Culture

2022/08/09
日本蜜蜂の養蜂 その2

一つの捕獲箱に蜂がやって来たのをいいことに、すぐ近くにもう一つ箱を置いてみた。

すると、すすーっとそちらへも蜂が吸い込まれていくではないか。

しばらく見ていたが、1つ目の箱の蜂ではない。違う群れの偵察蜂だ。

翌日には結構な数がよって来ていて、我が家の庭に2つ目の巣ができた。

 

 

蜜蜂はペットのように餌や水をあげなくても大丈夫だ。

花の蜜や花粉を自分達で運び込んで来て、あとは勝手にやってくれる。

しかしそうは分かっていてもかまいたくなるのが親心というもので、箱の周りの蜘蛛の巣を取ったり雑草を抜いたりしてやりたくなる。雨や日当たりを考えて発泡スチロールの屋根を置いたり、箱が倒れないように地面とペグで固定したりしてしまう完璧な過保護具合である。

 

朝とか夕方にコーヒーや酒を飲みながら箱の横に座ってボケーっとするのが毎日の日課になった。

 

 

しかし突然とは本当に突然起きるものらしい。

ある朝一箱目を見ると、内部に蟻が大量に侵入していて蜂の姿が全く見えないのだ。

私は苛立ち、半分うろたえながら箱の天面のビスを外して中の巣を取り出してみた。すると、そこには想像を絶した美しい巣板が整列していた。まだ蜜や幼虫の姿が見えない六角形の集合体が建設中といわんばかりに一糸乱れぬ緻密さで佇んでいる。純白で柔らかなそれは私に絹をイメージさせた。

なにか神聖なものに触れたような気持ちになった。

それもまた蟻の侵入と同じく突然で、自然というものに圧倒された瞬間に違いなかった。

 

 

巣板に寄って来ていた蟻をなんとか除去してわずかに蓄えられていた蜜を舐めてみることにする。

普段私たちが口にする蜂蜜は濃縮度が高く粘着質があるものだ。これは今の時期ではまだ出来上がっていない。手元の巣にあるものはサラサラとして油くらいの粘度だ。蜂一匹が一生で集める蜜の量はTスプーン一杯分。心してその蜜を舐めてみると、爽やかな香りが口に広がった。ほわーん。

うぅん、これが家の近所の花の蜜の味なんだな。美味しい美味しい。

私は何を食べても美味しく感じる性格というか、これは本来こういう味のものなんだなと思って納得してしまうので食のレポートには不向きなのだが、我が家の蜂蜜は極めて美味しかった。

 

梅雨があけたのかどうかはっきりしない日が続くが2箱目の蜂たちは今日もせっせと蜜を集めている。

その姿に励まされ、気だるい夏を乗り切りたいものである。

 

続く。

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