして、ほんのぉ~りってかんじだよ。別にだれかさん、だれだっけか、芸能人いたでしょ?慌てて警察に助けを求めに行っちゃう感じではないかなぁ~ あははは。」
・・・あーそっか、そうなのかー。なんか、とりあえずは気楽な感じなんだな。でも、いつもこうじ君はぽわ~んとしてるから、見ているこちらからするとそんなに変わったこともないねぇ。会話もできてるし、思ったよりも普通なんだね。
いいなぁ、俺も酔っぱらいたい!
と、見ているこっちは気楽なもの。
しかし、致死量もあるかもと山の人に言わせればいう人もいるので、アブナイキノコには違いないのである。
コウジ君、恐るべしである。
あの嘔吐を見ると紅天狗茸はやはり体には毒と判断されているようで、食すにはちょっとした勇気が必要だ。
たまご茸やマイタケがごっそりと咲き誇る近隣の野山。
普段は渓流で魚を追う釣り師たちも、この時期だけは竿を置き、ずた袋を両手に野山をはい回っている。
今年は私も。
かわいい紅天狗は目印だけとして、秋の幸を堪能させていただきたいと想います。