Culture

2016/11/21
暮らしの幸せ

「Buenos días, cómo esta?」 おはよう、元気?

「Muy bien, Gracias a dios. Hamble ataca?」元気よ、ありがとう。お腹減ってる?

 

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76歳になるコスタリカの母との会話から朝はスタートする。

2年間を一緒に暮らすことになったピコンさん一家は、なんと推定25人の大家族だ。

ラテンの国では親族で一緒に暮らすことは一般的で、離婚や片親、再婚などの関係もよくあることなので、とにかくいろんな人が家にいる。田舎ならばなおさらのことだ。

 

家族の中にゆっくりと暮らすことになるのはほぼ10年振りなので、どうなることか少し不安だった。食べ物や習慣の違い、騒音、犬、水、個人の空間の常識の違いなど、海外ならではの心配ごとは多々ある。そして何よりも、誰かと暮らすならばその人との係わり方が一番ネックになるのは言うまでもない。

 

幸運なことに、敷地内にある新築の家の一部屋がちょうど空き、そこに転がり込むことができた。

トイレもシャワーもキッチンもベッドも扇風機も、2枚の鍵付きの出入り口の扉も自分専用だ。大半の心配事はなくなった。

ラッキーだ。

 

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しかし、一人になり過ぎるのはよくない。

海外生活では孤独こそが最大の敵であり、すべての悪の根源であることは言うまでもない。

旅先のそれならまだしも、日常の暮らしの中にある埋めることのできない孤独は良くない。

1人では本当の孤独になることはできないので、ついうっかりすると、安い言葉が飛び交うSNSに飛び込んでしまう。

 

 

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昨日の晩は中庭にテレビを運び出してコスタリカVSアメリカの試合をみんなで観戦した。大勢集まるとそれだけで何かのイベントのようだ。テレビはただのおつまみに見える。

そのすぐ横で子供たちがボールをめちゃくちゃに蹴りまくり、おばちゃんたちは煙たくなるほど心配性で世話焼きで、試合よりも世間話に夢中だ。男たちは渋いのか適当なのかまだ分からないが、真剣そうな眼差しでテレビに見入っている。

赤ちゃんからおばあちゃんまで、色々な人のスペイン語と笑い声が飛び交い、どこにでもあるラテンの家族の風景が広がっている。

そこから先に、俺が忘れていたような新しい世界が広がっている気がした。

なんだか居心地はよさそうだ。

 

そんなことをぼんやり思っている居候のチーノ(アジア人の総称)の俺は、みんなからしたら少し変だったかもしれない。

自然と目じりの力が抜けて、頬が笑んでいる。コスタリカに来てから1ヶ月半、ここでの暮らしがゆっくりと平安に始まっていることに気が付いた瞬間だった。

 

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珍しいことや、新しいこと、何か知らない世界。海外にはそんな強い刺激をいつも欲していた。旅の暮らしの間、知らずのうちに人と深くかかわることを避けるようになっていたことも、ここでの新しい生活で少しずつリハビリされていくのかも知れない。

今、暮らしの中に幸せを感じるようになっている自分に少し戸惑いつつも、正直に嬉しく思っている。

 

 

4-0  試合はコスタリカの圧勝だった。

 

新しい2年間は、きっとあっという間だ。

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