今日は丸一日何も食べない日だ。
階段を降りると両親が朝食をとっている。しかしそれを見ても自分の空腹を感じることはない。昨日の朝食と日中くらいが食欲のピークだったらしく、私の胃袋は食べ物を受け付けることをもう既に忘れているようだ。
昨夜の夕食に使ったらしいお酢の匂いが鼻を突いた。そういえば、朝起きぬけに自分の胃袋から何も匂ってこないことを感じていた。普段はそんなことは意識しないしできない。今朝の感覚は、自分の内臓から口に抜け出る匂いに食べ物よりも自分の内臓の匂いを感じたという方が正しいかもしれない。口臭とは違った粘膜や肉を想像させる匂いで、そこから出たり入ったりする空気は新鮮で美味しく感じた。
嗅覚が敏感になった。
お湯、お茶、紅茶だけを今日は飲む。
暖かいものでも飲み過ぎは体温を下げるので過度には飲まない。
腹が少し凹んだように感じる。
体重計に乗ると1キロ瘦せていた。が、私は体重の増減が激しいのでこれくらいの変化は普段も起こる。
胃袋は日中よくゴロゴロと音を立てている。
違和感ではないが、今までに感じたことのない、石があるような感触が腹の中に居座っている。胃袋は伸び縮みする性質をもっているらしいがだんだんと収縮しているのだろうか。
気が付くとガスが止まっていた。
ガスとは恥ずかしながら、オナラのことです。
私は何故かよくガスが出る。
食べすぎ、食べるのが早すぎ、食べるときに空気を吸い込みすぎ、便秘、などが考えられる原因だと思っていた。
以前、メキシコ帰りに1日100回くらいガスが出るようになってしまったことがある。そのことを現地の友人に話したところ、虫下しの薬を飲むようにと言われた。現地の小学生はみんな学校でそれを飲まされるらしい。
私も言われた通りに飲んでみると、たちまちガスは姿を消したのだった。
おっと、ついついガスの小話が・・・。恥ずかしい。
がしかし、今回は食べるのを止めたらガスが止まった。
食事の仕方か食べ物に原因があったというわけだ。
私の腹に虫はもういなかったようで、一安心だ。
頭は若干軽い。
思考できないというか、あまり思考しなくてもいいやという気持ちになっている。そういう感じで軽い。
糖分が足りないせいか空腹で力が入らないのかは分からないが、自然と全体的に7割くらいの力で物事に取り組んでいる感じがする。ベクトルは無気力の方向に向いているのかもしれない。これは悪い意味の無気力ではなく、過度に怒ったり笑ったりする感情の起伏の上限と下限の幅が小さくなるような感じだ。
外の刺激に疎くなっているのかもしれない。
なのでとても気楽だ。
そんないいことづくめな感じの断食初日だった。
多分だが今夜もよく寝れる気がする。
断食は肉体労働とは相性がよくないことは言うまでもないが、時間のある今一回試してみることが出来て良かったと思う。
明日は朝に回復食を食べる予定になっている。
寝る前、少しだけ塩をなめると舌が喜び唾液がたくさん出てきた。
すると何故か、
・・・せっかくだしもう一日続けてみようかな
と、思ってしまっていたのであった。
もう少し、やってみます。
つづく。