その3のnoteで来春の再会を願ったにも関わらず、我が家の蜂は冬を越すことが出来ず死滅した。
原因はアカリンダニという極小のダニだ。
それが蜂の器官に入り込んで窒息させてしまう。
この外来の害虫のことは知っていたが、対策が打てずに蜂はあっという間に皆死んでしまったのであった。
言わずもがな、私はひどく落胆した。
しかし、この桜の花のような生命の散り様に自然の淘汰を痛感し、それは、いつも死につきまとう重く暗い心境とは違ったイメージを私に投げかけたのだった。
死とは悲しむための存在だけでは無いはずだ。生まれることも喜びだけは決してないように。
あまり重たい気分にならないうちに残された巣を気にかけてやらなければいけない。
そこには蜂蜜が眠っているからだ。
ダニは蜜の害にはならないらしい。
寒いので家の中に巣箱を運び入れたが、これがたいそう重い。
家に秤がなかったので正確には分からないが、巣箱を除いても8キロくらいありそうな感じだ。
どきどきしながらネジを慎重に抜いていく。
すると、想像以上にみっちりと詰まった黄金色の巣が姿を現した。
す、すごい。
いつぶりかに一眼レフを取り出して思わず写真を撮る。
蜜の香りがゆっくりと部屋に広がっていく。
まさかこのスケール感を想像していなかったので用意していた道具や時間では蜜を処理仕切れそうもない。このままの姿で部屋の片隅にオブジェのように置いておくこととなった。
1匹の蜂が一生に集める蜜の量はスプーン一杯分と言われている。
米一粒と同じくらい大切に蜜を採取したい所だ。
とか思っているのだが、箱を開けた時点で巣に入った切れ目から少しずつ蜜が滴り落ちているではないか。しかもそれは知らないうちに手やスリッパなんかに付着していて気が付くとあらゆる場所にしれっと飛び火してしまっている。
これは流暢なことは言っていられない。
とりあえずの蜜の滴りの応急処置をし、すぐに道具をそこらじゅう(村じゅう)からかき集めた。
最後の最後までドギマギしているが、いよいよ養蜂のハイライトにさしかかったと思うと自然と嬉しくなる。
蜜を集めてくれた蜂に感謝しつつ、いよいよ最後の仕事に取りかかろうと思う。
つづく。