Culture

2022/11/11
日本蜜蜂の養蜂 その3

8月のnoteから大分間延びしてしまったが、相変わらず我が家の庭には一つの巣箱に蜂たちが暮らしをたてている。

途中、暑さか湿気のために巣の一部が落下する事故が起こったが、それ以外は何事もなく今日まで蜂達はせっせと花粉や蜜を集めてきた。

 

 

私の村の10月終わりの最低気温は2度まで下がり、今年は早めの冬支度になりそうな気配となった。

本来ならば養蜂の一番の醍醐味である採蜜(蜂蜜をとること)をもうしなければならない。

しかし、我が家の群れはどうやら少し小さいようだ。ここで蜜をとってしまうと彼らは冬を超えるための食料に事欠くかもしれない。

私が教科書として読んでいる本にも「採蜜がなければ養蜂の本当の楽しみを知ったとは言えない」と書いてある。もちろん私もそれを楽しみにしていたのだが、群れが死滅してしまっては元も子もない。

採蜜しない判断は当然のことだった。

 

村の最後の蜜源となるのは「そば」の花だ。

晴れた日にはそのオレンジ色の花粉を両足に付けて飛び回る蜂を「いつが見納めになるのかぁ」と思い眺めながら冬の到来を待つことになった。

天気のいい昼間には数匹姿が見えるが、午後の3時にはもうその姿はない。山間にある私の村は、その時間には日が山に落ちて途端に冷たい空気に包まれてしまうのだ。

それは人間にとっても同じで、誰も夕方まで野良仕事をしている人はもういない。

家に帰って晩酌の時間なのである。

かくいう私の会社の退勤時間も村時間になってきたのは嬉しいのだが、私が借りた家にはまだ暖房器具が整っていなかった。

 

夏に買っておいた薪ストーブの設置が遅れに遅れ、急にやって来た寒さににたじろぐ始末・・・。

越冬のために蜂の巣箱に毛布を巻いて、入口を狭めて空気の出入りを極力減らして、とか考えていたらすっかり自分の冬越えが二の次になってしまった。

 

 

慌てて煙突を買いに行ったりストーブの細かなメンテナンスをしているうちに蜂はもうすっかり巣篭もりモードに入ったようだった。

 

彼らの家にはクマのプーさんの毛布を巻いてやることにした。

これは私が中古屋で薪ストーブを買った時に店主が保護用にとくれたものだ。

来春の蜜への期待度がどれほど高いかを偶然にも物語っている気がする。

彼らの冬眠とほぼ同じく、私の家にも無事に薪ストーブがどうにかやっと設置された。

今年は蜂のことを眺めたり考えたりする時間がかなりあったが、同じタイミングで一緒に暮らしていることを確認するような冬の始まりとなった。

 

小さな群れの無事を祈りつつ、自分の村での冬のあらゆる安全を同時に願ったのであった。

お互いいい春を迎えようぞ。

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