Culture

2023/06/08
日本蜜蜂の養蜂・その6

春になると、蜜蜂の群れには新しい女王蜂が誕生する。

1つの群れに2匹の女王は住めないようで、彼らは群れを分けて新たな巣を探すことになる。

これは分峰(ぶんぽう)と呼ばれ、私の村ではゴールデンウィーク前後の1ヶ月くらいがその期間となる。

蜂にとっても養蜂家にとっても1年で最も忙しい時期だ。

 

私の家の巣は昨年の冬を越すことができずに死滅してしまった。

なので、今年も蜂を飼いたいとなると、何処かから分峰した群れを手に入れなければいけない。

方法は2つある。

1つは他の養蜂家の分峰した群れを頂く。

2つ目は巣箱を置いて群れを自然に誘引する方法だ。

1つ目は強制捕獲と呼ばれ、蜂が分峰した際に群れが球状になる瞬間を網などで捉えて無理やり巣箱へ閉じ込めるやり方だ。球になっている時間は晴れて気温の高い日の数時間と限られている。それが過ぎると群は新しく見つけた巣へ移動していくことになる。なので、蜂の群れを持っている人は球になっているタイミングを逃さずに捕らえるために巣箱をよくよく見張っておかないといけない。

その苦労にも関わらず、せっかく箱に群れを入れても蜂が気に入らなければどこかへ勝手に飛んでいってしまうこともしばしばだ。

一つの群れにかける労力をご想像いただけるだろうか。

私の村には数人蜂を飼っている人がいるが、軽々しく蜂を分けてくれなどと言うことは決してできない。

なので、昨年同様に2つ目の方法の自然誘引に今年もかけてみることにした。

 

 

 

今年は例年より気温の上昇が早く、誘引の開始も二週間ほど早くスタートすることにした。

というか、私の気持ちが高まりすぎて待ちきれなかったのが正直なところだ。

誘引にはキンリョウヘンという蘭の花を使う。この花のもつ香りなのかフェロモンなのか分からないが、狂ったように日本蜜蜂だけが寄ってくるのである。去年の誘引もこの花がなければ成功はしなかっただろう。しかし、花の開花のタイミングを分峰に持ってくるにはテクニックが必要になる。私の家のキンリョウヘンはちょっと間に合いそうになかったので、誘引ルアーなるものを買ってつけてみることにした。

 

しかし、2800円もしたルアーはあっけなくスルーされているよう。

「開封後45日は効果がある」とのことだが、一度たりとも蜂を誘惑する姿をみることができなかった。3つ分の8400円を高すぎる勉強料だったと反省しつつ、キンリョウヘンを今年も買うことにした。

この時点でゴールデンウィークを終えていた。もう村内の分峰はとっくに始まっている。今ここで蜂を捕まえないと1年後の春までチャンスはないのだ。

しかし!

ホームセンターの園芸コーナーではキンリョウヘンは時期終わり、または高額なため入荷していないところがほとんどだった。

私は焦った。

こんなことならば最初から本物の蘭を準備しておけばよかったのだ。

せっかく今年も捕獲の巣箱を冬の間に拵えて作戦も練っていたのに。

 

 

 

こうなってくるともう是が非でも蜂を招き入れたいと言う気持ちは精製され純度を高めずにはいられなくなってきてしまった。

欲しい、今すぐこの手に欲しい!!!

その蜂への気持ちは長い間忘れていた異性をこの手に入れたいという欲求に近づいていたかもしれない。

毎日ルアーのついた巣箱を諦めきれずに眺め、数匹の蜂が偵察に来ていようものならすかさずスマホのカメラでその状況を取り収める始末・・・。

巣箱周辺にウロウロする時間は日に日に長くなり、天気予報を眺めては今日こそ、明日こそとソワソワしている。終いには、羽音だけでどんな虫が飛んでいるか大体把握ができるようになった。

 

しかし、しかし、蜂は巣箱に入らなかった。

 

この落胆は失恋を知っているあなたにも分かる類のものです。(笑ってください)

 

そんな気を揉む日々の中、購入に出遅れてしまったキンリョウヘンのネット注文が家に届いた。

配達されるや否や、100万本のバラの花束を手渡すかのごとく巣箱の脇へとそれを飾った。

これでダメならば今年はもう諦めるしかないのだ。自分はやれることはやった。やりきった。

などという綺麗事は全く意味をなさない。

 

ただ、今年も、蜂が飼いたい!!!

 

との一心で巣箱を見守り念じる日々が続く。

応援よろしくお願い致します。

 

続く

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