※グロテスクな写真の掲載がありますので苦手な方は記事の閲覧をご遠慮ください。
新しい暮らしは新鮮味に満ち溢れている。
さっそく私はカエルをさばくことになった。
Fresh!!!
このカエルは食用に育てられたものではなく、その辺の河原や道でゲロゲロしている奴らだ。
近所のおじぃがバケツに捕まえて洗面器で蓋をし、その上に石を載せた状態で社員宅の玄関先に置かれていた。
社員の子供が食べたいと言っていたのを覚えていたのだろう。
村の中でもカエルを食べたがる人とそうでない人、もちろん両方いる。
しかし、生きた彼等をさばきたいと思う人間は少ない。
新参者の私と同僚が面白半分にその任を仰せつかった。
私は食用ならば生き物を殺生することに抵抗はない。
どうせ色んな肉を食べている身だ。今更何をためらうことがあるのか、偽善者よ。
カエルはまだ息をしている。
腹が呼吸の度に緩やかに大きくなったり小さくなったりしている。
まずは息の根を止める。
銅に巻かれたままの緑色の紐を手に持ち、コンクリの壁に勢いよくその体を叩きつける。
Smashhhhhh!!!
「ギャロッ」
という鈍い鳴き声と共に動きは止まった。
首元に刃物を入れ、そこから両手、両足、頭、背中までの皮をペロッと引き剝がす。
その後、胸を開いて内臓を絞り出す。
鶏とか哺乳類と同じやり方だ。
ものの5分でカエルの肉が仕上がった。
同僚のカエルはこの時点でもまだ体が反射的にぴくぴくと動いている。
こうなればあとは部位に切り分けて調理するだけだ。
この段階になるともう肉の正体がなんなのかは見た目では分からない。
いただきます。
けっこうな思いをした割には食べられる肉の量は少ない。
食感は鶏肉に似ているというが、もっと気の抜けた魚、ウナギのようなだと私は思った。
新鮮で臭みはないし、肉としては血抜きに失敗した獣よりも美味しく食べられるかもしれない。最初の見た目を知らなければの話かもしれないが・・・。
村にはいろんな植物や生き物を食べる習慣が残っている。
どこに行ってもその土地で食べるものに馴染むのは生きる上での最初のマナーのようなものだ。土地の味を知ることはそこでの色々を体で知ることのできる重要な経験だ。
少しずつ、私も村の味に馴染んでいこう思う。