音好きの方ならチェックしていただろうFruezinhoへ行ってきた。
梅雨明け前日となった6月26日、日曜日の13時。普段のイベントではあまりない開演時間に昼飯をどうしようか悩みつつ久しぶりの都会に迷いながらふらふら会場へと向かった。
立川駅からすぐの所にあるStage Gardenはコンサートホールと呼ぶにふさわしい佇まいだ。
エントランスに並んでいると、建物の中から誰かが私を見ている。オーガナイザーのアニさんと運営のタツさんだった。あ、どうも。私は以前Frue(掛川で秋に開かれるフェス)を手伝っていたりあちこちの裏方をしていたのでこういった知り合いができてしまっている。なので客として普通に遊びに来ているのはちょっと罪悪感がある。他にも顔見知りの方がいたが、「プライベートなので」的な感じであんまり関わらない感じにしてしまった。今回はどうしても客として参加したかったのだ。
14000円(早割12000円)もするイベントのお目当ては坂本慎太郎さんだ。私は前身のバンドであるゆらゆら帝国の時から追いかけ気味だったが、彼がソロ名義になってからはライブの数がめっきり減ってしまっていた。一度は友人達に頼んでまでLiquidroomの抽選に応募しことがあり一人がめでたく当選した。しかし、彼女が代金を振り込み忘れるというほっこりによって坂本慎太郎のライブは私の中で伝説となっていたのだった。
この前ライブらしいライブを見たのはいつだったろう。振り返ってもあまり思い出せない。
コロナ禍を身に染みて感じるなぁ。
そんなことを考えながらそこそこステージ近くに陣取って始まりを待っていた。そして始まると、もうその時点で何かジーンとしてしまい、けっこうとめどなく涙が落っこちたのであった。前の女性も泣いていたので、なにかそれもよかった。
どの曲もアレンジが違ったりソロやジャムが入り乱れたりでライブのグルーブが全開だった。坂本さんのギターソロはもはや誰にも予測不可能に崩れ切っていた。それにどこまでも絡みつくサックスとフルートは顔はコワモテでカラフルな蛇だった。ベースはひたすらに骨組みを作っていて、堅実な女性のコーラスこそが実は曲のメインなのかと思わせるほどに花のように咲いていた。ドラムは完全に「縦」に刻んでるイメージで一つ一つの音がポップしているかのよう、全体の展開を絶妙なタイミングで指揮していた。4人編成とは思えない音圧がのしかかった。綺麗にポップスをやるのかと思っていたがゆらゆら帝国と全く変わらなかった。ぐにゃぐにゃだった。お客さんは年齢層が高めで小綺麗な人がほとんどだったが全員完全に曲げられていた。明日仕事なのに。
サウンドしかり、コロナ禍を意識したであろう選曲も迫る物があった。
先日リリースした6年ぶりのフルアルバム中心のセットがほとんどかと思いきや、「ディスコって」や「死者より」、そしてなんと金字塔的ファーストから2曲もやった。
最後の曲は「ツバメの季節に」だった。
どれも生々しい生の肯定だった。
トークなしの1時間の演奏の後、アンコールしたい、けどもう本当にお腹いっぱいでもある、という具合だった。
来てよかった。
コロナと共にある社会情勢はまだ続くが、自分の中で何か一つ区切りのようなものがついた気がした。
我々はこれかれも毎日を暮らしていくのである。
イベントのレポートと思って描き始めたが坂本さんのことで終わってしまった。
でも私にとってはそういうことだったのだ。
また音楽を聞きに外へ行こうと思う。