今年は暖冬のため、例年にない早さでミカンの収穫が最盛期を終えた。
どこの農家さんも少し一息、というところだろうか。
11月初旬から友人に紹介してもらったミカン農家のお宅に2カ月間住み込み、農作業の手伝いをしている。
ミカンの仕事は初めてではなく、4年前は愛媛県の八幡浜市だった。
その時は100人を超えるバイト君たちが同地区に密集して各農家さんの家々に住み込んでいて、「丸マ」のシールが一個一個のミカンに貼られる高級ブランドミカンをもぎっていた。
八幡浜ではJAがバイトの求人を統括するので、バイト同士の交流会や松山市街地へ大型バス2台を貸し切って行く遠足などの催しもあった。
その時の光景、グルーヴたるや、さながらヒッピーの祭そのものだったことを覚えている。
町全体が繁忙期を迎えているのが一目でわかる。
それに比べ、和歌山のミカンは各々がいろいろなルートで農家さんと出会うようで、住んでいる地区もエリアが広く、期間や待遇もばらばらだ。9人で一軒家をシェアしている人達もいるし、農家さんのお宅に住み込む人もいる。
和歌山県内でみればこの時期住み込みで働く季節労働者は300人程いるのではないかとのこと。
先日も湯浅のレストラン「じょんのび」で毎年催される「みかんさみっと」という季節労働者の集まりがあったし、銭湯へ行けば裸になっても外物だと分かる風貌を毎度見かける。
和歌山にもミカンネットワークがしっかりと根付いているようだ。
私は世話になっているデバリさん宅の離れに個室をあてがわれ、隣部屋の久しぶりに再会したアツシ君と仲良く働いている。
家は山の斜面にあって、畑はもうすぐ目の前だ。
どっちを向いてもミカンやネーブル、柿、デコポン、キウイと、柑橘系の果物が元気に育っている。
蛇のようにうねる細い山道を少し登れば、谷底から稜線までびっしりと築かれた遺跡のような石垣とそこに実る色鮮やかなミカンを両脇に、海南の海を越えて淡路島までを一望できる景色が迎えてくれる。
朝夕は畑でぼんぼん焼きをする農家さんもいるので、その激しい山の傾斜に煙と匂いが流れる瞬間はタイやラオスの山岳地帯を彷彿とさせるものがある。
とばされるような絶景だ。
しかし、たわわに実った果実とは対照的に集落は人の気配が薄い。
見るからに空き家の様子の家が4、5件に1件はあるし、道路の脇に手つかずのままの農具や明日にはアスファルトを覆い尽くそうかという雑草が目立つ。小学校は廃校になり、徒歩、自転車圏内に商店はない。
街頭と自動販売機、「下津」のインターだけが静かに光っている限界集落だ。
私はここを陸の孤島と呼んでいる。
ミカンの収穫が終わると季節労働者の仕事もそこで終わりとなるのが一般的だが、私はもう少し他の仕事をさせてもらえることになった。
まだまだ何が見えてくることやら、久しぶりのドープな田舎暮らし。
ミカン、農家さん、農薬、ご近所、田舎ならではのデザインの話、また書きたいと思います。
ミカン片手にコタツでノンビリ読んでいただけたら幸いです。
年の瀬であわただしい日々かと思いますが、皆さま風邪などひかぬよう。