Culture

2020/01/06
都会のゲストハウス

私が転がり込んだゲストハウスChill outは道頓堀の近くにある。

地図を頼りにドアを開けると、腰までの立派なドレッドのオーナーが出迎えてくれた。

大きなソファーがゆったりとしたラウンジスペースに並んでいて、立派なサウンドシステムからラバーズロックがけっこうな音量で流れている。

雑談という名のしばらくの面接の後、私はここに住まわせてもらえることになった。

宿代の代償は、週5日、午前中2時間の宿の清掃だ。

難波徒歩圏内の立地から考えてこの待遇は破格だった。

 

タコ部屋の生活はいつぶりだろうか。タコ部屋とはもう死語かもしれない。

「従業員ドミトリー」は一応男女に分かれていて、台湾人2人、韓国人2人、オーストラリア人、日系ブラジル人と私の多国籍なメンバー構成となっている。人員は2~3ヵ月くらいで少しずつ入れ替わるようだ。

バイトで2つの仕事をかけ持つ子がいるかと思えば、何もしないで一日ゴロゴロしていたり、夜中ネットゲームをしている子もいる。大卒の一般教養を勉強している子や兵役を終えてワーキングホリデイビザで初めて日本にやって来た男の子もいる。

各々がこの有難い宿のシステムにあやかって思い思いの時間を過ごしている。

 

 

 

 

私のいるGuest House Chill outに泊まりに来る人は2,30代が多い。

日本人と外国人、半々くらいだろうか。

人種もさることながら見ていて面白いのは泊まりに来るその目的だ。

ジャニーズのうちわをスーツケースに忍ばせる中国の子や、日本女子をナンパしに来た韓国人、レゲェダンサー、商談に来たのに宿で泥酔してしまい散々な結果になる社長などなど。みんな大体何かしらの目的をもってここに来ている。沖縄や東南アジアのゲストハウスのように「ワタシただ流れています」とか、「ただ死に場所を探しています」とか、「ただ暇です」みたいなお客さんは全くいない。社会的に理解されずらかったり、こんにゃくのような人は来ない場所なのかもしれない、都会のゲストハウスという場所は。

 

みんな忙しそうで、もしくは怠惰という理由でせっかくあるキッチンを使おうとする人はほとんどいない。食べ続けたら死ぬかもしれない大阪の激安スーパー玉手の弁当やカップラーメンを食べている姿は私からすると驚愕だ。

若い女の子は30分以上鏡と向き合っていたり、ラウンジにいる8人が全員スマホと会話していて存在の無意味さを露呈していたりする。

 

 

 

 

こんな光景にびっくりしている私というのは、街の人から見ると少し変わっているのだろう。最近だと、沢尻エリカ様の顔が分からないと言ったら大そうモグリな目で見られてしまった。

お互いかみ合わない話の接点を探りつつ、ゲストやホスト達との新しい世界の居心地を味わっている。

これはこれでいい社会勉強になるかもしれない。

 

 

四国から親と子のグループで来たお客さんがいる。

中学生のお子さんはチェッカーフラッグ柄のパンツをお揃いで履いている。

私が「ダンサーですか?」と訊くと、「これからライブを観に行くんです、ジェネレーションズの。え?ジェネレーションズ知らないんですか?エグザイルの弟分みたいなグループですよ~。え?このズボンですか?コスチュームじゃないですよぉ、参戦服って言うんですよぉこれ!参戦服!うふふふん」

 

・・・参戦服。エグザイルの子分のファンが、チェッカーフラッグをはいて、ライブに、参戦、参戦・・・参戦服。・・・参戦服かぁ。 嗚呼、陽が昇る。

 

本当にいい社会勉強になるのかどうか、春が来るまで大分不安な気持ちを抱えつつ新しい年を迎えております。

明けましておめでとうございます。

本年もThe Companyをよろしくお願い致します。

 

 

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