2度切れるギターの弦、勢いのあまり吹っ飛ぶシンバル、荒れ狂うチリチリドレッドのフロントマン、キレキレでグルービーなド渋いベースと、哀愁漂うさすらいのトランペット、焦点が定まらない褐色のインド人パーカッションの背後で独りでにドラが鳴り響いている。
初めて観た「かつしか動物公園」のLiveは壮絶だった。
「くたばれファッション野郎」の立て看板を後ろに繰り広げられるステージはそのメッセージのままに、「おしゃれで音楽やってんじゃねーんすよ、わかる?」というような有無を言わさぬ無言の圧力に気圧されるかのようだった。
対峙するバンドを目の前に緊張感を必要とするライブは久しぶりだ。
その証拠に、3曲目が終わった時、観客席から拍手や歓声は起きなかった。
曲の終わりのタイミングがつかめなかったわけではなく、大のいい年の男がその裸を見せるよりも勇気がいるであろう、大衆に魂(soul)をさらけ出しているという行為に観客全員が気が付き、その様がかっこよすぎたので、思わず無言の喝采を送るしかなくなったのだ。
会場の全員が興奮させられていた。
学生時代は1年間で150から200組以上のLIVEステージを観ていた。
ジャンルや場所、時間を問わず、とにかく色んなステージへ出向いて肥やしてきた耳と目には我ながら自信がないわけでない。趣向は各々あると思いますが。
しかし、最近は田舎に住む時間が増えたせいもあるのか、「良質なLIVEを体感したな」と思える機会は日に日に減ってきている。
ステージングが上手かったり感動させられるLiveは勿論あるが、明らかに自分の中にある何かを変えてしまうことのできるバンドは少ない。この際言ってしまうが、個性ある芸術をやろうしているバンドは減っている。
かつしか動物公園はメンバーが千葉の東かつしかに住んで、Liveもだいたいその辺でやっている。
そして面白いところは、オーディエンスや会場を選ばない懐の深さにある。
運河の土手での朝市、飲み屋、町のお祭り、勿論ライブハウスでも。
例えば、スティービーワンダーは流山の夏祭りのやぐらの上では演奏できない。と思います。
全ての年代が受け入れることの出来る音とメッセージを発することができるというのはものすごいことだ。
子供からおじいちゃんまでが理解できる歌詞、誰しもが笑ってしまう曲間の動物の鳴き真似ね、楽しいメロディー。そして、きっと決め事は少ないであろうスリリングかつアヴァンギャルドなアドリブが乱れに乱れる構成と演奏力は、一見の音好きをもステージ前から離さないパワーを放っている。
「いい演奏をすると物販が調子いいよ」
とのことで、おばあちゃんが少しアブナイジャケットのCDやTシャツを手にとっている姿を想像すると、なんだか微笑ましい気がしないでもない。
子供のファンもいるらしい。納得である。
彼らのステージは生き物すべてを歓迎する動物公園そのものだ。
友達に自分の地元を紹介するときはいつも「家しかない東京のベッドタウンだよ」と言っていたけど今度からは、かつしか動物公園っておもしろいバンドが見れるところだよ、と紹介することにしよう。
次回のLiveは4月2日、桜並木をバックに運河の朝市に登場とのこと。
いい絵になりそうだ。