先日、「ズームイン、服!」を出版した坂口恭平さんがおもしろい。
物書き、ミュージシャン、建築家、写真家、政治活動家などなどの肩書を持つ坂口さん。
ここ数年、アングラ界隈でなくともよくその名前を耳にするようになった。
僕が最初に彼のことを知ったのは7年前の雑誌のコラムで、立体読書というタイトルの連載を読んだ時だったと思う。
読んだ本の内容を絵で立体的に書き出し、そこに一つずつ丁寧に説明の文章が書かれている。
見開き1ページに内容満載のそれは少し病的に感じるほど緻密で、細部まで詳細にデザインされていた。
この人の頭の中はどうなっているのだろう?
ここ数年は精力的に執筆活動をしているようで、「独立国家のつくりかた」や「現実脱出論」などの
過激なタイトルの本が出版されている。
以前に熊本市長選に出馬しようとしたときはBanksyが選挙ポスターを描くという話があり、仲間内で話題になった。
いわゆる、反社会派だ。
かといって、彼の方法論はいたってシンプルで、本は誰もが納得できる読みやすい内容になっている。
簡単に言えば、この世の常識をもう一度考え直して、自分が正しいと思うことを行うことが可能であるということを述べている。べつに、今の社会にただ反抗しているのではなく、今の常識に沿わなくても、
生きていく術はいくらでもあると優しく解説しているのだ。
例えば、この世の中には行政も個人も私有していない、本当の「空き地」というものが存在するらしい。
そういった土地にただで住み込むことは可能らしく、実際に坂口さんはそうして住居を建てた。
知恵を絞れば、人間は生きていくことができる。
坂口さんは哲学を現実に移行しようと行動する人だ。
日本の自殺者を減らすため自分の携帯番号を公表し、ホットラインを設けている。
そういった個人にも目をむけつつ、最近は村上龍や石川直樹などとの対談、活動もあり、
そのスケールは日に日に大きくなっている。
坂口恭平の思い描く世界はどのくらい現実の世界で大きくなるのだろうか。
はたして。
彼の活動に注目しつつ、自分の現実もじっくりと観察したいと思う今日この頃。