Culture

2016/04/14
職務質問

駒沢大学からルンルンで下北沢へ歩いている。スキップしそう。

今日は無事に写真展の撤収が終了した。そして、人生で初めて自分の写真に値が付いて人の手に渡って行った。しかも2枚。

旅のルポも売り切れ、増刷することになった。

儲かるとか、これで食っていくとかとは全く別の話で、とにかく単純に嬉しかった。

よし、1人で好物のカレーを食べて祝杯だ。

 

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天気は良く、潔く散っていく桜の花と、春風にそよぐ木々が今日の私を祝福している。

イヤホンからは友達のMIXが心地よく流れている。

すれ違う老人もママも幼稚園児も最高のスマイルだ。ハトと雀も平和を歌っている。

あぁ、最高の平日、東京の真昼間。

これ以上何を私は望もう!ハレルヤ!

 

 

「はいっ、すいませんっ、職務質問です!」

 

 

とっさにイヤホンを取って、背負っていた80リットルのバックパックを地面に投げ降ろす。バックの背中には展示に使っていた自転車の車輪が2つ付いている。左ポケットのウォークマンと右に入っていたスマホを差し出す。

中年の男の警官はポケットをポンポンと叩き、尻の財布も出すようにと言ったので差し出す。

若い女の警官はバックの開け方が分からないようで、「中身は車輪の関係のものですよね」と、無意味な質問をする。

「ちげーよ、ブス」と、思わず今年一番汚い言葉が口から飛び出てしまった。

ものすごい剣幕(けんまく)とはこの時の自分のことを言うのだろうなと思う。

女はバックから手を引いた。

 

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「早くしろ。恥ずかしいでしょ。」

と、一般市民からのご要望をお伝えする。場所は三軒茶屋の駅のど真ん前だ。

 

「名前は?外国のお金が入っていますけど、これは?」

「仕事です。」

「海外で麻薬を覚えて来る人が最近多いんですが、見たこととかやったことはありますか?」

「あるけど、ないです。」

「そうですか、麻薬は一度やると人生を台無しにしてしまうので、気を付けて、絶対にやらないようにしてくださいね。ご協力ありがとうございました。」

 

結局バックは開けられず、ボディチェックもポケットだけだった。

助かった・・・ というのは全く悪い冗談だか、バックの中身を根掘り葉掘りされずによかった。

パッキングには時間がかかったからだ。

そして何より、こんな人混みの中で警察に無抵抗に質問に答えている姿を見られるのは勘弁だ。

 

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C.Wニコルの様な髭面にサイケなカエルのデザインのTシャツと、80Lのバックについた車輪2つの格好は、職務質問されて当然な若者なのかもしれない。

伊勢志摩サミットに向けてどこでも警備が強化されているのも知っている。

 

しかし、「あなた、ドラッグやってる見た目ですよ、怪しいっすよ」と公共の面前で言われている私の身にもなってほしい。

そして、やるならもっとちゃんとやらんでいいのですか?意味ないっすよ?と、アドバイスをして差し上げたい。その無意味な会話のやりとりの代わりに、私が「あなたは何故生きているんですか?」という意味のある質問をしてあげられれば少しは彼らのためにもなっただろう。

私の態度にビビっているようではテロリストに対峙しても彼らでは手におえない。

その腰の拳銃を外しなさい。

 

 

職務質問に答えるのは「任意」であり、「拒否」ができる。しかし、そうなるとまた時間がかかり、ややこしくなるのは目に見えている。

本来ならば国家権力から不当な干渉や制限を受ける義務は全くない。

私は警官に尻のポケットを触られた瞬間、上半身に嫌な鳥肌が立った。

 

 

お目当てのカレー屋が閉まっていたのは、絶対に私のせいではない。

 

 

あーぁあ  世の中平和になんねーのかなー 

 

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