最近、クライミングジムに通っている。というか、ハマっている。
週に5日か6日はジムに行って、長いときは5、6時間ジムにいる日もある。完全に壁に中毒してるなぁ…。
そう思いながら固くなってきた手の平を見ると、3年前まで働いていたサトウキビ狩りのことを思い出した。
今までいろんな農業や漁業の体力仕事をしてきたけど、サトウキビ刈りに勝る程のしんどい仕事は他に知らない。
朝は暗いうちから寮を出て、日の出とともにキビを刈りだす。10時と3時に一瞬休憩、昼休憩は20分。あとは日が暮れるまでひたすら斧でキビの根っこを叩き切る。朝起きると、斧を握っている方の手はぐうの形をしていて、逆の手で一本ずつ指をこじ開けないといけない。仕事をしていた2月の与那国島は雨季で、暴風と冷たい雨の日がほとんど…。これが2か月半、製糖工場が壊れない限りは毎日続く…。
今思い返しても、しんどいの一言に尽きる。
でも、これにハマってしまう。
苦痛だったはずの手や腰の痛みはだんだんと快感に変わってきて、自分の体の変わりようにびっくりするようになる。
広大なキビの畑でたんたんと斧を振るう作業にだんだんと慣れてくると、頭では何も考えなくなって、気が付くと無心になっていて1日が終わっている。
誰が言ったか、キビ刈りは畑の瞑想。
クライミングにハマってるのも、体を使って頭の中を真っ白にできるからなんだろう。
何十分も壁を眺めながら登るルートをイメージして、動きを頭の中でデザインしている時間はなんとなく畑の中の真っ白な瞬間に似ている。
気持ちいいの一言に尽きる。
今朝も指の関節がきしんで、肩が鉛のように重い。
でも、脳みそは、「ジムへ行け」と静かにささやいている。