Culture

2016/01/18
牛の解体

今年も友人達が一人、また一人と沖縄へサトウキビを刈りに行く季節になった。

そんな羨ましい知らせをFacebookで眺めつつ、みかんのお礼にと岡山の焼肉屋から送られてきた最高級の牛肉を昼食にいただいた。

その美しくサシの入ったピンク色の肉を眺めていると、キビ刈りをしていた与那国島での牛の解体作業のことが頭をよぎった。

 

 

例年のごとく製糖工場が壊れ、その修理の間のつかの間の休みがもらえることになると、牛飼いの人が牛1頭を解体させてくれることになった。

作業は物々しく、人気のない空き地でひっそりと行われた。

本当は申請や許可が必要なのかもしれない。

トラックと小型のショベルカー、キビを運搬するトラクター、解体した肉を乗せる軽トラが用意され、集まった20人程が1頭の牛を取り囲む姿は何かの儀式のようにも見える。

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作業の1番最初にやってくるクライマックス、屠殺(とさつ)のシーンは遅刻して見逃してしまった。

現場に着いたときはすでに牛は牛肉へと変身しており、「命をいただきます」ではなく、「牛肉をいただきます」という感覚でのスタートとなった。

しかし、いざ牛の体にナイフを入れる瞬間となるとそれは抵抗のあるものだった。

肌はまだ生暖かく、目や肛門からは体液が流れ出るままだ。

 

皮を肉から削ぎ落し、部位ごとに切り分けていく。

革職人の友人がその皮を干して使おうとしたが、干している間に犬がどこかへ持ち去ってしまった。皮にも骨にも、切り取ったナイフにも、洋服にも、そして髪の毛や体にも獣の匂いが染みついて数日間離れなかった。

肉の赤身に黒いハエが集まって来る。

 

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作業が進むにつれてその情景がだんだんと馴染んでくると、やっと少しずつ進んでナイフを握れるようになった。

「これカルビ。はい、タン切って。腸はホースを入れてよく洗ってね。」

というように、だんだんと食肉具合が増してくる。

島の人は勧めなかったが、まだ暖かい生肉を口にしてみると肉の油が口中に広がった。臭みは全くない。わさびと醤油を持って来ればよかった。

 

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島では肉を焼く習慣がないためか、身も内臓も一色単に汁として振る舞われた。

1日係の大仕事だったが、解体作業と牛汁と休みとの相乗効果でやけにみんなでハイになっていた。

しんみりと、「命について考えましょう」という感じではなく、「牛肉いただいて踏ん張り効くね!明日も頑張ってキビ刈りましょうや!」というようなテンションだ。

頭で考えるよりも体でダイレクトに生を感じた方がよっぽどポジティブだ。

 

 

今日いただいた牛肉も、本日の一踏ん張りになりますように。

パンチョ、キョウヘイ君、岡山の焼肉屋岩ちゃん、御馳走さまでした!

今年もキビのみんな、いいシーズンになりますように!

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