2日間の断食を終えて朝を迎える。
出来ればまだ何も口に入れたくない。
せっかくここまで続けたのだから出来るだけ攻めたいという気持ちになっていたからだ。空腹感も全くない。
しかし昨夜は眠りが悪く、起き抜けに気だるさも感じていた。機嫌もあまりよくない。体にどんな変化が起きているのか、自分では分からない。
大人しく回復食を食べ始めることにしよう。
断食明けは大根と梅干が定番メニューだと聞いている。
それを食べることで腸内に溜まった宿便を根こそぎ出しきることができるらしい。多分これが断食の一番のご褒美みたいなものだろう。
とても楽しみだ。
軽く煮た大根と梅干を少しずつ少しずつ口へと運ぶ。
味覚は敏感にはなっているが、空腹感がないのでその味や食感に感動することはなかった。
内臓の運動も感じない。
どうせ食べるならピザでも食べたいくらいだ。
以前1ヶ月断酒をした後のビールも大して美味しくなかったことを思い返す。
出来るだけ時間をかけて食事を終えた。
が、しかし、胃も腸もうんともすんとも言ってこない。
どうしたんだ、さぁ、ぎゅるぎゅるごろごろと音を立てて長年溜め込んだものを出し切るがいい!そう話しかけながら腹をさするものの、一向に反応はない。
がっかりとしながら友人にその旨を伝えると、単純に大根の量が足りないらしい。
汁がポイントらしく宿便がでるまでどんぶり3杯、4杯も大根の煮汁を飲み続けなければならないという・・・。
「そんなの苦行じゃないですか。そんなに大根ジュース飲んだら断食しなくても出るもの出ますよ。」と、ふてくされつつもあわてて大根を探すが我が家にはもう大した量が残っていなかった。
母が怪訝な顔をしながら様子を伺っている。
私は自分の詰めの甘さを悔みながらもうあきらめて、他のお粥や野菜をのろのろと食べ始めた。
宿便らしきものはとうとう翌日もやってこなかった。
しょうがない。もういいよ。また今度やってみよう。
それよりもなによりも、準備食、断食2日、回復食で得た収穫は沢山あったではないか。
体重は2.5キロ減った。
腰回りの肉が落ちた。
顔がしゅっとなった。
準備食や回復食を上手に食べられれば一食や二食を意識的に抜くことは苦ではない。(私の場合)
小食は深い眠りに繋がる。
内臓と脳の活動を休ませることができる。
多少のハングリーな状態が心身の集中力を高めてくれる。
アルコールを摂取しなくてすむ。
細かく言えば切りがないが総じてポジティブな結果が沢山でた。
今回はたるんだ心身がしゃきっとすればいいかなくらいの興味本位でやってみた実験だったが、体をああしたいこおしたい、気持ち的にこうなりたい、のような希望があればそれに向けた方法もあるだろうし、効果ももっと大きいだろう。
完全に断食という形をとらなくても、口にするものや量を変えたりするだけで体と意識は思ったよりも簡単に変化する。そう分かったことが何よりの成果だった。
栄養や薬を取り込むのではなく、普段の生活から抜く、減らすというマイナスの方法で‘より良くなる”というのは理にかなっている。
自分の体のルールが分かれば、食べることで人はもっと自由になれるのかもしれない。
嗚呼。
なんという大きな気づきだろう。
断食も無事終えたことだし、さっそく居酒屋へ自由になりに行こう。