Notes

2019/03/13
AV女優に恋をする

思わせぶりなタイトルなので先に書きますが、戸田真琴さんはAV女優であり、物書きだ。

先日noteで彼女の「SNSで死なないで」という投稿を読んでから、私はけっこうな頻度で彼女のことを考えている。

これって恋かしら。

サトウキビ刈りの辛さにあきあきして、ベッドの上に寝そべる彼女を妄想しているのではない。多分ね。

 

投稿の内容は簡単に言うと、SNSで人気を得て「特別」になるという価値観への疑問視だ。

インターネット上にはそうなることでお金を稼いでいる人がいるし、どうやったらそれが出来るようになるかと教える人もいる。つまり、「特別」になることによってお金、仕事を得よう、ネットの世界には誰しもがそうなれるチャンスがあるのだから、という考え方だ。

でも戸田さんは、「それって本当に大事なのかしら?本質かしら?」と思っている。

それは、自分でも気づいていなかった私の気持ちを代弁していた。

 

戸田さんはAV女優という人気商売上、自身もネット上で発信をしてフォロワーを集めたいと思っている。彼女のように商売ではなくとも自分がSNSで発信するからには誰かにそれを見てもらいたいし、反応が欲しいのは人間ならば当たり前に持っている感情だ。さらに、その世界で人気者になって、それで自由な暮らしをして生計を立てることができるなら・・・。

なんて素晴らしいことだ!

 

でも、そんなネット世界の価値観に追いつめられている人がいるというのも本当のことだ。

サラリーマンのことを「社畜」と呼んだり(昔は私もこの言葉を使っていた)、フォロワーが全然いなかったり。誰しもがそのSNSというツールを使って特別になることはできないのだ。ネット社会が大きくなればなるほど、現実が生きずらくなる人はたくさんいるはずだろう。

 

人気者になることがいいことなんだという価値観がSNSには充満している。

そういう構造になっている。

そして、それが現実の世界を日々刻刻と侵食している。

私がこの風潮を嫌いな理由は、結局テレビと同じ匂いがするからだ。大きい物、金のある企業、商品価値のある人間関係、誰にも聞こえのいい甘い言葉や目に優しいもの、かわいいものが「いいもの」として多くの人に周知されるようになって、結局は大衆側へと表現は傾向していく。

見たくない本当の現実は覆いかぶされてしまう。

テレビチャンネルよりも選択肢があるはずのネットの世界で、結局はそういう意識が芸能人から個人に分散されて余計に余分なものが目に付くようになった。

SNS上では華々しく見えている人でも、いざ直接会って会話をすると、その手触りのなさに肩透かしされることも現実で起こるようになった。

 

ネットの世界は日々大きくなる一方だが、それは本当はツールにすぎない。

一つしかない目の前の世界がどんなに素晴らしいか、ただ毎日を生きることがどれだけ大切なことか。戸田さんは読み手へ力強いエールを送って記事を結んでいる。

 

 

彼女の記事は新聞のコラムにコメントが載るくらいの反応があった。

でもそれは、単純に意見が的を得ているからだけではない。

彼女の言葉は澄んでいる。

 

私も言葉を介してお金を多少なりとも頂いている分際なのでよくわかるが、文章を読むとそこにその人の性格やその時の気分までもが滲み出てしまう。その人がどんな目をして何を見ているかの深度が読み手に温度をもって伝わってしまう。

戸田さんは冴えている。知識があるとか文章がとても上手いとかではなく、自分の中でよく消化された言葉を持っていて、それがはっきりと伝わる。

経験値とか日々に何を感じているかという感性の現れだ。

これは想像だが、AV女優という仕事の特殊性からも彼女は日々吐き出したい毒を本当は秘めているだろう。でも、それは文章中に嫌らしさとして登場しない。かといって媚びるような甘ったるさもない。自分との葛藤と他者への肯定を客観的に表現する度量がある。

勝ち負けはないが、正直この人までは今の自分は届いていない。

きっと会って話をしても、素敵な人だ。

 

 

私自身、この会社のブログも、絵描きやDJの友達との活動も、沢山の人に知ってもらえたらもちろん嬉しいのでSNSはこれからも使っていく。

でも、変な形で人気がでなくても、きっと別にいいのだ。

正直なものがそのまま伝わればいいし、そこに自分が創作をしている意味がある。

戸田さんも、幸福に生きるより美しく生きたいと言っている。彼女もアートしているということだ。

うーん、いったいどんな人なんだろう。twitterを覗いてみた。

 

お!オフ会がある~( ˘ ³˘)♥ ゚+。:.

 

「一緒にお花見しましょう!お一人25000円ですよ」

 

 

ぎゃーん

 

 

間違いなく、彼女は私の恋する手の届かないAV女優だった。

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