思い返してみると、仕事ではなくプライベートで遊びに行ったレイブらしいレイブは2018年のFrue以来のことだった。
SLICKは仲間内で以前から評判が良く気になっていたパーティーだ。
とにかくハードコアというワードがばっちり似合うレイブなようで、奇抜なロケーションやバキバキなDJ陣から連想される音は硬派でストイックな印象だ。
下記のようなステートメントが事前に公表され、昨今ただただ増え続ける一般のフェスとは一線を画す内容になることは言うまでもない。クラブやパーティーでのハラスメントが話題の今、こういう個性を公言出来るパーティーというだけで行ってみたいし体感してみたいと思わされる、そんな魅力があった。
あと、大学時代にサークルが一緒で大阪を拠点に活動しているAscalypsoや、先日お邪魔した中野のBarスミスの店主、Portal氏の出演も決まっていた。知っている顔がいるというのはなにか安心するし、行動のための最高のモチベーションだ。
そんな期待を込めた〜久しぶりの〜パーティ〜だぜ〜イェイ!
が、しかし。
タイミング悪く、本当に悪く、私の本業の舞茸の収穫はその時ピークの頂点を迎えていた。
二週間の連勤後に会場の最寄り駅近くで弊社関口達と合流した時、私は久しぶりの再会にも関わらずその疲労を隠すことができなかった。
近所の台湾料理屋で威勢をつけてからふらふらと出陣した。
来場者以外には詳細がシークレットにされていた会場は相模湖湖畔にある廃ホテルだった。
地上から続く緩いスロープをカーブを描きながらフロアへと降って行く。コンクリートの建物には所狭しとグラフィティが並んでいる。日本でこんな光景を目にすることはなかなかない。
地下のどんつきに一つだけあるフロアは暗めで、レーザーがビキビキバキバキとオーディエンスの頭上を行き来している。
「UKスクワットレイブのよう」と誰かが言ったが、それがよく分からない私もなんとなくそんな感じなんだろうなぁと思う光景だ。
無機質な廃墟で爆音で思想的。そんなイメージ。
Foodmanと中原昌也氏のユニットのライブやBING氏、Lil’ mofoなど、はっきり言って全部の演者が私にとって見どころだったのだが、やはり、というか、もうなんでなのいつもあなたはー!!!ということで、私は疲労とアルコールのためダウンしてしまった。
見知らぬ女性に、「あ!復活したの?さっき通路でちょー大口開けて寝てたのに!よかったねー!」とか言われてしまう始末。・・・嗚呼。
朝方にはドリンクブースの方に「あぁ!お兄さんまた来た!すごい!飲み過ぎですごい!」と言われて、ただただ恥ずかしかった・・・。
イベントの感覚として、ぐちゃぐちゃになっちゃえ〜な感じではなく、結構スキッっと楽しんでいる方が多かったように感じるので、自分がそんな感じになってしまったのが本当に恥ずかしい。そして、演者は見たは見たのだろうが、記憶は翌日以降スカッと吹き飛んでしまっていた。
とても真剣に音楽を聴きたいと思ってやって来たのに・・・。
私は久しぶりに、自身が従事する肉体労働というものを呪いたかった。
しかし余韻というのは記憶よりも鮮明なようで、二日酔いや体調不良とは反して体が感じていただろうビートや会場の雰囲気は私の日々の憂鬱を揺さぶってくれたようだった。
田舎の暮らしが続いた昨今にSLICKのような最新の現状を体感できたことや、目にした色々な人からの刺激はいつぶりかに新しい刺激の穴を私に開けてくれた。障害のある方や人種の違う人たち、奇抜な格好とか、もう全く何も違和感がなくそれらはパーティーの一コマとして時に私の頭をよぎる。ステートメントが生きていたし、そこに各々が思い描くナイスパーティーの理想が格好良く体現されていた。
そんな残像が残っただけでも足を運んだ甲斐があったではないか、と自分に言い聞かせた。
でもこれは慰めでなくて、本当にそういうことだったのだ。
参加したみんなが確実に満足しただろう。
次回も期待大のSLICKだった。
いざ、今度こそ、コンディションを整えて・・・。